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愛国とミネラルウォーターと日本叩きの話
日本のSNSやニュースでも微妙に話題になったこの件。
大手飲料メーカー「農夫山泉」がネットで袋叩きにされ、ボイコットにまで発展しているという話です。農夫山泉といえば中国でもトップといえる飲料ブランドですが、なぜそんなことになっているのでしょうか。
中国の大手飲料メーカー「農夫山泉」の製品であるペットボトルのミネラルウォーターが、惜しげもなくトイレに流されたり、道端に捨てられたりする映像が話題となっている。また、ある女性が水汲み場でミネラルウォーターを笑顔で流している様子も捉えられている。(中略)
SNSには、デザインが日本の寺に似ているという主張や、山のイラストが富士山にそっくりだという批判、さらには日本の鯉のぼりを真似しているという意見も。また、将来的に創業者の莫大な資産を引き継ぐとみられる息子がアメリカ国籍を取得していることも反感を呼び、大規模な不買運動に発展しているという。
日本のSNSやニュースなどでは、「パッケージに日本っぽい要素がある」という、無理のある言いがかりとその異常性の話に終始してしまっている感がありますが、調べてみるとこの件にはもうちょっと複雑な経緯があるようです。
ざっくり書くとこの件の発端は、もともと農夫山泉の創業者・経営者である鍾睒睒氏に対するネットでの批判が高まったことでした。そのきっかけは、農夫山泉との因縁のある別の飲料メーカー・哇哈哈の創業者である宗慶後氏の死去でした。
もともと鍾睒睒氏は哇哈哈の代理店の仕事をしていましたが、そこで成功してから自分で農夫山泉を創業し、のちに哇哈哈と対立するようになった裏切り者、という文脈があるようです。また、鍾睒睒氏が中国一の富豪であることも一定の反感を買っていたかもしれません。
いっぽうの宗慶後氏のほうは国家主義者として知られていたようで、その死の後に「宗慶後は愛国者だったが、宗慶後を裏切った鍾睒睒はどうだ」と比較される形で鍾睒睒氏への批判が始まります。
ほどなくして鍾睒睒氏の息子がアメリカ国籍であるとか、パッケージが日本っぽいなどという「愛国的でないという証拠」が掘り出され始めます。こんな売国奴が中国で金を稼いで、あまつさえ中国トップの富豪とはどういうことだ!などという批判が集まり炎上、不買運動にまで発展してしまいました。
つまり「まーた日本叩きかよ」というよりは、「売国奴」としての鍾睒睒氏への批判の高まりがまず先にあり、その手段のひとつとして「パッケージが日本っぽいじゃねえか!」 という言いがかりがつけられている、という構図です。だからたぶん叩きの内容はなんでもよく、日本が選ばれたのはたまたまじゃないかと思うんですね。
なので、これを「中国の異常な日本叩き」の中に含めてしまうのはちょっと違うのかな、と個人的には感じています。
まあ、「パッケージに日本っぽい要素がある」ということが批判として成立しうる状況がすでに異常といえばそうなのかもしれませんが、少なくとも自然発生的に日本が叩かれた案件ではない、というのは言えそうです。
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もうひとつこの件について付け加えておきたいのは、このような馬鹿らしい叩きやボイコット劇には多くの人が否定的というか、「さすがにおかしいだろ」という空気のほうが強そうだということです。少なくとも、自分の周囲ではそう感じます。
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