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Temuに見る「中国式・成功の黄金律」

昨日の記事でTemuについて書いたところ、大変よく読まれました。だからというわけでもないのですが、今日もTemuをテーマに一本書きます。

その安さから世界中で人気を集めつつ、いっぽうで黒い噂も絶えず批判の的となりがちな中国発ECサービス・アプリのTemuですが、そのやり口を見ていると非常に中国的というか、典型的な中国における成功の黄金ルートをたどろうとしているように見えます。

それが今後も成功していくかどうかは別として、Temuの方法論はそんな「中国式・成功の黄金律」を知るのに非常によいモデルだと思うので、きょうはそんなことについて書いてみたいと思います。

黄金律①:法律スレスレ(というかアウト)のスキームと、それに対する「叱られ」

中国において成功する企業は、その多くが初期において、ほとんど法律スレスレ……というより、どう考えてもアウトな、ルールを無視した「野蛮な成長」の時代を経過します。

もともと中国という国はルールの運用が曖昧で、人々は目の前にあるルールが提示された時に「いかにそれを上手に(バレずに)踏み越えるか、無視するか」ということを考えているようなところがあります。

また、力の小さきもの、弱きものが成り上がるにはルールなんて守ってられない、という規範も存在するように思います。実際、弱肉強食かつルールが強いものによって恣意的に運用されることも多い中国では、現状に風穴をあけるには、四角四面にルールを守っていては何もできない、というのも一定の事実だったりします。

ただ、そうした「野蛮な成長」も事業が成長してくるにつれ多くの人々に見つかり、ある種の「叱られ」が発生していったん出鼻をくじかれる時がきます。

破竹の勢いで拡大しながら巨額の粉飾決算が明らかになったラッキンコーヒー全世界に出展しながら「日本発」を偽っていたことをネットで叩かれまくり、日本風味を「消臭」しなければならなくなった雑貨のメイソウライドシェアのトップでありながら個人情報の扱いが問題となり、巨額の罰金とユーザーの新規登録停止を課された滴滴出行

その「野蛮さ」と、「叱られ」の発生ルートはさまざまですが、ともかく多くの中国の大企業・有名サービスはこうしたことを経験します。この「叱られ」を耐えたものだけが、その後も安定して中国で商売を続けることができます。

昨日書いたような、Temuがセラーから抗議されているというのも、そうした「叱られ」の一環であると見ることができます。これをどう耐えるか、あるいはのらりくらりかわすかが、今後のTemuの命運を占うと言ってもいいのかもしれません。

また、世界中で品質問題が起きているというのも、その「野蛮な手法」と「叱られ」が世界というレイヤーで起きているのだ、と見ることもできるかもしれません。そういう意味でも、Temuのやり方は中国式方法論の世界に向けた挑戦だと言えそうです。

黄金律②:異常な量の広告

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