中国界隈で使われる「ハオい」とは何か? その起源と変容について
告知です。
来る6月27日(日)の21時(日本時間)から、中国アジアITライターの山谷剛史さん、中華ガジェットに詳しいフリーランス翻訳者メイドさん(謎)の藤佳あやらさんと一緒に、ハオい中国を語るツイキャス配信に参加させていただきます。詳細はこちらのツイートをご覧ください。
去年にも同じメンバーで配信をしたのですが、当時はインパクトの強い怪しい日本語の紹介が中心でした。今回に関してはハオい中国を三者がそれぞれの視点から語るという形式になります。僕は相変わらずLEDで光りながら怪しい日本語に関する企画っぽいものをお送りする予定です(予定は未定です。まだネタ出しができていません)。
よろしければ前回の配信もご覧ください。手前味噌ですが、絶対に面白いしハオいです。
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さて、ここまで数度にわたり登場した「ハオい」という単語ですが、一部の人を除いてはなんのこっちゃわからない言葉でしょう。
この「ハオい」には、明確な定義はありません。しかしその語感と、この単語が主に中国に関心のある日本人の間で使われていることから明らかなのは、「ハオい」の「ハオ」という部分は中国語で「よい、優れている、立派である」などの意味を持つ「好」(hǎo)に由来しているということです。
定義はありませんが、僕の知る限りでは「ハオい」はもっぱらB級中国的な文脈で使用されることが多い単語です。
その適用範囲は幅広く、怪しい日本語に代表されるような脱力系の中国アイテムであったり、赤と金でド派手に装飾された主張の強い中華的な光景であったり、さらには広場舞や社会主義核心価値観などであったりを含みます。
いずれにしても日本人の発想では現れにくい奇妙な違和感を含み、それでいて愛さずにはいられない中国的な何かを形容する・愛でるための単語として「ハオい」が使われることが多いように思います。
ちなみに威力棒viiの昔から「ハオい」ガジェット等を日本に発信し続けてきたハオの大家(たいか)である山谷さんは、その起源をあるTwitterアカウントであるとおっしゃられています。
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ところが近年においてこの「ハオい」は、前述のような文脈とは違うところで用いられることもあるらしいということが、入念な調査(15分くらい)により判明しました。
まずGoogleで「ハオい」を検索するともっとも上に表示されるのは、「人民中国」という中国で発行されている日本語雑誌に掲載された、日本の方による「素敵な「ハオい」が溢れる世界」という作文です。
以下にその冒頭を引用します。
1、2年ほど前からであろうか。SNSを眺めていると、中国に関わりのある者、中国に興味がある者などの間で「ハオい」という表現が頻繁に見られるようになった。(中略)中国風の素敵な雰囲気のレストラン、話題のスポット、おしゃれなスイーツなど、いずれも写真にハオいで表現された文章を添えた投稿を何度も目にして、今日の中国は日本や韓国に並ぶアジアの流行発信国であることを強く感じるようになった。
そこにはいわゆるB級的な文脈はなく、単純に「中国らしさを感じるステキなもの」を形容する言葉として用いられていることがわかります。上で述べたような「ハオい」とは微妙に内容が異なっています。
事実、そのような意味で「ハオい」が用いられている例も、各種SNSを「ハオい」で検索すればゼロではないということに気がつきます(作文にするほど多いかと言われると微妙ですが)。
前述の「onorikae起源説」と、件の作文における「1、2年前から〜」という文言を信じるならば、当初は前者の意味で使われていたはずの「ハオい」から徐々にB級的な文脈が薄れていき、単純に「中華的な良きもの」を指すようにその意味を拡大しつつある、という流れが見えてきます。
このような流れは、「中二病」を連想させます。「中二病」はもともと、伊集院光さんがラジオのワンコーナーで「思春期に見られがちな、背伸びしたいなりの珍奇な行動」をネタにしたことから生み出されましたが、いつしか「痛々しい行動」そのものを指すように拡大解釈されていきながら、一般語にまで広がっていきました(余談ですが、「中二病」は中国版Wikipediaの百度百科にも項目があるくらいに中国でもネット用語として定着しています)。ひょっとしたら「ハオい」も、そのような流れの中にあるのかもしれません。
個人的には「元の意味」が薄れて陳腐化されていくことへの危機感と寂しさを感じつつも、同時にこのようなミームの広がりをリアルタイムで目撃していることへの興奮もあります。いつか「ハオい」という言葉が「中二病」並みに普及し、人口に膾炙する日がやってくるのでしょうか。そんな日が待ち遠しいような、来てほしくないような気持ちです。
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ちなみに今回の配信に関してはお察しの通り、前者の文脈に沿った「ハオい」中国的な何かを皆様にお届けし、笑っていただいたり脱力していただいたりということを主眼に置いています。ご期待ください。
配信は6月27日(日)の21時(日本時間)です。お見逃しなく。
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