中国の「人材ボーナス」は追い風? それとも向かい風?
こんな記事を読みました。
今回の全人代で国務院総理に就任した、李強氏の記者会見の内容の一部です。
李強という人はかつて習近平氏の秘書を務めたこともある、氏の盟友とも言える人物で、直近では上海市の党組織のトップを務めていました。あまりにも習近平氏に近いところからの登用であったことから、その能力にも疑問を呈されることが多い人です(決してただ無能な人物ではないはずなのですが)。ある意味では、今回の習近平氏の「お友達内閣」ならぬ「お友達指導部」の象徴とも言えるかもしれません。
李強氏への評価はさておき、上の記事の内容です。中国がすでに人口減少に転じ、人口ボーナスが消失する中でどんな就業対策をしていくのかという質問に対して、氏はこんなことを答えています。
人口ボーナスについては人口の絶対数ではなく、人材の質を見るべきである。中国には高度な教育を受けた質の高い人材がおり、中国はこれから「人材ボーナス」の時代に入っていくのである。したがって、中国はこれからも発展していくだろう、というロジックです。
……結局、人口が生む規模の経済という意味での人口ボーナスはなくなっているんじゃないの? これからその「質の高い人材」を使って何をしていくの? という疑問には全然答えていないところが中国人らしいレトリックという気がしますが、それを抜きにしてもこの「人材ボーナス」という考え方には少し問題があるように思います。
というのも、この「高度な教育を受けた人材が多い」という事実は、いまの中国にとっては追い風ではなく、向かい風として作用しうるからです。
どういうことか、以下に書いていきます。
すでに多すぎる大卒
中国ではすでに若者の学歴過剰が起きています。大卒者が「仕事がない」と嘆く一方で、ITなど一部の人気業界以外では深刻な人手不足が続いています。これは端的に、大卒者に見合った仕事の供給が追いついていないことを意味しています。
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