キレ・ノビの正体は球質だけにあらず
投手なら誰しも、キレのあるボール・ノビのあるストレートに憧れ、それを求めて、日々、試行錯誤して練習に励んでいると思います。
では、キレのあるボールやノビのあるストレートのからくりは何なのでしょうか。
「実際に向かってくるボールとイメージのギャップ」
特にキレを感じるのはこのギャップによる影響が大きいです。
ノビについては初速と終速の差が少ないほど、ボールが浮き上がっているように感じると言われますが、ここでも初速から予測した軌道よりもボールが垂れてこないという意味ではギャップを感じています。
仮に130㎞/hのストレートであっても秒速換算すると
130000m×3600秒=約36.11m/秒
18.44m÷36.11m/秒=約0.51秒
バッターは130㎞/hで向かってくるボールを0.51秒の間で判断し、スイングしなければなりません。
それを可能にしているのが予測です。
投手の投球練習や実際に打席の中でみて、これくらいの時間でこの角度ならこの位置に来るというのを予測して反応しています。
その予測をどれだけ裏切ることができるか。
ここには、打者の視線動線にヒントがあります。
打者の経験値が高いほど共通して上記の画像の通りに視線が動きます。
ここで大切なのがフェーズ4は決して腕の動きを全て追っているわけではないということです。
フェーズ4までの動きからこのくらいの位置でこのくらいの速度でリリースポイントに腕が来るであろうと予測をして視点が動きます。
つまり、腕の振り自体は眼で追えていません。
だからこそギャップが生まれます。
プロ野球の世界では、150㎞/h超の投手であっても撃ち込まれる中で杉内俊哉投手や和田毅投手はストレートでバンバン空振りをとれるのもこのギャップに効果が大きいです(もちろんそのほかの要素もありますが)。
ゆったりとしたフォームでリリースだけ力強くするといった投球フォームはある意味、このギャップを生み出す上で理にかなっています。
取り入れられる要素
キレのあるボールと錯覚させるにはフォームの中で如何にして緩急を作るか。
これに尽きます。
緩急を作るのは決して並進運動をゆったりとするだけではありません。
並進運動の時にスピードでエネルギーを得るタイプ(ex.山岡泰輔投球、前田健太投球)であっても、上半身の力みをできる限りなくすことで移動速度に対して腕が遅れてくるように打者が感じるため、そこにギャップが生まれます。
キレの正体は球質による影響もありますが、フォームの中での緩急が大きく影響します。
だからこそ、たとえ球質がキレイでなくとも、工夫次第でいくらでもキレがあるように見せることはできます。
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