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マグネシウムの4つの働き

普段の食事でミネラルまで意識している人ってどれくらいいますか?

多くの方々のカウンセリングを行ってきましたが、「塩分の摂りすぎには、気を付けている」「カルシウムはちゃんと摂るようにしている」という方がたまにいるくらいで、ほとんどがミネラルなんて意識したことがないという方が多いです。


そんなミネラルの中でも今もっと注目を集めているマグネシウムについてお話していきます。

【マグネシウムはどれだけ摂ればいい?】

マグネシウムは成人の体内に約25g、うち50~60%が骨に存在し、残りの大半が軟部組織(筋肉等)、1%未満が血清に存在します[1]。

マグネシウムは体内におけるタンパク質合成、筋肉や神経の機能、血糖コントロール、骨代謝などの多くの生体化学反応とそれらに関連する酵素系の補助因子(機能の補助もしくはそれ自体に働きかける)になります[2]。

成人の1日のマグネシウム摂取の目安は男性が400~420mg、女性は300~320mgになります。また妊婦の方は成人女性の目安量+40mgになります[3]。

【マグネシウムの4つの働き】

マグネシウムの生体作用は多岐にわたり、百数種の酵素の働きを補助してくれています。

ここではマグネシウムの働きを主に4つお伝えします。

【骨代謝への働き】

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マグネシウムは骨代謝においてとても重要なファクターです。骨をイメージすると真っ先にくるのがカルシウムだと思います。しかし、それゆえにマグネシウムが不足し、結果として骨密度の低下や骨粗鬆症のリスクファクターとなっています。

骨の構成要素はカルシウム、リン、マグネシウムのバランスで成り立っています。

厚生労働省はカルシウム:マグネシウムの比率が4:1理想的な摂取の比率であると発表しています。

また、世界的に権威のある医者の方にはカルシウム2:マグネシウム1が理想的とも述べています。

つまり、カルシウムばかり摂っていても骨密度は増加しません。それどころか高濃度のカルシウム摂取は骨密度の低下を助長してしまう可能性があります。

ちなみに牛乳のカルシウム:マグネシウムはおよそカルシウム10:マグネシウム1くらいです。かなりマグネシウム比率は低いです。また、現在の日本人の食事は何も意識していないと、およそ20:1くらいになります。

かなりマグネシウムが足りていませんよね。

マグネシウムは骨芽細胞と破骨細胞の活性に影響を与えることや骨の恒常性(ホメオスタシス)に関与する副甲状腺ホルモンや活性型ビタミンDの濃度にも影響を与えます。

これらのことからマグネシウムは骨の代謝において、とても重要なファクターだと言えます。

【エネルギー代謝】

ケトン回路


マグネシウムはエネルギー代謝に欠かせないミネラルです。特に糖代謝に欠かせないです。

人間は何かしらのアクションを起こす時、ATPという物質がエネルギーになります。そのATPを生成する過程でマグネシウムはかなり消費します。

マグネシウムが不足していると骨代謝のみならず、エネルギー代謝、特に糖代謝が上手く行きません。今の日本人の多くの方が陥っている「カロリーは摂っているのにエネルギー効率が悪い」という状況を作り出している1つの要因になっています。

あまり食べていないのに太りやすかったり、仕事やその他のパフォーマンスが悪かったり、なにか思い当たる節はありませんか?

その原因はマグネシウム不足が招いている可能性もあります。

もちろん、その他の栄養素や体質、外因性のストレス等による要因もありますが、可能性の1つとして考えられます。

また、糖以外に、タンパク質合成にも影響を及ぼすことも分かっています。

【血糖コントロール】


マグネシウムはインスリンの感受性やグルカゴンの過剰分泌の抑制にも影響を及ぼします。

インスリンは血糖値を下げる働きをするホルモンですが、インスリンの感受性が悪くなると糖代謝がうまく行きません。インスリン抵抗性が高まり、血糖値が下げられない状態を糖尿病と言います。

実際にマグネシウムの摂取量が多い地域と少ない地域では摂取量が多い地域では糖尿病患者が少ないことがわかっています。

マグネシウムはインスリンの感受性を高め、さらに、糖を筋グリコーゲンとして貯蔵するためのGLUT4という糖の輸送体を活性化させます。結果として糖代謝がうまくいくのです。

【マグネシウムと精神疾患の関係性】


うつ病や統合失調症の方は小腸におけるセロトニンの分泌が少ないことがわかっています。

セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれる人間が幸福感や満足感を感じるホルモンになります。

腸におけてセロトニンがつくられる時、マグネシウムに依存します。つまり、マグネシウムが足りないと腸ではセロトニンがうまく作れないんです。

実際にうつ病や統合失調症の患者の処方薬にはマグネシウムが配合されていることが多いです。

もちろん、精神疾患の要因としては幼い頃の家庭環境や外因性のストレスによるものが多いですが、栄養からのアプローチができます。

【まとめ】


マグネシウムが身体に及ぼす作用は数多くあります。

ここでは紹介していませんが、緩下剤や制酸剤のような薬剤に含まれていたり、硬水が便秘に効くのはまさにマグネシウムによる効果です。

心血管疾患、高血圧症なんかにも良質な効果が期待できる可能性があります。

また、DNAやRNAといった遺伝子情報にも深く関係しており、今、世界中で最も注目を集めるミネラルにです。

食品としてはアーモンドやほうれん草、大豆、玄米やオートミールなどの穀物に多く含まれます。

マグネシウムが不足している背景には精製された炭水化物を摂るようになったからだとされています。

全粒穀物、野菜、果物など積極的に摂取してしっかりマグネシウムを摂るようにしていきたいですね。


参考文献

Volpe SL. Magnesium. In: Erdman JW, Macdonald IA, Zeisel SH, eds. Present Knowledge in Nutrition. 10th ed. Ames, Iowa; John Wiley & Sons, 2012:459-74.
Rude RK. Magnesium. In: Ross AC, Caballero B, Cousins RJ, Tucker KL, Ziegler TR, eds. Modern Nutrition in Health and Disease. 11th ed. Baltimore, Mass: Lippincott Williams & Wilkins; 2012:159-75.
Institute of Medicine (IOM). Food and Nutrition Board. Dietary Reference Intakes: Calcium, Phosphorus, Magnesium, Vitamin D and Fluoride(英語サイト). Washington, DC: National Academy Press, 1997.
参考サイト

https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/08.html

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