隣り合わせの廃と青春16 呪いのADSL
さて、火竜討伐を経て、十分過ぎる程の資産を築いた私は、いよいよ本格的にナイトの育成を開始した。
ヴァラカス討伐で死にまくったキャラに別れを告げ、心機一転新キャラを作成。
育成に没頭し始めた。
当時のリネージュの仕様は以前に説明した。
もちろん、稼がなければならない経験値の絶対量が異常に高いのも問題だったが、この時代のレベル上げにおいて1番の問題は、キャラが死んだ際のペナルティである「13%程度の経験値をロストする」仕様。
冷静に考えて30時間以上の努力が一瞬で水の泡となるわけで、最も大事なのは死なないことなのは火を見るよりも明らかだ。
レベル49までやり込んでいけば、普通の人間なら安全マージンを取ったプレイが出来るようになっているはず。
それに、リネージュは帰還スクロールを使えばあら不思議、どんな危険なシーンでも一瞬で街に戻れるのだ。しかもその辺の道具屋でいくらでも安価で購入出来てしまう。リレミトなんて目じゃないぜ。
そんな仕様で死ぬわけなくないない?とお考えのあなた。
耳にタコが出来ているかもしれないがリネージュは常時インターネット接続のMMORPG。ちょっと考えてみて欲しい。
…そう、常時インターネット接続ということは、回線が切断したりラグが発生したりするとどうなるのだろうか。
操作出来ない状態のキャラクターがサーバーに残った状態になり、モンスターにされるがままになる。早い話が死ぬのだ。
そして勿論、当時のリネージュはそんな事情を鑑みるような仕様ではなかったので、容赦なく経験値をロストする。
そんなわけで、実はレベル上げに1番必要だったのは、回線品質や安定といった、ゲーム外の要素だったのである。
この回線品質に苦しめられた当時の高レベルプレイヤーは非常に多かった印象がある。
確か、友人だった「Ace」氏は、レベル52になるまでに50回は回線起因で死んでいた記憶がある。(それだけロストしてもめげずにプレイするのは本当にすごい)
この盤外戦は、自宅のことを自由にできない高校生の身分の私には、なかなか厳しい戦いだった。とはいえ、なんとかかんとか親を説得してADSL(※1)回線を引き込むことに成功、その回線速度(※2)に驚くと共に、テレホタイムを気にせずリネージュができるようになった。
(※1)詳しくは我らのWikipedia先生を参照。
(※2)電話回線の速度は56kbps。一方でADSLの回線速度は8Mbps。現代の基準で見るとどちらも大したことないかもしれないが、両者を数字で比べるとざっと140倍の速度。技術革新そのものだろう。
ただ、待望のADSL回線、なぜか瞬断が多く、その度にレベル49の私のキャラクターが死んでいた。バチギレていた覚えがある。
良い大人になった今冷静に振り返ると、パソコンの前でバチギレている息子を見せられる親の気持ちになってみると非常に申し訳なくなる。
何回も死んだ後、これはおかしいと点検した結果、常時接続するものなのに、ルーターの電源を都度切っているのが悪いのではないかとの推論に至った。
果たして、ルーターの電源を落とさずつけっぱなしにすれば、回線の瞬断は劇的に減少し、レベル上げも順調に進むようになったのだ。無知とは恐ろしいものである。
とはいえ、この時期に色々な失敗を重ねたからこそ今の自分があるのは間違いないこと。
それに、この事で、自分でちゃんと調べるのがいかに大事かということを学べたのは良いことだったと思うのだ。