メンデルスゾーン姉弟の音楽を眺めながら
ファニーのピアノ
昨年度末に企画したコンサート準備の為、ファニー・ヘンゼルはフェリクス・メンデルスゾーン のお姉様の曲をいくつか聴いていたところ、ピアノのパワフルなこと。彼女の指力とその実力を感じさせる曲にたくさん出会いました。
バイオリンとピアノの為の曲は一作しか見つけられず、そちらはフェリクス・メンデルスゾーンの無言歌の雰囲気。実際、フェリクスの無言歌集にはファニーの作品がいくらか入っているとの噂です。
わたしはバイオリン弾きなのでファニーの力強いピアノを紹介できなかったのが口惜しくてしょうがありません。
(コンサート告知動画で一部演奏しました。自分の宣伝みたいですいません↓)
(ファニーのピアノ独奏曲。この人の演奏とくに粒がたってて好き↓)
今回のコンサート自体は女性作曲家をテーマにしたものだったんですが、やはり当時の女性は、音楽をやるなら歌かピアノという印象で、誰の作品もピアノがヘビーになりがちなのが興味深かったです。
みんなどんな気持ちでピアノを練習してたんだろうか。現代では名前こそ知られてないが鬼のように上手かったに違いない。
無言歌がそうであったように、ファニーの作品のいくつかはフェリクス・メンデルスゾーンの名前で出版されたという話です。弟に対してまあまあ強い言葉で手紙を書き残してるファニー。まだこれからという年齢で亡くなられます。
フェリクスはお姉ちゃんの不幸を聞いてめちゃくちゃ落ち込んで自分も年内に亡くなっちゃうくらいお姉ちゃんのこと大好きだったろうに。どんな理由で素直に姉を応援できなかったかという考察は後で書きます。
フェリクスのオクテット
なんということでしょう。ファニーのアダージョを演奏した数ヶ月後にフェリクスのオクテットを弾くことになりました。
学生の時にも一度挑戦したオクテット、今回はヴィオラでの参加でしたがやはりいい曲です。
ヘンデルのメサイヤを思わせるようなラインもありますが、あれは教会音楽的な意味のあるフレーズなんだろうか。弾き手としても、「来たぜー!!」と身を乗り出したくなる部分です。
期待感と高揚感の作り方が絶妙で、アンサンブル的にも楽しいし大好きな曲なんですが、いまはちょっとファニーのことを思い出して微妙な気持ちに。
(こちらはわくわくする素晴らしい演奏なのでぜひ↓)
フェリクス・メンデルスゾーンの曲は触れる機会が多く、バイオリンコンチェルトを弾く生徒さんもいるし夏の夜の夢の序曲を弾くこともあるし、多作で色んな楽器構成の曲がありどれも名作です。
たらればを言ってもしょうがないのですが、ファニーもフェリクスほど経験を積めていればもっと幅広い曲を書けたのではと思わないでいられません。
(蛇足)彼らを取りまくしがらみについて
姉弟の関係を作り上げる一因になったのは、時代と彼らの血筋でもあったのでしょう。
住んでいた場所ではユダヤ人系のファミリーだった為にフェリクスが虐められたという背景もあり、両親は周囲との関係作りのためキリスト教の洗礼を受けたのだとか。世間の多数派と馴染むように、いろいろと心掛けていたのではないかと思われます。
そんな中でファニーは少数派の道を望みます。市民活動が盛んなころです。多少時代の後押しはあったでしょうが、実際のところ女性の社会進出はまだまだ茨の道だったかもしれません。両親も弟もたいそう心配してファニーを止めようとします。ファニーが自分の名前で楽譜を出版したのは結婚後のことです。
……彼女の人生について口惜しく思うことはあれど、両親が子どもたちのためを思って苦心していたことは認めざるを得ません。
ファニーのことはともかく、彼ら一家がキリスト教を受け入れたことでフェリクスはキリスト教の音楽文化に触れることになったのでしょうし、フェリクスによってバッハの音楽が再び日の目を見たことは有名です。
フェリクスが色んな方面に名を残したから現代においてファニーが注目を集めている側面もあるかもしれません。
選択はいろんな結果をもたらしますね。
最後に、
この時期色んな本やサイトをテレビのザッピングみたいにパラパラ読んでたので何がどこでみた話かわかりません。反省して今後は読んだ本をちゃんと記録します。