【STUDIO ZOONの編集者の育て方】新卒マンガ編集者にインタビュー!
2022年4月に設立されたWeb縦読みマンガの制作スタジオ「STUDIO ZOON」。
そんなスタジオに飛び込んだ新卒マンガ編集者・竹内亜美さんは「入社したときはマンガ編集者になりたいと思っていなかった。」と語ります。竹内さんは、なぜSTUDIO ZOONのマンガ編集者の道を選んだのでしょうか。
一方、講談社での20年にわたるマンガ編集の経験を経て、STUDIO ZOON 第2編集部の編集長に就任した村松充裕さん。出版社時代を経てたどり着いた『編集部づくり』とは——。
新卒マンガ編集者とベテラン編集長へのインタビューを通して、STUDIO ZOONが独自に築く編集部の現状や編集者の育て方、竹内さんや村松さんが見据えるビジョンに迫ってきました!
\村松さんのインタビュー記事はこちらをご覧ください/
竹内「誰かの人生の支えになる、ものづくりがしたいんです」
ーまず、竹内さんの学生時代について教えてください。竹内さんはどのような学生時代を過ごされていたんですか?
竹内 アニメを見るのが好きで、自分でもキャラクターイラストを描いていました。中学生のころに『Free!』(※)というアニメシリーズに出合ってから絵を描くのが好きになったんです。大学生のときも好きな作品の二次創作をしたり、自分でキャラクターを創作したりしていて、同人誌も一度発行しました。マンガを描くのはあまり得意ではなかったのですが、どうしても自分の考えたことを本にしたくて。短い話ではありましたが、「想像を形にしたい」という情熱が同人誌の制作につながりました。
(※『Free!』:小説『ハイ☆スピード!』(おおじこうじ)を原案とする、アニメーション作品。水泳にかける男子高校生たちの青春ストーリーを描く。京都アニメーション制作。)
ー大学生のころは絵を描くことなど、クリエイティブなことに打ち込んでいたのですね。
竹内 絵を描くことは中学生のころからずっと続けてきましたが、特に大学生時代に打ち込んだことといえば、マンガ・アニメのYouTubeチャンネルを運営したことです。当時はちょうどYouTubeでマンガを紹介するチャンネルが増えてきたころで、わたしはBL専門のチャンネルを運営していたんです。運営がはじまったきっかけは「BLのジャンルを取り上げているチャンネルが少ないよね」という話題が上がったことでした。わたしが運営に参加してから卒業までの2年間で、20万人までチャンネル登録を伸ばすことができました。わたしを含めてBLが好きな人たちがチャンネルをつくっていることが、登録者数の増加につながっているんだと思います。いろいろな人に見てもらえるのは嬉しいですね。
ー就活は「マンガやアニメが好き」という軸をもとに進めていたんですか?
竹内 コンテンツ系の制作に関わりたいと思って、就活していました。YouTubeチャンネルの運営ではSNSでの発信のほか、ネーム、シナリオ、SNSプロモーション、グッズ制作
など基本ネームを主に幅広く担当させてもらっていたんです。ときには、イラストでネームを仕上げることもありました。そうした活動を続けるなかで、自分の担当した作品をチャンネル視聴者に喜んでもらえることにやりがいを感じるようになりました。運営のモチベーションになっていたのは、「チャンネルの動画を見ることが生きがいになっています」「チャンネルのおかげで友達ができました」という視聴者の声。コメント欄に届く声がとても嬉しくて、視聴者や読者の反応がかえってくるような仕事ができたらいいなと思ったんです。
ー具体的に、どのような仕事がしたいと考えていたのでしょうか?
竹内 コンテンツのプロモーションを志望していました。プロモーションに携わればSNSを利用してコンテンツを楽しんでいる人の一番近くに寄り添えますし、反応を感じとりやすいかなと。YouTubeチャンネルを運営していたこともあり、コンテンツのプロモーションさえできればいいと思っていたので、媒体へのこだわりはありませんでした。
ーコンテンツのプロモーションではなく、マンガ編集者の道に進むことになったのはなぜですか?
竹内 入社したときは、マンガ編集者になりたいと思っていませんでした。というより、自分のなかに『マンガ編集』の選択肢がなかったんです。なのでマンガ編集という職種にイメージがついていませんでした。でも、自分で何かを直接つくろうと考えていなかっただけで、「誰かの人生の支えになるようなものづくりをしたい」とは思っていて。「自分が直接ものづくりをしていいのか、できるのか」という葛藤を抱えていたのでプロモーションを志望していましたが、実際にSTUDIO ZOONの短期アルバイトをしたら考えが変わりました。自分でものづくりができる環境があるし、周りも「やっていい」と言ってくれる人がいる。「自分で直接ものづくりができるところがあるんだ」と世界がひらけたのと同時に、STUDIO ZOONは新卒から戦力になれる環境だと知れたんです。STUDIO ZOONの短期アルバイトを経験したことで「自分のやりたいことに一番近いのはここだ」と思い、マンガ編集者になることを決めました。
ーSTUDIO ZOONの短期アルバイトで「直接ものづくりができる」と思えた出来事を教えてください。
竹内 新卒で入社してから特に思うのは、自分が率直に感じた意見が作家さんの作品に反映されることですね。自分の意見を取り入れてもらった作品を人に届けられるので、作品の面白さを形づくることに貢献できているなと実感できます。
村松「若手にフィードバックする機会は、意識的に多くつくっています」
ー入社してからギャップを感じることはありませんでしたか?
竹内 マンガ編集者の仕事をよくわかっていませんでしたが、いまは人と深く向き合える仕事だなと感じています。世間では、マンガ編集者の仕事は「てにをは」を修正したり、作家さんと打ち合わせをしたりするイメージが多いと思うのですが、それはほんの表面的な一部分なんです。友人からは「営業みたいな仕事?」と聞かれることもあります。もちろん世間のイメージ通りの仕事もしますが、マンガ編集は作品を面白くするために作家さんの力を最大限に引き出す仕事だと思っています。だからこそ、作家さん一人ひとりと丁寧に向き合っていかなきゃいけない。マンガ編集の仕事に就く前は、わたしも営業に近いイメージをもっていましたが、実際に働いてみると人と深く関わっていくことが必要な仕事だなと思います。
ー「作家さん一人ひとりと深く関わっていく仕事」という定義は、仕事をしながらご自身で感じとったことですか?
竹内 そうですね。編集長である村松さんにいろいろと教えていただいているのですが、作家さんと関わることでさらに実感できました。それと、作家さんとの向き合い方や打ち合わせの仕方は、STUDIO ZOONのなかで共有されているんです。思ったことを言語化するのは力がつくことではありますが、自分の感覚で仕事のやり方をつかむのは時間がかかる。でもSTUDIO ZOONでは、先に仕事のやり方を言語化した資料を編集部全体で共有する流れがつくられています。自分で実践するまえに大事なことを頭に入れてから打ち合わせに参加できるので、自分で物事を理解するまでのスピードは早められているのかなと感じます。このやり方は、『編集者が日本一早く育つ編集部』を銘打つSTUDIO ZOONならではかもしれません。
ーSTUDIO ZOONの『大事なことは先に共有する』という体制は、村松さんが発起人になっているのでしょうか?
村松 僕だけではなくて、第1編集部の編集長である鍛治さんもそういう体制をつくっていると思います。出版社では「見て学べ」と、若手を厳しく育てるのがスタンダード。丁寧に手取り足取り教える体制は、基本的にありません。ある種、職人の世界のような育て方です。出版社にはたくさんの編集者がいて人を育てられる余裕もあるので、「見て学べ」ができるんですよね。一人前の編集者になるまでのスピードを上げることにそこまで気をつけなくてもいいし、育つのを待てる余裕もある。
ところが、まだ人材の厚みが足らないSTUDIO ZOONの場合は、出版社のやり方にならって人材をゆったり育てていても、同じような成長作用は生めません。さらに「見て学べ」という育て方は、サイバーエージェントグループの「若手を大事にする」という企業文化とも相性があまりよくない。だから編集者としての知見はなるべくドキュメント化して共有するようにしています。もちろん教えてもらって頭では理解できたつもりでも、実際に現場で実感しないと身につかないとは思いますが、先に伝えられることは共有して理解しておいてもらったほうが、自分のものにするスピードは早くなると思うんですよね。
ーSTUDIO ZOONの編集部づくりのなかで、出版社と明らかに違うポイントはありますか?
村松 先輩社員から若手へのフィードバックの量がまったく違うと思います。たとえば、日々の業務や打ち合わせに対して、「ああしたほうがよかった」「あれはよかった」と竹内さんにフィードバックする数は出版社よりもかなり多いはずです。僕が出版社時代に若手で働いていたころは、忙しい上司にフィードバックをもらいづらかったので、個人的に面白いと思った先輩を積極的に飲みに誘って相談にのってもらったり、色々と個人の工夫が必要でした。一方、STUDIO ZOONではフィードバックの機会をつくるために、振り返りを仕組み化しています。振り返りを大切にしている企業なので、そういった文化を生かすことがこの会社らしい編集部づくりにもなると思っていて。
竹内さんの場合は、全体の振り返りのほかにも「今週の振り返りをさせてください」と自主的にミーティングを入れてくれるんです。若手が上司に気兼ねなく相談をもちかけられる環境は、すごくいいなと思います。
村松「編集者として何よりも大切なのは、作家さんの味方になること」
ーいま、竹内さんが実際に行っている業務を教えてください。
竹内 村松さんや先輩編集者のサブ担当として、作家さんとの打ち合わせに参加するのが中心です。あとは、新人作家さんと一緒に企画を練っています。新人作家さんが編集部に企画を持ってきてくれるのですが、それを見て「自分はどう思ったのか」をフィードバックしているんです。でも、自分ではまだわからないところもあるので、村松さんに「この企画はどう見ればいいのか」を相談しながら進めています。
ー村松さんに相談して得られた気づきには、どのようなものが印象に残っていますか?
竹内 村松さんからはいろいろなことを学んでいますが、一番大きな気づきは作家さんと関わるときのマインドです。ビジネスライクな付き合い方ではなく、作家さんとはもっと深く向き合ったほうがいいと教えていただきました。編集者と作家さんとの関わりって、特殊だと思うんです。もちろん仕事相手ではあるのですが、作家さんの人間性を深く知る必要があるんですよね。作家さんから信頼してもらうには、編集者である自分自身が自己開示しなきゃいけない。作家さんの描きたいことや主義をちゃんと理解するために、作家さんにも自己開示してもらいますが、自分も人間性をさらけだすように心がけています。そのうえで「何を描きたいのか」「この作品の面白さはどこにあるのか」などを腹を割って話しています。
村松 僕は、編集者は作家さんにとって仕事相手以上に味方であるべきだと思っています。作家さんは、自分の妄想や嗜好を落とし込んだ作品を自分の名前で晒すことで、人を感動させたり面白がらせようとしているわけで。めちゃくちゃ不安で孤独だし、とんでもなく勇気がいる勝負をしている。それに対して編集者が、自分の感情や人間性を隠したままビジネスに徹した態度で接するのは、一般の仕事論としては間違ってないですけど、覚悟には応えられていないですよね。丸裸で勝負をしている作家さんのパートナーになるためには、編集者も自分をさらけ出して、味方にならないといけないよなと。
竹内 作家さんと向き合うマインドは言葉で聞いても難しいのですが、しっかりとフィードバックをもらえる環境があるのは心強いです。あと、大切なことは言語化されて資料としてまとめられているので、迷うことがあったときは自分で振り返りができます。なので、壁にぶつかった場合も、理解が早くなって自分のなかに落とし込みやすくなるんです。作家さんとの接し方に困ったときは、すぐ村松さんに「時間ください!」とお願いして、アドバイスをいただいています。
村松 編集者は、まず目の前の作家さんがどういう人なのかを知ることが欠かせません。「この人が何者なのか」「どういう心を持っているのか」を理解するのが一番大事。作家さんがどういう人間なのかがわからないと、面白い作品はつくれない。作家さんのことを深く知って「この人のどういう部分を世間に届けるのか」といった軸を理解できれば、それぞれの作家さんや作品に適した提案をしやすくなります。そのためには先入観を持たずに作家さんと向き合う必要があります。「どうしたらこの作品が世に受け入れられるのか」と考えるときは、マーケティングの情報やテクニックが必要ですが、何よりも大切なのは最初に作家さんの人間性を知ること。作家さんからしても「この編集者はわたしのことをわかっている」と思ってくれるし、実際に力が発揮されるんですよね。目の前にいる人に興味や愛情をどれだけ注げられるのかが、編集者としての資質を決めると思います。
竹内「作家さんから信頼される編集者になるのが今の目標の一つです」
ーSTUDIO ZOONの雰囲気はどう感じていますか?
竹内 マンガが好きな人たちが集まっているので、部室のような雰囲気があります。みんなが気さくに話しますし、作品について困っていることがあれば相談にのってくれます。にぎやかで楽しいです。
ー竹内さんは同期のなかで一人だけSTUDIO ZOONに配属されましたが、心細さは感じていませんか?
竹内 ほかの同期との仕事に比べて、編集部独特の文化で仕事をする違いは感じていますが、心細くはありません。ほかの部署の人にも関わりに行ける環境がありますし、同期には相談相手になってもらうこともあるので、不安になることはないです。
ー同期と話すなかで違いを感じるのはどんなときですか?
竹内 成長スパンがぜんぜん違うなと思います。ほかの部署だと、すでに大きな活躍をしている同期もいるなか、自分がまだ成果をだせていないことに不安を感じることはありますね。だけど、そもそもマンガ編集は長期的に成長していくものだし、作品もまだリリース前なので、成果をだすスピードが遅れることは自分でも理解しているつもりです。ただ、「いま、どこまで成長しているんだろう」と自分の立ち位置がわからなくなるときが時にはあります。でも、会社が誰かに相談できる場をつくってくれているので、成長スパンの違いをケアしていただいているのかなと感じます。
ー村松さんが竹内さんに編集者として求めることはありますか?
村松 クリエイターと向き合って、その人をちゃんと理解して作品を届けられる存在になってほしいです。いまのSTUDIO ZOONのやり方は「振り返りを大切にする」という、この会社の文化や考えに、出版社のやり方をいくつかミックスさせています。もしいまのやり方で竹内さんが成長していったとしたら、結果的に独自のやり方ができあがっていると思うんです。サイバーエージェントでクリエイティブをつくる人の、一つの在り方になればうれしいです。
ー今後、竹内さんはどのような目標を立てていますか?
竹内 まずは、編集者としてのステップをしっかりと積んでいきたいです。加えて、わたしはものづくりをしたいので、現在抱えている連載準備作家さんたちを連載につなげたいと思っています。作品のローンチがもう少しなので、連載獲得が今の目標です。
村松 出版社だと「編集者3年目で連載が立ち上がるといいね」という感覚なので、新卒で連載を立ち上げられたらかなり早いと思います。
竹内 あとは、作家さんに信頼される編集者になりたいですね。それこそ、村松さんがSTUDIO ZOONの編集長に転職したときは、いろいろな作家さんがついてきているんです。編集者は作家さんが一緒にものづくりをしたくなるような仕事をするべきだと思うので、「竹内さんだからついていきます」と作家さんから言ってもらえるようになることも目標の一つです。
村松「自分と他人に誠実な編集者は、人の心を動かせるんです」
ー最後に、STUDIO ZOONでは編集者を募集していますが、竹内さんはどのような人がSTUDIO ZOONの編集者に向いていると思いますか?
竹内 「コンテンツが好き」という気持ちがベースにあって、さらに目の前の作家さんに対して親身になれる人は向いているかもしれません。実際に、 STUDIO ZOONには思いやりのある編集者が多いんです。
ー村松さんのお考えはいかがですか?
村松 誠実で面白い人がいいですね。他人と自分に誠実な人は、自分が「面白い」と思うことに対してすごく敏感だし、そこに嘘がないから作家さんのつくりたいものにもしっかり向き合えるんですよね。誠実な人は、自分の感じていることに素直だから、発する言葉がかなり具体的なんです。気づいたら心が動かされていて、自然と前のめりでその人の話を聞いちゃう。でも、他所行きの言葉しか話せない人には、心を動かされない。結局、僕たち編集者の仕事は人の心を動かすことなので、“心を動かす言葉” を話せる人がいいですね。
ー最後にSTUDIO ZOONの編集者1年目として、 編集部に興味のある人や、これから入社する方に向けてメッセージをお願いします。
竹内 STUDIO ZOONは立ち上げたばかりの編集部なので、「何をやっているのかわからない」という人は多いと思うんです。そんな人たちにSTUDIO ZOONのことをもっと知ってほしいので、興味のある人はわたしを頼ってほしいし、実際に編集部にも見学に来てほしいです。内定者に関しては、直接わたしに話しかけてもらえればいつでも相談にのります。サイバーエージェントグループのなかで、STUDIO ZOONはものづくりに一番近いところだと思うので、そういった環境に関心のある人はぜひ来てほしいと思います。
マンガ編集者を募集中!
現在『STUDIO ZOON』では、経験のあるマンガ編集者を募集しています。この記事で興味を持った方は、ぜひ一度こちらをチェックしてみてください。
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