ミツバチ⑥働きバチ
「アリの共和国とミツバチの王国に学ぶがよい。アリは富のすべてを共同に分け合い、政府はなくとも混乱を知らない。ミツバチは君主の支配はあっても、つねにここに富と財産を保持する。」byA・ポープ
ミツバチの家族は女王バチ、オスバチ、働きバチの三階層からなっています。今回は働きバチのお話です。
大きさは12~15㎜、わずか0.1gの小さな体。女王バチが一生食べるロイヤルゼリーと比べて栄養価の低いワーカーゼリーが与えられます。そうすると、遺伝的には女王バチと全く同じだけれども、卵巣が紐状に萎縮した働きバチが誕生します。
子を産むのは女王バチの仕事で、女王がコロニーにいる限り働きバチには卵を産むことはできません。しかし、女王と離れて暮らしていると糸のように萎縮した卵巣が発達してきて、卵を産むことができるようになります。(女王の代わりにはなりません。)
働きバチというくらいですから、子育て、巣の建築などの巣の維持(内勤)から門番、採餌(外勤)など、たくさんの種類の仕事を分担して行います。それは、ハチの日齢によって分担されているのです。
羽化して間もないハチは、飛べませんし、難しい仕事もできません。巣房を舐めたりかじったりして掃除し、温めます。羽化2日ほど経つと、育児が始まります。最初はあまり手のかからない、日齢の上がった幼虫に餌を与えます。
その後育児にも慣れてきたら、だんだんと小さい幼虫に餌を与えるようになります。小さい子の方が厄介で、大変なのです。なんだか人間と似ていますね。さて、羽化10日から2週間くらいで、巣を維持する仕事に切り替わります。
ロウを製造して造巣したり、熟成された蜜にロウで蓋をしたり、ミツロウと呼ばれるものを、色々と加工します。ロウを柔らかく加工しやすいようにするために、体温を上げることもできます。また、死んでしまった幼虫や成虫を、病気を蔓延させないためにも巣の外に運び出したりもします。その他、外勤バチが運んできた蜜や花粉を受け取り、房に収める仕事などもあります。
羽化3週間ほど経ちました。内勤も終了に近づいてきます。外に出て働くための準備段階として、巣の入り口で門番をします。外敵に対して針で刺すのも働きバチの仕事。針は卵管が変化したものなので、メスである働きバチにしかできません。刺したハチは、針と毒袋を刺した動物に残すため、お腹が破れて死んでしまいます。
巣の入り口や中で翅を羽ばたかせ、空気を流し、温度と湿度を適度に保ち、病気を防ぎます。涼しくすることもできますし、胸の筋肉をつかって熱をあげ、暖かくすることもできます。また、扇風しながらフェロモンを放出して、経験の浅い外勤バチが巣の入り口を見つけやすくします。さて、いよいよ外勤です。危険な仕事なので、コロニーで最年長のハチだけが行います。
まずは巣門に頭をむけ、周辺を飛び回り、巣の位置を覚え込みます。外役活動としては、花粉集め、花蜜集め、水集め、プロポリス(樹液)集めがあります。蜜源(餌場)の場所を巣の働きバチたちに伝える「尻振りダンス」というものがあります。詳しくはまた別のお話で。
こうして約一ヶ月半ほどの生涯を終える働きバチ。まるで私たちの体の中でそれぞれの役割を果たしている細胞を見ているようです。ざっと流れを説明しましたが、一つ一つの仕事は驚異的な精度で、また、驚くべき方法で行われるので、別の機会にご紹介したいと思います。