COP28で知る「気候変動×グローバルヘルス」の最新動向
毎年12月に開催されるCOPは、まるで情報の迷宮(ラビリンス)のような複雑さがあります。私もいろいろ読んでいたら、もう2か月近くたっていました。
先般のCOP28は少し新規性がありました。グローバルサウスであるアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで初めて開催されたこの会議では、初の「Health Day」が設定され、気候変動とグローバルヘルスの重要な結びつきに焦点が当てられたことです。
この記事では、気候変動とグローバルヘルスの交わりを探る"Cliamate-Health Nexus"に焦点を当て、COP28の成果と課題をまとめてみました。
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ワシントンDCを拠点として、海外広報活動や米国議会の動向調査などを行っています。現在、B2Bを中心に、ライフサイエンスやディープテック業界、国際保健に関する広報やアドボカシーを行っています。 LinkedIn
「気候変動×グローバルヘルス」COP28の成果は?
※以下は、本当にサクッと、気候変動とグローバルヘルスの軸でまとめていますので、ご了承くださいね。
✔️ やっと重要性を再確認: 「気候変動が健康問題であるという事実は、過小評価されてきた」(The Lancet)
⏩米国ジョン・ケリー気候特使がCOP28で強調しました。「気候危機に対する我々の進展は、回避された気温だけでなく、救われた命によって測られるべきである。」
✔️ 感染症の増加データ: 世界保健機関(WHO)によると、世界のマラリア患者数は昨年数百万人急増。(Washington Post)
⏩WHOの最新報告書は、異常気象などの影響で、世界のマラリア患者が大幅に増加し、特にパキスタン、エチオピア、ナイジェリア、ウガンダ、パプアニューギニアに集中していることを明らかに。
✔️ COP28の気候変動×グローバルヘルスの成果:「気候と保健に関するCOP28宣言 」が発表され、最終的に143か国以上が署名。
⏩ワンヘルスアプローチ(人間、動物、生態系の健康を含む)の促進、早期警戒システムの改善、気候変動と健康との結びつきに対処するため、対応できる保健医療人材の確保、保健セクターの能力強化などの優先事項が盛り込まれました。
⏩中国は、この宣言に最終的に署名。一方、インドは署名せず。宣言からは化石燃料の段階的廃止を求める具体的な文言を省いたにもかかわらず、排出量の多い国の足並みはそろいませんでした。
Deep Dive: 気候と保健に関するCOP28宣言
以下のレポートが、詳細に宣言を分解しています。
明らかな👎欠点があることも明らかになっています。
⏩人権(健康に対する権利も、清潔で健康的な環境に対する権利も)については触れられていない。また、強制力はなく、具体的なタイムラインもありません。この宣言の利点と欠点をClimate Nexsusが現地から速報をしています。
COP28に参加した専門家は、宣言を評価しつつ、以下のようにネクストステップを語っています。
✔️重要なことは?:気候変動に強い保健政策、健康への影響を考慮した気候変動適応や回避政策。戦略や計画レベルで融合が進むか?
⏩「気候と保健に関するCOP28宣言 」では、「それぞれの国の状況に応じ、気候政策プロセスへの健康への配慮のより良い統合を追求し、保健政策課題全体への気候への配慮を追求することを約束する」とし、各国の気候変動行動計画(NDC)にどのように組み込まれるかが、今後のポイントにもなります。
⏩Gaviワクチンアライアンスは、「2024年に初めて、気候変動リスクがGaviのワクチン投資戦略(VIS)の判断基準のひとつとなる。」と発表しています。
お金の動き:適応資金のうち保健に充てられる資金は、「1%以下」
COP28をきっかけに、気候変動×グローバルヘルスの資金拠出や発表で動きがありました。
COP28で、気候変動と健康に関連する緩和、適応、その他のプロジェクトに対し、10億ドルを超える融資(ただ、その一部は新たな資金ではないと言われている)を約束。(「COP初の「健康の日」、温暖化による影響や対策を議論…アジア開発銀など10億ドル投入へ」読売新聞)
アラブ首長国連邦、ビル&メリンダ・ゲイツ財団らが、顧みられない熱帯病(NTDs)撲滅のために7億7700万ドルを拠出すると発表。(”COP28 focus on health draws $777 million to fight tropical disease.”Reuters、プレスリリース)
ロックフェラー・センターは、気候と健康問題の解決のためのファイナンシングの原則を明文化し、41機関による賛同を得た、気候と健康問題の解決に向けたファイナンシングのための指導原則を発表。
気候変動に関わる資金調達でも課題がありますが、WHOの最近の調査結果によると、90%以上の国々が、保健に焦点を当てた優先課題を国別拠出金に盛り込んでいるにもかかわらず、気候変動適応資金のうち保健プロジェクトに割り当てられているのはわずか0.5%に過ぎないと、米国の慈善事業団ロックフェラー財団が指摘しています。
COP28全体を通して集められた計850億ドルに比べれば、保健分野での誓約は、「極めて控えめ」ではあるものの、「始まり」でもありますね。
ちなみに、自分事ですが気候変動とファイナンスに関しては、こういった記事を書いたこともあります。
COP28成果物などをまとめた資料、最近読んだ記事など📝
"Bridging Health and Climate at COP28" (Center for Strategic and International Studies "CSIS")
"At COP28, the Climate-Health Nexus Turned a Corner, for Better and Worse" (Think Global Health)
「スタンフォード大学に新大学院 プラネタリーヘルス研究に意欲」(with Planet 朝日新聞デジタル)
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