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【寝ている間に考えている写真の事】
今朝 久しぶりに夢を見ました
写真家の先輩が出てきて一枚の写真を見せてくれました
夜明け前のほの明るい海辺に
とある家族がぽつぽつと立っていて
皆それぞれにほの暗い灯りを手にしている
その灯りに照らされてかろうじて見える表情はこちらをじっと見つめ
笑うでもなく悲しむでもなく
こちらに何かを訴えかけるようなそんな表情
そんな写真を見て私は先輩に尋ねます
「これは何時頃撮ったんですか?」
「どこで撮ったんですか?」
「こんな朝早くに撮ってピントはどうしてるんですか?」
「こんな写真は私には撮れないなぁ」
先輩は応えます
「君はどうして技術ばかり問うのだね?」
「この写真に写る人々の表情に疑問は感じないのか?」
「母親が着ている独特な形のエプロンに違和感を感じないのか?」
「君はどうして撮れない言い訳ばかりするんだ?」
「君はそれでも写真家か?」
答えに詰まった私に先輩は話し始めます
ここに写っている母親は実はこの世にもういないと
胸の病を患った母との思い出を残したくて私のところに相談にきた
少年は主治医にどうして自分の母親だけ救ってくれないんだと泣きながら抗議した
この人たちの手に持っている灯りがほの暗いのは
この先にある不安を表現している
この人たちに表情がないのは
この先を見据えて各々が覚悟している
そういう写真なんだ
君は物事の本質が見えていない
目に見えるものだけがこの世の全てではないんだよ
君は写真家としてもっともっと精進して
物事の本質を見つけることのできる表現者になりなさい
そこで目が覚めました
私にはとても素晴らしい師匠が何人もいて
私を鼓舞しようと亡くなった今でもこうやって時々現れて
35年写真に生涯を捧げたという慢心を
もっと謙虚に向き合いなさいと嗜めにきてくれます
なんと恵まれた写真人生でしょう
感謝しかない
これからも慢心することなく謙虚に実直に私の写真道を探求していきたいと思います