ちょっと早めの百鬼夜行
天狗さんたちは考えます。
自分達の登場は8月のお盆だけれど、今年は存外夏の到来が早いと。
人間界を覗くとそこは灼熱地獄のような暑さ。
これではいけないと2人はこっそり会議を始めました。
「今年はちょっと暑すぎやしないかい、鴉天狗さん」
「そうだねぇ、天狗さん」
「人間さん達も暑さで参っていると聞いたよ、鴉天狗さん」
「僕らにできることはあるかね、天狗さん」
「ちょっと早いけれど、僕らの百鬼夜行はどうだろう、鴉天狗さん」
「それはいいかもしれないね、天狗さん」
天狗さんと鴉天狗さんは妖怪ネットワークを使って各地の妖怪を集めます。
「百鬼夜行で人間さんに涼しい夏の夜を!」をスローガンに声をかけました。
人にイタズラする妖怪もたくさんいますが、中には人が大好きな妖怪もいます。そんな仲間達を集めて、集会を開きました。
「今回の百鬼夜行代表、天狗です!みなさまお集まりいただきありがとうございます!今年の人間界は妖怪界よりも熱く灼熱地獄です。いつも脅かさせていただいている恩もございます!人間さん達が少しでも涼しくなるように、今年は少し早いですが、百鬼夜行を開催したいと思いますっ!」
会場に拍手が起こります。たくさんの妖怪が賛同し、どんな百鬼夜行にするか意見を出し合います。
「まずは整列です!おどろおどろしく!涼しさを感じるパフォーマンスを心がけましょう!」
天狗さんの声に続き、鴉天狗さんもサポートに入ります。
「空を飛べる方は是非飛んでくださいねー。浮遊はびっくりする大事な要素ですよー」
「1・2・1・2!」
妖怪達一斉の行進の練習。身の毛もよだつほど可愛い行進です。
自分達の姿が恐ろしくないことに気づくのはもっともーっと後のお話。
「人間さん達を心の底から涼しくさせますよー!」
天狗さんは意気揚々と仲間達と行進の練習をするのでした。
お披露目は人間界真夜中の時間。それまで何度も繰り返し練習する妖怪達。
どんな百鬼夜行を見せてくれるのか、それはまた別のお話。