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アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本 (星海社新書) 舛本 和也
この本は、アニメの制作進行の仕事について説明をしながら、「アニメづくりってどんな感じなの?」という疑問に答えてくれる一冊です。アニメ業界を目指す人はもちろんですが、一つの仕事論として読むのもオススメです!
その仕事、何人のヒトが関わっているか知ってる?
一番 おもしろかったのは、P36-40 第一章「熱意だけではだめ!狭き門をくぐるには」絵がかけないとできない仕事?
アニメーション作りは集団作業です。30分のTVアニメーションに関わるスタッフは200~300人になります。そんな多くのプロ技術者が関わるからこそクオリティーの高い多種多様な作品が生産できるのです。
普段パッとテレビを点けたときにやっている番組の裏側に、これだけの膨大な人数が関わっているんだそうです。
すごくないですか?
自分ゴトとして想像してみてください。
あなたの仕事には何人のくらいのヒトが関わっていますか?
そして、じぶん以外のヒトがどんな作業をしていますか?
意外と難しい問題だと思います。
じぶんが関わっている、広告の仕事で言うと、大筋ではクライアントがいて、広告代理店の人がいて、制作会社の人がいます。人数は小型の作業であれば、クライアントが3~5人くらい、広告代理店で5~10人くらい、制作会社は2人~5人くらい(工場とかならもっと増える)でしょうか。計10~20人くらいですね。
大型の作業になっていけば、どんどん膨れ上がっていきます。確かに200~300人ぐらいまで増えるかもしれません。
でも、アニメ作りの仕事では、それが毎週のTVを作るのに、毎回200~300人ぐらいが動くというのですからとてつもない数ですよね。
アニメには、
監督/脚本/シリーズ構成/原作/キャラクターデザイン/総作が監督/絵コンテ/演出/作画監督/原画(アニメーター)/動画検査/動画(アニメーター)/美術監督/美術設定/背景/色彩設計/色指定/仕上/セル検査/特効/3D監督/3Dアニメーター/撮影監督/撮影/編集/音響監督/役者(声優)/効果/ミキサー/音楽/音響制作/ビデオ編集/テロップ/アニメーションプロデューサー/制作デスク/設定制作/文芸制作/制作進行
P36-40 第一章「熱意だけではだめ!狭き門をくぐるには」絵がかけないとできない仕事?
これだけの役職があるそうで、場合によってはもっと増えるそうです。
あなたの仕事には何人のくらいのヒトが関わっていますか?
そして、じぶん以外のヒトがどんな作業をしていますか?
それを知っておくとよいと思うことをもう少し深掘りしてみます。
工程を追ってヒトと作業を把握する
ところで、SHIROBAKOというアニメご存知でしょうか?
アニメの制作進行をやっている女の子が主人公のお仕事系アニメです。
Amazon Prime会員なら、全話観れます。(2019年5月2日現在)
そのなかで、こんな台詞があります。
SHIROBAKO エピソード「責めてるんじゃないからね」
原画が全リテイクになってしまった女の子を、作画監督が心配して言う台詞。
瀬川さん「きっと、もう少しししたら、安原さんも普通にできるようになることなんだよ。じぶんの後の工程のことを考えて書くなんてことは。でも今はまだわからない。わからないからできない。ちょっとの違いなんだけどねえ。」
(中略)
瀬川さん「うまく乗り切ってくれると良いなあ」
SHIROBAKO エピソード22「ノアは下着です」
色指定・検査の新川さん、動画検査の堂本さんが屋台でおでんを食べながら愚痴を言い合うシーンでこんなものがあります。
新川さん「つーか、連携がとれてないんだよ、各話の制作がさ、じぶんの話数のことしか考えてないんだよね」
堂本さん「あーそれはそうそれでじぶんの話数優先でもの言ってくるからちょっとねえ」
いずれも共通するのは「じぶんの後の工程を考える」ということ。
仕事を依頼している相手は、きっとそれを望んでいる筈です。
そして、これができるのが「仕事のできるヒト」なのだと思います。
なぜそう言えるのか?
それは、作業を依頼する先(発注先)にいる彼ら/彼女らは、作業をする前に「どんなものを仕上げればよい?」とか「どんな風に修正してほしい?」あるいは「(いつまでに/何のために/なぜ)そうしたいのか」といったことを知りたいからです。
それがわからなければ、せっかく作業をしても無駄になるかもしれないから当然ですね。逆に言えば、これさえ上手くいけば、質のよい仕上がりに持っていくことができます。
じぶんが話を聞く先(得意先)が、後々の工程すべてを認識した上で連絡をくださるなら、それをただ横流しするのもアリかもしれません。でも往々にして、得意先はそんな細かい知識までは持ち合わせていらっしゃらないのが普通です。良いとか悪いとかではなくて、それが一般的だと思います。少なくともじぶんの身の回りでは。
だからじぶんらは、じぶんらの後工程のヒトたちが作業し易い情報を揃えるために、得意先の要望を深掘り/翻訳しなければなりません。
となると、やはり
「そもそもどんなヒト(役職)がその作業に関わっていて」
「具体的にどんな作業をするのか」
「そのヒトたちがその作業をするために必要な情報は何なのか」
といったことを知る必要があります。
知っているのと知らないのとでは、天地の差が生まれます。
これらができると指示/発注(お願い)をする際、「何を言ってあげればよいか」がわかりますし、発注先もそれを理解してくれるから、変に突っぱねたりせず、親身になって話を聞いてくれるようになります。
終わりに
「早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け」というアフリカのことわざ(らしい)があるそうですが、制作の現場はまさにそうですよね。
数字で見ると途方も無くて、驚きます。
P47-48 第二章「アニメ制作の番人制作新興の仕事」
のべ数千にものぼる素材を、1人で管理する
30分のTVアニメーションで、
・絵コンテ × 一冊(80~100ページ)×30冊(スタッフ配布分)
・レイアウト × 300カット
・原画 × 300カット
・動画 × 4000~6000枚
・背景 × 300カット(データ)
・仕上げ × 4200~6200枚(データ)
・撮影 × 300カット(データ)
・チェック用DVD × 4~10枚
・伝票 × 50枚
・関係書類 × 50枚
・カット袋 × 300枚
ぐらいになります。
作品によって増減しますが、大体こんな感じです。
(書籍にはこれ積み上げた写真が載っているので必見です!)
これだけのものを作るのに、1人で何でもかんでもやるのは難しい。
じぶんらが普段関わっている仕事だって、一つだけなら辛うじてなんとかなるタスクでも、一人で産業として成立させるような作業をするのは実際無理です。
だから僕らはヒトにお願いをするし、それによってその仕事は支えられ、他のヒトがやっている仕事も支えられ、その積み重ねによって社会全体が支えられ、ゆくゆくは人類の発展に繋がっていくものだと思います。
手元にある仕事の一部分だけを見ていてはわからないけれども、その仕事が沢山積み重なっていって、一つの大きなものが成り立っているんだなという事実を見据えて、対象物を観察すると本当におもしろいです。
吉野 源三郎「君たちはどう生きるか (岩波文庫) 」のなかでコペルくんが「人間分子の関係、網目の法則」という名前で「生産関係」を考察する場面があります。
このことをもっと深く考えるなら、必読だと思います!
マンガもありますし!
あと、先程取り上げたアニメづくりの作業について、SHIROBAKOの公式サイトにわかりやすくまとめられているので、そのリンクも貼っておきます。
今週の一冊はコチラ▼