ビジネスホテル回遊魚
孤独で猥雑、わずかな高揚。
駅前や歓楽街の喧騒。
孤独で猥雑、わずかな高揚。
ビジネスホテルは良くも悪くも「少しの特別」が詰まった場所だ。
宿泊経験の多寡や好みはさておき、人生で一度もビジネスホテルに泊まったことが無い、と言う人も珍しいのではなかろうか。その名の通り、ビジネストリップを前提としてシンプルに作られたホテルだが、出張でなくとも急に決まった冠婚葬祭や旅行など、手ごろな価格で利用できるのがありがたい。
私のビジネスホテルメモリーの始まりは、たぶん大学3年の就職活動。大学がド田舎にあったため、エントリーシートや筆記試験を突破した後は、大阪や東京へ面接に向かう必要があった。それ以来、社会人になってからも出張三昧だったため、よくお世話になった。
友人や家族と利用することもあるものの、やはりソロが圧倒的に多い。
ビジネスホテルを利用する際、気にしていることについて羅列してみる。
朝ごはん
やはりビュッフェ形式のものに限る。
パンとコーヒー等の簡単なものも有難いが、それならコンビニでもいいかと思ってしまう。その日の体調や、前日の夕食とのバランスも考慮しつつ、自分で選べるのがビュッフェスタイルの良いところ。ドーミーインや法華クラブなど、ご当地グルメも交えた朝食を提供するホテルも増え、朝から賑やかでちょっと楽しい。
最近ホテルの朝食会場で気づいたことだが、20代以下の方はほぼいない。若くて30‐40代からである。「朝ごはん美味しいのにもったいないなあ」などと野暮なことは言わない。
わかる、わかるよ。
20代はとにかく眠いのである。休日であれば昼まで寝て、気づけば夕方、なんてことはザラにある。朝ごはんを食べる暇があれば、睡眠に充てたいのだ。ビュッフェでトレイ鬼盛りにした朝食をもくもくと食べながら、呟かずにはいられない。
「寝られなくなってくんだよなあ…。」と。
60代の両親と旅行に行けば、5時頃からごそごそと動き出し、6時台にはフルスロットルである。
チャーリーズエンジェルかよ。(わかる人にはわかる。)
大浴場
出張にしても旅行にしても、普段の生活より歩くことが多くなる。部屋についたユニットバスでは疲れがとれないので、狭くてもいいから大浴場のあるホテルを選ぶことにしている。
あたたかいお湯に全身を浸すと、少しずつ心身の緊張がほどけていくのがわかる。
めったに自販機で飲み物を買うことは無いのだが、風呂上がりばかりは何か買おうかと眺めてしまう。
アメニティ
自他共に認めるアメニティうるさ人だが、なかなかお気に入りには出会わない。
長期ならまだしも1-2泊の旅行にヘアケア・スキンケア諸々をトラベルサイズに詰め替えるのも煩わしい。私は週の半分は湯シャン(シャンプー・トリートメントを使わずお湯のみ)なので、ヘアケアは必要ないとして、スキンケアは最低限、洗顔料・化粧水・クリームくらいは必要である。
もちろんそのくらいは大浴場に備え付けてあるか、使い切りパウチタイプのものが用意されているのだが、敏感肌にはかなりきつい。たいていのものがピリピリして肌に合わないか、乾燥しすぎたりべたつきすぎたりする。グレードの高い旅館やシティホテルでも、ハイクオリティのスキンケアは見かけない。
どなたか、肌に優しいアメニティを何卒…。
酸いも甘いも噛み分けて
同じ宿泊施設である旅館やラグジュアリーホテルと比べて、ビジネスホテルの宿泊は、楽しい·喜ばしい目的のものばかりでないように思う。
自身の経験としても、
友人知人を見ていても。
予期せぬかつ望まぬビジネストリップもあるだろうし、親族の手術や入院に付き添っている人もいるかもしれない。
ビジネスホテルは優しいとまでは言えないが、孤独や寂しさによく寄り添う。
酸いも甘いも噛み分けて、
ビジネスホテルは今日も営業中。