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週刊『粗忽長屋』第壱週:粗忽長屋とは
●はじめに
「社会人落語日本一決定戦」に出場するために、
『粗忽長屋(ディレクターズカット版)』という古典落語の改作を作りました。
その改作の過程で、いろいろと『粗忽長屋』について研究することになり、
副産物として、記事として書き残すことにしました。
江戸落語最高峰と挙げる人も多い『粗忽長屋』。
その改作の過程・噺の歴史・系統・笑いの取り方などを観ていきます。
●『粗忽長屋』とは
まず、知らない方は『粗忽長屋』を聞いてきてください!
柳家小さん師匠(五代目)・志ん朝師匠の録音がおすすめです。
【念を押しますが、聞いたことのない方は聞いてからお読み下さい。】
☆シナリオの凄さ
さて、『粗忽長屋』の魅力は、なんと言ってもシナリオの凄さだと言えます。
八っつあんの方は、そそっかしくて
「行き倒れで死んだ友人を長屋から呼んでくる。」
熊の方は、さらにそそっかしくて
「『自分が死んだ』ということを受け入れてしまう。」
そしてオチは熊が「抱いているのは確かに俺だが、ここにいる俺はいったいどこの誰だろう」となります。
死神だったり天狗だったりと、荒唐無稽な存在が出てくるわけでもありません。
粗忽(そそっかしい)という性格をギミックとして、シュールで奇想天外な世界観を繰り広げる。これぞ落語という作品です。
☆八っつあんと熊の共演作品
落語の世界にはいろんな人がでてくるもので…
能天熊にガラッ八、馬鹿で与太郎
という言い回しもあるように、能天気でのんびり屋の熊五郎、言動が粗野で落ち着きに欠ける八五郎という、江戸落語の2大キャラクターでもあるこの2人ですが、実は共演作は多くありません。
『粗忽長屋』を除けば『船徳』くらいだそうです。この気性の比較を演じ分けもこの落語の面白みの一つです。
●登場キャラクター
☆八五郎
言動が粗野で落ち着きに欠け、すごくそそっかしい。
その分、マメにアクティブに行動するので、お参りなどにも出かける。
野次馬根性もあり、ストーリーの起点となる人物。
☆町役人
身元不明の行き倒れが出た現場に出くわす。
死骸の引き取り手が無いと困るので、街ゆく人に知り合いがいないか確認してもらっている。常識人でマトモな人。観客と同じ目線を持ち、ツッコミ担当という大事な役割を担っている。
☆熊五郎
能天気でのんびり屋。出不精なので家に引きこもっている。八っつぁんに負けず劣らずのそそっかしさを持つ男。自分が死んだことを受け入れてしまうという後半のメインキャラクター。
☆人だかりの1人
八五郎が出会う群衆の1人。マトモな性格。
「またぐら」をくぐるきっかけとなるキャラクター。
振り返る所作をやるので、首振りを大きくやる。
☆人だかりの第三者
このキャラクターは必ず出てくるわけではなく、演者による。群衆の中の1人。マトモな性格。町役人の話し相手になったりとして出てくることがある。
まずは、こんな感じで、来週に続きます。