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登場人物
カズオ(若い衆)
姐さん(親分の妾)
獣医
カズオ:姐さん、今日は天気ええことおませんけど、おやっさんから送ったてほしい言われてますんで…
姐さん:カズオ、ナンボわてがオンナやからいうて、そないに注射すきなことはないんやで。わかってんのんか。
カズオ:えらいすんません。わしもどないいうたらええか、わからしませんねん。
姐さん:あのな、イク前にイクいわなあかんのんとちゃうのんか。
カズオ:イクいうてももう出してしもたもんは、しょうがおませんねん。すんません。
姐さん:ドアホ、すんませんで済んだら、ポリコいらん。わてがいうてんのんは、病院行くんやったら病院行くいわなあかんのんとちゅうかっちゅうことや。ドアホ。
カズオ:えらいすんません。
姐さん:すんません、すんませんいうたらアカンでぇ。すんません、すんませんいうとってみ、ごっつい戦争なったらシッポ巻いてにげてまうで。ドーンと構えとき。あの人が行けいうたんやったら絶対やねんから。白いもんも黒うなるからなぁ。
カズオ:…
姐さん:なぁ、カズオ、病院おわったら、アレやで。
カズオ:あんまり派手にしとったらおやっさんにそのうち見つかるんとちゃいますか。
姐さん:ドアホ、あの人かてぎょうさん若い娘ォ転がしとんのや。わてかて枯れてもうたら値打ち失うてまうんや。わかってんのんか。
獣医:そろそろ注射、打たせてもうてよろしおまっか。今日はゴッツゥ硬とうて太っといのん打っときまっさ。
カズオ:センセー、よろしゅうたんまっさ。わしの代わりにキッツいやつ打ったっておくんなはれ。
獣医:ダァッテェー。いうてんと携帯で写真撮ったってや。ワシがひと刺しでズボッとイキまっさ。べっちょないべっちょない。
姐さん:センセー。アンタ、なにええ気ィになってるのんかしらんけどな、わてらのしゃべくり、マネせんでええのんやで。気ィの短い若いモンやったら黒い道具(モン)光らせてるでェ。
獣医:えらいすんません。ちゃちゃちゃ、ちゃいます。これマネしてんのんとちゃいます。
カズオ:渡世に生きる犬ならば
打たなきゃならん玉もある
いやよいやよも好きとはいうが
ちょっとチクリはいかがなもんか
そこら溢れる男より
惚れた男の背中には
鬼も虎もが背を向ける
真紅に燃える昇り竜
丁か半かを知るものは
ツボに踊るる罪なきサイ
嗚呼 鉄火場暮らしの侠気よ
姐さん:カズオ、あのな、長いねん。センセー、打ったてや。
獣医:はい。痛ない痛ない、べっちょないべっちょない。
カズオ:センセー、大きい声ではいえませんねんけど、注射嫌いになる注射もいっぺん打ったてもらえしませんやろか。
獣医:今打った注射が注射嫌いになる注射です。カズオさんもこれでラクになることやと思います。
姐さん:あんたら、なにキャーキャーいうてんのんや。カズオ、早よ行くで。それから、センセー、あんた播州やいうとったな。祭には帰るんか。帰んのんやったらこれ持って行き。ごじゃのひとりでもおったら紹介したってや。そろそろカズオにも若いモンつけたろかおもとるさかいな。
カズオ:センセー、ご苦労さんです。注射早よ効く思て帰りまっさ。効くまでにシゴトになったら恨みまっせ。
獣医:姐さん、お大事に。それからカズオさん、シゴトきついかも知れませんが頑張ってください。シゴトの効率高めるためにコレ飲んでみてください。ここぞという時に役に立つと思います。