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はじめてのGRAPEVINE②
前回の記事は思いがつのりすぎて読みにくい記事になってしまったので第2回を書くことにしました。
これからGRAPEVINEを聴く人のためのアルバム三選
今回はシンプルに、これからGRAPEVINEを聴いてみたいと思う人、久しぶりに聴いてみようかと思った人向けに、これからGRAPEVINEを聴く人のためのアルバム三選をご紹介したいと思います。
GRAPEVINEはシングル曲や有名曲みたいなものだけを聴いてもその魅力の一端でしかありませんので、アルバムを聴いていくことをおすすめします。
しかし、オリジナルアルバム18枚、ミニアルバム3枚というなかなかに膨大なディスコグラフィーに「どれから聴いたらわからない状態」になるのもベテランが故の難しさ。
前回も口酸っぱく書いた通り、まずは最新アルバムから聴くのがおすすめです。
『Almost there』
2023年リリース18thフルアルバム。この記事を書いている2025年1月時点での最近作となります。
全作詞:田中和将
Ub(You bet on it) 作曲:亀井亨
雀の子 作曲:田中和将
それは永遠 作曲:亀井亨
Ready to get started? 作曲:亀井亨
実はもう熟れ 作曲:亀井亨
アマテラス 作曲:田中和将
停電の夜 作曲:田中和将
Goodbye, Annie 作曲:亀井亨
The Long Bright Dark 作曲:田中和将
Ophelia 作曲:亀井亨
SEX 作曲:田中和将
まさにロックバンドとしてのアティチュードを掲げるような軽快なロックチューンである1.『Ub(You bet n it)』から始まり、導入として入りやすいように思う。
次にいきなりプログレ的な展開を効かせて関西弁で繰り広げられる2.『雀の子』で驚かれるのではないだろうか笑 語り調とファルセットから、シャウトまで歌い上げるVo.田中和将の魅力爆発の1曲。
3.『それは永遠』では優しい美メロと上品なアンサンブルを魅せ、4.『Ready to get started?』の軽快なガレージ・ロックはライブ映えするこのアルバム唯一? さわやかな曲調である。
つづく5.『実はもう熟れ』は中森明菜『ミ・アモーレ』のもじりだそうだが、歌謡曲の香りを色濃く醸したシティポップともディスコチューンとも言える踊れる一曲になっている。中年男性の一代記のようなストーリー性を持った歌詞にも注目してほしい。
前半5曲だけでも、似た曲がない。それぞれが別ジャンルのようで、GRAPEVINEというアンサンブルに落とし込むことでどれもが紛れもなくGRAPEVINEでしかないという離れ業を当たり前のように成し遂げてくる。
これをすべてライブでも演奏するというのだから、驚異的である。
6.『アマテラス』でまた雰囲気が変わる。シューゲイザー的なノイズ感覚を含んだギタープレイにラップ調の韻を踏んだラップ調の語り。からの7.『停電の夜』の湿っぽいメロディーの美しさ。この曲で聴けるGu.
西川弘剛のギターソロの主張しすぎず、それでいて曲の切なさをより深めてくる素晴らしさ。
8.『Goodbye,Annie』で諧謔的なひねくれ感をだし、9.『The Long Bright Dark』。
これは個人的に最も驚かされた。エフェクティブなギターとアメリカの荒野にいるような乾いた世界観に、歌い回しも独特である。渋く屈強そうな男の中に繊細さを隠し持っているようなバンド史上ありそうでなかった一曲に仕上がっている。
10.『Ohelia』はうってかわって女性的な側面のある曲である。イントロからは想像がつかないシューゲイザー的な轟音に移り変わる様は圧巻と言える。
4拍子のコードストロークではじまる最終曲11.『SEX』。このリズムの曲に名曲しかないのは有名である(ex『それが魔法というのなら』(deracine収録)、『SATORI』(MISOGI EP収録)『Wants』(Sing収録)。
全曲レビューをするつもりはなかったのだが笑、いかがだったでしょうか。
一枚のアルバムを通して聴くと、壮大な叙事詩の中にいたかのような感情に襲われはしないだろうか。
それぞれの曲が異なった雰囲気を持っているにもかかわらず、散漫とした印象は一切なくGRAPEVINEというアーティストが紡いできた世界観の中で統一感を持つ。
いわゆる一時的な気持ちよさというよりは、感情や人生の深い部分に棘のように突き刺ささり、じんわりと侵蝕してくるようでいて、滲み出た血液の温かさに包まれるような感覚に陥ってくる。
デビュー25年を越えながら、音楽的な老成と新しいことへの挑戦を続けることの両立を成し遂げている稀有なバンド、それがGRAPEVINEである。
同アルバムのアナログ盤追加収録と配信シングルのみのリリースとなるが、あわせて『Loss(Angels)』も聴いてほしい。
『ALL THE LIGHT』
2021年リリース16thフルアルバム。続く17thフルアルバム『新しい果実』と非常に悩んだが、その先進性は最新作『Almost There』に引き継がれており、オルタナティブ・ブルース(Wilcoの音楽性を表すのに度々用いられるオルタナティブ・カントリーという表現のモジリ)バンドとしてGRAPEVINEの到達点として選出。
開花 作曲:田中和将
Alright 作曲:田中和将
雪解け 作曲:亀井亨
ミチバシリ 作曲:田中和将・西川弘剛・亀井亨・ホッピー神山
Asteroids 作曲:田中和将・西川弘剛・亀井亨・金戸覚・ホッピー神山
こぼれる 作曲:田中和将
弁天 作曲:亀井亨
God only knows 田中和将・西川弘剛・亀井亨・金戸覚・ホッピー神山
Era 作曲:亀井亨
すべてのありふれた光 作曲:亀井亨
・全作詞:田中和将
1.『開花』のアカペラ、6.『こぼれる』の弾き語りといったジャンル的な固定観念をゆるやかに自分たち流にアレンジし、ファンクナンバー2.『Alright』や優しい亀井節に包まれる9.『Era』。
Led ZeppelinをGRAPEVINE風に解釈したかのような8.『God only knows』、タイトなリズムに絡み合うギターのアンサンブルが、乾いているのに浮遊感を持つという5.『Asteroids』など、確固とした作曲を、それがそれらしくならないように巧みにアレンジされた匠の技と言えよう。
10.『すべてのありふれた光』は全人類に聴いてほしい、ほんの小さな希望を見出す大名曲である。
『From a Smalltown』
2007年リリース8thフルアルバム。いわゆるギターロックバンドであり、かつてロキノン系という枠組みを作った一旦とされていた時期における最も円熟したアルバム作品である。
FLY 作曲:GRAPEVINE
ランチェロ'58 作曲:亀井亨
スレドニ・ヴァシュター 作曲:亀井亨
smalltown,superhero 作曲:GRAPEVINE
I must be high 作曲:亀井亨
ママ 作曲:亀井亨
COME ON 作曲:GRAPEVINE
インダストリアル 作曲:亀井亨
指先 作曲:亀井亨
FORGE MASTER 作曲:亀井亨
棘に毒 作曲:亀井亨
Juxtaposed 作曲:田中和将
全作詞:田中和将
編曲:GRAPEVINE&長田進
初期から続くギターを全面に出した楽曲性の到達点とも言え、 また全体を通してのポップさを兼ね備えている点から選出。
※この前後は名盤だらけで非常に悩んだ
バンドの歴史的にはセッションによる曲作りを始めたという転換点のある一枚であり、それ故か非常に軽快で聞きやすい名曲が多い。
ライブで盛り上がるアンセム的な要素を含んだ1.『FLY』を始め、印象的なギターカッティングと圧倒的歌唱力を誇る2.『スレドニ・ヴァシュター』、亀井亨作曲のメロディラインが秀逸な9.『指先』、11.『棘に毒』を含む。
2.『ランチェロ'58』や7.『COME ON』といった乾いた音色の楽曲群はGRAPEVINEらしいし、グルーブ感とファズギターのアンサンブルが渋い5.『I must be high』や8.『インダストリアル』といったような楽曲は、意外と日本で奏でるアーティストは少ないのではないだろうか。
番外編
『another sky (Live at Hitomi Memorial Hall 2022.07.02)』
ライブ・アルバムかい! というツッコミは承知の上で、ほとんどリリースされていない(こちらもDVD特典と配信のみ)ライブアルバムより、5thAlbum『another sky』のリリース20周年記念アルバム再現ライブを収録したこの一枚を選んだ。
マリーのサウンドトラック 作曲:田中和将
ドリフト160(改) 作曲:田中和将
BLUE BACK 作曲:西原誠
マダカレークッテナイデショー 作曲:亀井亨
それでも 作曲:亀井亨
Colors 作曲:亀井亨
Tinydogs 作曲:西川弘剛
Let me in〜おれがおれが〜 作曲:亀井亨
ナツノヒカリ 作曲:亀井亨
Sundown and hightide 作曲:亀井亨
アナザーワールド 作曲:亀井亨
ふたり 作曲:西川弘剛
編曲:GRAPEVINE、根岸孝旨、高野勲
有名曲『光について』を含む2ndAlbum『Lifetime』、1stフルアルバムである『退屈の花』の再現ライブをすでに行っていた上、オールドファンから人気の高い『here』を飛ばしてこの『another sky』の再現ライブを行ったのはファンからしても意外であったように思う。
しかし蓋を開けてみると、淡々としつつもシューゲイザーに接近した1.『マリーのサウンドトラック』の重厚な世界観に始まり(これも4拍子のギターストローク!)、Gu.西川のエフェクティブなギタープレイが印象的なミドルバラード6.『Colors』、12.『ふたり』の終盤にー曲目のリプライズをぶち込んでくるなどの現在のGRAPEVINEのプレイアビリティに接近するアプローチが多分に含まれている。
2.『ドリフト160(改)』の軽快さや、図太いファズギターとファンキーなギタカッティングを両立させた4.『マダカレークッテナイデショー』、ヒリヒリとした緊張感の中で奏でられる『Sundown and hightide』、そしてバンド史上屈指の泣きの名曲11.『アナザーワールド』と聞き所が多い。
終わりに
オールドファンからは何やねんそのチョイス、と思われるかもしれないが、真剣に初めて聞く人達に向けた3(+1)枚を選んでみた。
サブスク時代だからこそ、有名曲はすぐ聴ける。しかし、アルバム単位で聴くことが本意のアーティストであるし、シングル曲ではわからない魅力が詰まっているのも事実だ。
ここまで聴いてくれたリスナーはきっとその魅力に取りつかれているはずなので、その後は膨大なディスコグラフィーの中からランダムに聞くもよし、最新作からたどるもよし、初期作からたどるもよし、各々好きに聴いていってもらいたく思う。
最近はそうでもないが、フェスやイベントでのライブの予習にいわゆる代表作である『Lifetime』など初期作を履修してもほとんど意味がない。
予習するなら最新作だ。『Almost there』だ。いや、目下の最新曲『天使ちゃん』だ!
Thank you for your Watching!
あざす!