【リレー小説】第二弾 #8(きやま)
「ほんとに来たんだ」
店長は嬉しそうな顔で女性に声をかける。
「うん。さっき仕事終わったばっか」
女性もにこやかに返す。ピンク色の空気が二人の周りに漂っていた。
店長は近くにあったカゴを女性に渡して、「なんでも好きなもの入れてきていいよ」と言った。
「いつもありがとう」
ワンピースをひらりとなびかせて、彼女は売り場へと歩き出した。店長はぽーっとした顔で後姿を見つめている。
飲み物の補充でもしようとレジから出ようとすると、店長がボクのほうを振り向いて、
「あの子、健気でさ、病気のお母さんのために夜遅くまで働いて……。ちょっとでも役に立ちたいんだよ」
と、聞いてもいないことを話し始める。なんかそれって、騙されてそうだけど……、と嫌な予感がした。
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