旅日記 秩父にて 参 Mary Lou
僕らは公園にいた。友人は園内の手入れをする高齢者達に挨拶する。僕もそれに習って挨拶をした。
こんにちは。
こんにちは。暑いのにご苦労さま。
初めて会ったはずの老人達は微笑みと共に挨拶を返してくれた。そして、労いの言葉も添えてくれた。僕らはただの旅人。自分達の思い出づくりのためだけにこの場所へ来た。
だから、暑いのに此処へ来る人をもてなす為、働いている貴方達の方が労いの言葉を送られるべきだ。心の中でそんなことを考えながらも、頭を下げ、その場を立ち去る事しか出来なかった。
特に遊具という遊具のない公園を進む。砂だらけの地面がだんだんと雑草へ変わっていく。
先には小さなトンネルがあった。2メートルくらいの高さのトンネル。中は質の悪い落書きで溢れていた。自転車を転がし、五歩程進んで抜けた。そこには、先程よりも長い公園があった。二人は木々に囲まれたベンチに座り、少し休んだ。
二人は再び自転車に跨る。
まだまだ、先は長いわよ。
いつの間にか機嫌が直っている自転車のメリー・ルーは、僕がペダルを強く踏み込むのと共にタイヤを勢い良く回転させた。
メリー、君は何故、そんな小さな身体で力強い走りを見せてくれるんだい?
当たり前よ。だって貴方を乗せているんだもの。
僕は、君に会えて良かった。
二人の旅はさらなる加速度で進んでいくのであった。