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キクではない、どこかへと 花の名は。Vol.10

東急東横線に、きくな、という駅がありまして。地元民(横浜市港北区)ならば必ず言った言われた、「次の駅は?」「きくな」「ケチ、教えてよ」「だからきくな!」「ドケチ!!」という定番ネタ、あ、地元民だけど言ってません? すみません。漢字で菊名と書きます。この駅名・地名、菊に由縁があるのか、不明です。調べろ? 調べません。すみません。

さて、本題。秋に咲く、明るい色の、菊の花。で、あるか、のような、花の名は、秋明菊。シュウメイギクです。地名に因む別名があります。貴船菊、キブネギク。京都、貴船神社に多く咲くとか。いずれにせよ菊ですが、キクではない。キク科ではなく、キンボウゲ科です。

細部の形態や遺伝子により、近縁、類縁関係を定めていく生物分類学。日本に伝わったのは江戸時代も終盤のころ。それ以前に限らず、細部に拘らない「花は見た目が9割」な命名は、生物全般について少なくありません。

シュウメイギクがキクの仲間でない件は、少し観察力があれば明らかです。キク科は概ね(全部かどうか、確認していません。調べろ? 調べません。すみません。)集合花です。シュウメイギクはまず集合花ではない。中心に丸い雌しべがあり、その周辺をぐるりと囲む雄しべがあり、花弁に似たガクがある、見事なまでにキンポウゲな花の構造をしています。

シュウメイギクと同じ属でメジャーな花は、秋に植える球根草花のアネモネです。妹だけでなく姉もね? 違、すみません。アネモネ、早春から咲く、色鮮やかで大きな花です。花の構造は同じ。もともとは風に揺れる草姿だったところ、園芸的に改良されるにつれて背が低くなるところまで、よく似ています。

パッと目に、キクと似ているから〇〇菊。という事例はいくつもあります。ゴマノハグサ科→ハマウツボ科のシオガマギク。シソ科のダンギク。ツルナ科→ハマミズナ科のマツバギクなどです。それぞれ、花だったり、遠目に見た姿だったり、どこかキクに似ています。キクっぽかったら、〇〇菊でもいいんじゃない? と個人的には思います。ここで事例とした3種のうち2種、科名がふたつずつあることに注目。

分類学の体系が新たになると、科が変わることがあるのです。おまけに、旧分類体系が完全否定されたわけではないのと、これまでの書物、図鑑などは改版がされないかぎり(めったにされない)、そのままです。なのでシオガマギクだったら、現ハマウツボ科、以前はゴマノハグサ科と両方覚えておかないと不便で仕方ない。〇〇菊にはありませんが酷いのは3つの科を変遷したり、一度変わってから戻ったりしたのもいます。

なので、シュウメイギク含め、キクに似ているから元はキク科、という拡大解釈もあながち、あ、ダメですか、すみません。ここらで、おしまい、おしゅうめい、おシュウメイギク。お後もよろしくないようで。すみません。

花の構造がキク科ではなくいかにもキンポウゲ科な、シュウメイギク


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