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竜か金魚か、狼と鼻 花の名は。Vol.30
日本人と欧米人の感性差が花の名前に反映されることがあります。キンギョソウなど、そのひとつです。掘り下げてみました。
和名キンギョソウは金魚草。1輪の花を金魚に似ていると見立てたのです。金魚に見えますか? 日本人内でも意見が分かれそうです。英語名、Snap dragon、スナップドラゴン。ドラゴンは竜です。Snapは、日本語でスナップ写真とか少し違う意味に使われているからわかりにくいのです。この場合、Snapは噛みつくと略すのが適切なようです。噛みつく竜。Snapにはスラング的なキレる、ブチ切れるという意味もあるので、ブチ切れ竜。怖い怖い。
キンギョソウの花にミツバチがとまると、噛みつかれて飲み込まれるように見えるという説がありました。噛みついてないし飲み込んでない・・・。ちなみに、日本では周期的に流行しながらあまり定着しないエディブルフラワー。花を食する習慣、昔からの食用菊などは除いて、主に洋風の草花のうち食べてもよい花に使われます。キンギョソウは代表格です。エディブルフラワー食材名としては日本でも、スナップドラゴンが主流。
学名を調べましょう。オオバコ科キンギョソウ属、Antirrhinum、アンテリナム。日本ではキンギョソウが定着しつつも、たまにアンテリナムの名で流通します。ラテン語からの語源は、鼻のような。確かに金魚よりは花に近い、かもしれません。
更に調べるとフランス語名が、gueule-de-loup、グル・ド・ルー。その意味はなんと狼の口。更に更にドイツ語名が、Löwenmaul、レーベンマウル。なんとなんと、獅子の口。このあたりは噛みつく竜と同ニュアンスです。いずれにしても動物系なんですね。金魚や鼻はユーモラスなのに、あとは怖いです。可愛らしい花なんだけどなあ。
キンギョソウを花壇で栽培していると、長期間咲いてくれます。そのためには、咲き終わった花がらは摘み取ります。摘み取らないでいると実がなります。熟した実は茶色く、割れて、黒い種子が覗きます。その様子は、髑髏。ドクロそのもの。髑髏草の別名がないのは幸い。
和名ヒメキンギョソウ、姫金魚草という植物もあります。ゴマノハグサ科ウンラン属、学名の属名はLinaria、リナリア。英語名はそのままで、語源は、アマ、亜麻という全然別の植物に葉がにているから。亜麻といえば、亜麻色の髪の乙女ですね。どんな色だっけ・・。汗 姫金魚草は小さな金魚草の意味です。そう感じたのは日本人だけだったようです。リトルスナップドラゴンとは言いません。
注意点、ヒメキンギョソウには毒性があります。キンギョソウのようにエディブルフラワーとして扱えないのはもちろん、誤食も危険です。
一番怖いのは竜でも狼でも獅子でも髑髏でもなく、お姫様だったというオチでした。
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