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先ず咲く、満作 花の名は。Vol.17

早春、他のどの花よりも早く、咲く。先駆けて咲く。先ず、咲く。その花の名は、マンサク。と、言われますが。そうでもないですよ。実際、ロウバイや早咲きのウメの方が早いです。今は冬に咲く栽培種の花も増えています。個人的には、あまり説得力がないと感じます。マンサクの語源は2、3の説があります。

有力説は豊年満作。花の様子を、たわわに稔った稲穂に見立てた。この花が咲くと、稲の作付けに先立って、豊作を祈願した。あるいはマンサクの咲き具合で、その年の作況を占ったと。ここは、私としても、頷けるところです。牧野富太郎博士は著書に万咲、あるいは、万作、でもよし、と記されました。花が一度にたくさん咲くからだそうです。これは、牧野博士らしい、ご愛嬌ってことかな。

さて、◯◯マンサクを名乗る仲間が、かなり、たくさん、います。日本原産の落葉樹マンサクを基本種として、変種が2つほど。

葉が丸いマルバマンサク、これは日本海側に多いそうで。栽培も多く、花色の変異があります。品種として、花が紅色のアカバナマンサクと、黄色地に紅がさすニシキマンサクがこの系統。良く栽培されています。あとひとつ、アテツマンサク。花が小振り。あまり栽培はみかけないですね。アテツとは? 阿哲地方、に由来するそうで。岡山県新見市だそうです。自生が岡山県に偏っているためか、準絶滅危惧種です。

岡山ではマンサク(アテツマンサク含め)をタニイソギとい地方名で呼ぶそうです。谷急ぎ。谷間に生えて、春、急いで咲く花といったところでしょう。さらに調べると地域は不明ながら、トキシラズ、時不知と書く別名まであるのです。基本、春にしか咲かないので、これは謎です。

マンサクと並びよく栽培される中国原産近縁種、シナマンサク。咲いた時にまだ、前年の枯葉が残ることが識別点。しかもマンサクより早く咲くのです。ではマズマンサクとか? 言いません。

落葉樹だけがマンサクにあらず。常緑満作、それがあるのです。常盤万作、トキワマンサクです。冬に葉が枯れることなく、開花は春の盛り頃。赤と白が主です。2色咲になる珍しい品種もあり、大きな生垣が満開となった様は壮観でした。よく栽培され、最近、植栽が増えている気がします。庭木や生垣にするにはマンサクより剪定がきいてお行儀がよいです。また、年に二度、春と秋に咲く品種もあります。こっちがトキシラズだな。

最後に、マンサク科で属が異なる落葉樹もありました。シロバナマンサクです。白い花弁が房になっているものの、ふにゃふにゃしておらず、マンサクらしくないと、私は感じるのですが。結婚した頃、鎌倉山策で民家に咲く姿を見かけ、私はなんだかわかりませんでした。植物に詳しくないはずの妻が「マンサクじゃない?」と推測。帰って写真で調べたらこれが当たりで。シロバナマンサク、または学名のフォサギラ・マヨールで流通していました。今は家にもあります。

シナマンサク

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新井裕之(StudioA)
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