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コントラストで魅せる写真 #01

トーナルコントラスト
写真を魅力的に仕上げるために不可欠なテクニックの一つがコントラストです。コントラストには「明暗・色・奥行き」などが含まれます。今回は特に、トーン(明暗)によるコントラストに焦点を当てて、解説します。



トーナル(明暗)コントラストとは


写真におけるトーナルコントラストは、写真内の明るさと暗さの違いを指します。これは、写真の中の異なる部分や要素がどれだけ明るく、または暗く表示されているかを示す重要な要素です。高いトーナルコントラストは、写真が平坦で退屈に見えるのを防ぎ、視覚的な興味を引くために重要です。

低いトーナルコントラスト
高いトーナルコントラスト

一般的に、高いトーナルコントラストの写真は、明暗の差がはっきりしており、鮮やかで力強い印象を与えます。一方、低いトーナルコントラストの写真は、明暗の差が少なく、色合いが均一で柔らかい印象を与えます。

表現目的に合わせて、適切なトーナルコントラストを達成することで、感情や物語性をより効果的に伝えることができます。

低いトーナルコントラスト /  高いトーナルコントラスト 


高いトーナルコントラストの演出


写真では、明るい領域から暗い領域への視線誘導が起き、コントラストが視覚的な吸引力を生み出します。明るさと暗さの対比を活用することで、見る人の注目を特定の要素に向けたり、感情や物語性を強調したりできます。

高いトーナルコントラスト

下の写真は、コロナ禍の影響で閑散とした観光地(道後温泉)の様子を写した1枚です。観光客が消えた商店街をより感傷的に伝えるために、高いトーナルコントラストを意識した編集を行いました。

【オリジナル画像】
【編集画像】

本来であれば、賑わうはずの奥の建物に導かれるような視覚的動線と虚無感をトーナルコントラストを高めて演出しています。


影を創って光を強調


下の写真のように意図的に被写体に影を落とすことによって、高いトーナルコントラストを生み出して、主題を引き立てるという手法も効果的です。

影を意図的に配置したコントラスト

また、次の写真のように画面の一部分のトーンを暗くすることで、高いトーナルコントラストを生み出し、意図的に見せたい部分に視線を誘導させることも可能です。

赤く囲んだエリアを暗くして明暗差をつくる


誌面デザインを考慮した光と影


誌面を読む際に、文字が横書き(左から右)の場合、「Zパターン」と呼ばれる視線の動き方があります。これは、テキストや画像を効率的に読むための一般的なアプローチです。

写真を見る際、明るい部分から暗い部分へと視線は流れます。誌面の左上から光が差すようなトーンを描くと、読者は自然な流れで情報を処理でき、心地よく感じられます。

視線誘導「Zパターン」
光と影の配置を視線誘導に合わせる


誌面が縦書きの場合、視線誘導には「Nパターン」が利用されます。このパターンでは、紙面の右上から『N』字のように、右下>左上>左下 へと流れます。このNパターンに従うことで、縦書きの誌面においても情報を効率的に読み取ることができます。

写真も右上から光が差すような構図にすることで、Nパターンとマッチして、読者は全体のコンテキストから詳細までスムーズに移行できます。

もちろん、雑誌構成の意図やイメージの性格によって、常にこの法則が当てはまる訳ではありませんが、明るい方から暗い方への視線の流れは、最終的な紙面のデザインの視線誘導に合わせて考慮することは重要です。



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