いちじくの話
いちじくが好きである。
無類のいちじく好きというほどではないが、なかなかの上位である。
好きなフルーツランキングベスト5に入れてもいい。
自分の中でいちじくというのはフルーツヒエラルキーのまぁまぁ上位で、いちじくのナントカと言われるとそれだけで「美味そうだねそれ!」と思ってしまう。
と思っているのだが…
しかし世の中にはいちじくが苦手な人というのは案外いるそうだ。
特に男性。何故だ。嫌いな要素がさっぱり分からない。
タネが歯に挟まるからか?
しかし多様性の時代だ。他人の個性を尊重していかなければならない。
嬉しいお誘い
フードスタイリストの妻と仲良しの覚王山のocoboという京菓子のカフェの店主・三浦さんが「いちじく農園を見に行くから行きませんか?」と誘ってくれた。
三浦さんにはYUGEで「モーニングの会」というのを開催したときに、あんこの炊き方のレクチャーをしてもらったことがある。妻がパンの作り方を教え、三浦さんがあんこの作り方を教え、僕がコーヒーの淹れ方を教えるという朝の密会。8名✖️2日間限定で、朝からパンを作り、あんこを炊き、コーヒーを淹れて、作りたて炊きたて淹れたてをムフフと楽しむ大人の会だ。
僕と三浦さんとは以前から何度かちょっとした納品などで顔を合わせたことがあって、お互い顔だけは知っている程度だったので、モーニングの会の時に初めてちゃんとお話をさせてもらった。
印象としては飄々としていて柔らかな笑顔の持ち主だが、少し変なことを言うちょっと不思議な雰囲気の人だ。
なるほど、妻と気が合う訳だと思った。
僕は何かを作っている舞台裏を覗き見ることを楽しみに生きているような人間なので、その時彼に「農園とか見学に行くなら同行したい」とお願いをしていた。彼はその時のことを覚えていてくれていて、この度誘って頂いたというわけだ。
さて、当日。
こう言うところに連れて行ってもらうまで失念していたのだが、やはりちゃんとした和菓子職人さんというのは、それぞれのフルーツごとに契約農家があってそう言うところから仕入れているんだなと改めて気が付いた。
先日お会いしたミシュランで星を取るほどのフレンチのシェフも信頼している魚屋さんや肉屋さんからしか仕入れないと話してくれた。市場に出回る前のものを仕入れているそうで、「仕入れで半分仕事が終わる」と。それだけ仕入れ先というものは大切なんだな。
三浦さんはりんごや桃や栗も独自の仕入れルートを持っていて、今回もいつも仕入れているいちじく農家さんだが見学に行くのは初めてというところだった。
ここで驚いたのは三浦さんがいちじくが好きではないと言うことだ。
あ、いた。いちじく苦手男子。
と、思ったが、多様性ということで。
いちじく苦手でも美味しいいちじくのスイーツを作っているから不思議だ。
また一つ三浦さんの不思議度が上がる。
「でもここのいちじくは食べられるようにんだよね〜」とのこと。
いちじく農家さんの話
「いちじくは葉っぱの根元にひとつずつなるんですよ」
農家の方に言われて「あ、ほんとだ」と子供のように気が付いた。
昭和の生まれなので、子供の頃はいちじくなんてそこらじゅうになっていた。
セミを獲る頃になると美味しそうに木になっている印象だ。
いちじくも取ったりしていてとても馴染みのある植物なのだが、農家の方のお話を聞くまでいちじくのなり方は気が付かなかった。
知ってるつもりでも知らないことはたくさんあります。
「いちじくには天敵のような虫がいて、土から50センチはその虫にやられるんです。でもその虫は50センチより上には上がってきません。うちは無農薬だから大変で…。でも50センチより上は大丈夫なんです。でも一番困るのは勝手に入ってきて盗んでいく人間です」
50センチ以上上がれない虫というのも不思議だ。
枝を歩けばいくらでも上がれるだろうに。
これ以上行くと農家さんも困るだろうにという虫側の良心の表れか。
それより明らかに家庭菜園ではない職業農家の農園にフェンスを破って盗んでいく人間というのはどういうつもりなのか。これはさすがに個性を尊重するとか多様性では済まされない話だ。
その後、少しだけ収穫体験をさせてもらい、美味しくいただきました。
いちじく農家の皆さん。貴重な体験をありがとうございました。
妻がお店をやり出したおかげで、美味しいものを作る人にたくさん会えるようになったのは嬉しい。
ocoboさんで、いちじくのあんみつが食べられるそうですよ。
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