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マンガ実践稽古#01:ベタを効かす表現 × タテスク形式に挑戦【成果物の紹介】
このマガジン「マンガを描くとはどういうことか? 実践稽古」では、「マンガという総合芸術が生まれてくる過程で何が起こっているのか」を、先人に学びながら、自らマンガを描くことで探求していきます。
実践稽古の目的
実践稽古では、自分なりに探求してみたい目的を設定して実践をドキュメントしていきます。今回は、次の2点に焦点をあてて実践稽古を行った試作マンガを紹介します。
マンガ表現:ベタを効かす
マンガ形式:縦スクロールの表現
(試行錯誤の過程や成果物の省察などは別の記事にまとめていきます)
はじめに:ホドロフスキー監督の芸術観から題材を得る
この試作マンガの題材は、映画『ホーリーマウンテン』や『サイコマジック』などで有名な、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の芸術観「アートは、光る虫を飲み込んだカエルのようなものだ」にインスピレーションをいただきました。
以下に引用する、ホドロフスキー監督、アートとは「光るウンコ」だと語るというウェブ記事のなかで、監督は次のように述べます(太字の強調は筆者)。
宇川:そこで監督、果たしてアートとは何でしょう?
ホドロフスキー:アートは、光る虫を飲み込んだカエルのようなものだ。
宇川:なんですか!どんな暗喩があるんですか。
ホドロフスキー:カエルは大きな口を持っています。そして暗いところに住んでいます。月が欲しいと月に憧れます。ですからそこにホタルみたいな光る虫がいますね。そうすると光っているがゆえに食べるわけです。そしてそれはまるで光を取りに行こうとするアーティストのように、それを消化します。それでウンコとして光る作品を出すのです。でもそれは月ではありませんが、月のような、謙虚な排出物がアートです。
宇川:ハードコア・ピュアネス・グロウ・シットがアートなんですか。
ホドロフスキー:今あなたがやっていることをもし理解できなくても、それは心配しなくていいと思います。豚がいます。でもその豚をバカにしないでしょう。ですから、消化できないような種をその豚にあげてください。何の役にも立ちません。でも長い時間をかけてウンコが出たら、それが豊かな土壌を作るかもしれない。ですからいろんなところに種を撒いていけばいいのです。分かろうが分かるまいが。
宇川:ありがとうございます!ホドロフスキー監督に拍手を!!
ホドロフスキー:アリガトウ!!
この芸術観に触れながら、まさに創造とは消化だなぁと噛み締めました(学習が食事?)。同時に、創造=消化こそが真のインプット(アウトプットではなく)なのだと、自分の実感を裏づけてくれた気がします。
そして、頭の中にイメージが溢れてきました(ほとんど監督のことば通りではありますが)。ただ、このビジュアルイメージを何らかの形式で記録したい。気がつけば、見開きのマンガ形式でノートにラフ画を書き殴っていました。それを縦スクロール形式に変換しながら表現してみたのが本作です。
タテスクマンガ: 「芸術とは何か?」 試作版
縦スクロールマンガ形式で画像を貼ります。虫や排泄物など、グロテスクな表現が含まれますのでご注意ください。よろしければ、ぜひご覧ください。
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noteに投稿すると、より客観的な対象として見えてくるのが良いなといつも思います。現時点でやれるだけやってはいるものの、スクロールしながら、想定外に読み飛ばしてしまう場面があると気づいたり、この描写だと意味が伝わらなさそうだなぁと感じるところがあったり、改善点に気づきやすくなっているなと思えます。
おわりに
これを描きながら、創造=消化というインプットの機会に恵まれたことに感謝の念を抱きました。あらためて、ホドロフスキー監督の記事を引用しておきます(太字の強調は筆者)。
宇川:そこで監督、果たしてアートとは何でしょう?
ホドロフスキー:アートは、光る虫を飲み込んだカエルのようなものだ。
宇川:なんですか!どんな暗喩があるんですか。
ホドロフスキー:カエルは大きな口を持っています。そして暗いところに住んでいます。月が欲しいと月に憧れます。ですからそこにホタルみたいな光る虫がいますね。そうすると光っているがゆえに食べるわけです。そしてそれはまるで光を取りに行こうとするアーティストのように、それを消化します。それでウンコとして光る作品を出すのです。でもそれは月ではありませんが、月のような、謙虚な排出物がアートです。
宇川:ハードコア・ピュアネス・グロウ・シットがアートなんですか。
ホドロフスキー:今あなたがやっていることをもし理解できなくても、それは心配しなくていいと思います。豚がいます。でもその豚をバカにしないでしょう。ですから、消化できないような種をその豚にあげてください。何の役にも立ちません。でも長い時間をかけてウンコが出たら、それが豊かな土壌を作るかもしれない。ですからいろんなところに種を撒いていけばいいのです。分かろうが分かるまいが。
宇川:ありがとうございます! ホドロフスキー監督に拍手を!!
ホドロフスキー:アリガトウ!!
太字部分を読みながら、自分も一介の「豚」だなぁと思います。「消化できないような種」を、他者や世界から受け取ること。そして、時間をかけて、つくることで消化する。謙虚な排泄物を生み出す。それはまた、自分を含めた誰かの「消化できないような種」として新たに生き続けるのかもしれない。そういう創造=消化の連鎖のなかにいるのだなぁと、しみじみと感じられました。
次回は、本作の制作過程で立てた稽古の目的と、目的を実現するために考えたことなどをドキュメンテーションしたいと考えています。
2024/12/05 追記
このマンガの更新版を、以下の記事にアップしました。