みそ汁と腰痛
数年前まで個人で療術院をやっていた。しかし商売が絶望的に下手で、3年もたずに閉業してしまった。今は身内や知り合いに、たまに施術をするぐらいだ。
院をやっている時期は、施術よりも宣伝に時間を費やすことが多かった。自分なりに手間暇かけてつくったチラシを、何を思ったか古民家が立ち並ぶ地域に配ったりしていた。もっと閑静な住宅街に配ればよかったものを、と今さらながら思う。恐らく、ネット環境などないであろうご年配の方々に、自分の存在を知ってもらいたかったのだと思う。
それでもたまに、知り合いの知り合いから紹介されてお客さんが来てくれることがあった。
今回は、とある民宿の女将さんの身に起きた、不思議な(?)お話し。
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その日、俺の院に来てくれた女性は母の昔からの知り合いで、奈良県の山間にある民宿の女将さん。足首に痛みがあって座りずらいという。
施術前に、不調に関してのこれまでの経緯を訊く。すると、以前は足ではなく、腰に強い痛みがあったのだという。かなりひどい痛みと痺れだったようで、仕事にも支障をきたし、あるとき医師に相談し。手術を受けることを決めたそうだ。
仕事の調整をし、手術の日取りも決定した。それから数日後。手術を翌日に控えた日。台所でみそ汁をお椀に注ごうとした。しかし、誤って大量の熱いみそ汁が入った鍋を倒してしまった。熱湯に近い温度のみそ汁が、女将さんの足にかかり、熱さで思わず身体がびくっと硬直したようになってしまった。
そのあと、こぼれたみそ汁を片付け。軽いやけどあとを冷ましていると、不思議なことに気が付いた。腰の痛みが全くないのだ。痺れもなくなっている。
さっきまであんなにも痛くて、痺れもあったのに。熱いみそ汁をかぶってから痛みがなくなっている。でも明日手術が決まっている。どうしようか。
女将さんは医師に相談した。ありのままに、みそ汁をかぶったら痛みが消えたんですと。医師は首をかしげながら、なぜそうなったのか分からないが、痛みがなくなったんなら手術は止めておきましょうと言い。結局手術はキャンセルとなった。
そんなことが、しばらく前にあったんですと女将さんは話してくれた。この話しを聞いて、恐らくは強い熱を皮膚に感じたせいで筋肉が急激に収縮し、そのひょうしでズレていた筋肉か椎間板が元の位置に戻り。神経の圧迫が解消されたために、痛みが消えたんだろうなと思った。
しかし、それが。手術を明日に控えたタイミングで。いつもやっているみそ汁をお椀に注ぐという動作を、たまたまその日に限ってミスをして、熱いみそ汁をかぶってしまった。そしてそのひょうしに、たまたま奇跡的に体内の不調箇所が改善した、と。
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ただの偶然だと思う。だと思うが、なんらかの因果のようなものを、感じざるおえない。人間はふしぎ。人生はふしぎ。だから面白いのかもしれない。
(腰痛でお困りの方、決してマネしないようにお願いします。わざと熱いみそ汁をかぶったりしないように。肩こり腰痛でお困りなら海藻類。とくにアオサがおススメです。)
(写真:みそ汁の写真がなかったので、熱々のコーヒーの写真)
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