
父のどんど焼き、信長の左義長、そして大船渡の山林火災【今日の余録】
野焼きとは焼却炉を使わず、野外で廃棄物を燃やす行為のことだが、伝統的な農業手法でもある。病害虫防除や土壌改良に効果があるが、現在は一定の条件下で行う以外、法律で認められていない。
僕にとって火にまつわる身近な記憶は、幼いころに見た「どんど焼き」だ。毎年小正月になると、父が正月飾りを集めて畑で燃やす。それをただぼーっと眺める。火が燃え盛るのをみつめているだけなので、特におもしろくはない。楽しい正月の終わりを宣言されているみたいで、個人的にはあまり好きじゃなかった。とはいえ、新年の風物詩のひとつであったことは間違いない。
父は、おそらく祖父から教わったものを、伝統として次世代にも伝えようとしていたのだろう。一方で当時の僕は少し冷めた目で見ていて、「いつかこの辺も家だらけになれば、こんな火の行事はできなくなるな」と思っていた。いまやこのどんど焼きも法規制の対象なので、家だらけになるかどうかに関係なく、簡単にはできなくなった。これはこれで残念な気持ちが湧き出てくるらしい🙃
どんど焼きは地域により呼び名が異なり、関西だと「左義長」と呼ばれる。平安時代の宮中行事に由来し、織田信長が安土城下で盛大に執り行ったことでも知られている。信長は派手な南蛮風の衣装で参加し、政治的な演出としても活用したという。
こうした伝統的な火の文化の大切さを感じる一方で、火の危険性も痛感する。先日発生した大船渡市の山林火災は80棟以上が焼失し、多くの人が避難を強いられている。これを書いている時点では、いまだ鎮火していない。一度勢いがつけば、簡単には消えないのだろう。火の恐ろしさを改めて思い知らされる。消火活動に尽力する方々の安全と、被災された方々の一日も早い日常回復を心から願うばかり。