
「よそ者」から「担い手」へ ―地方社会の新しいかたち【今日の余録】
地域おこし協力隊として浦幌町に移り住み、後に町議となった本間さんの話を読んで、現代の地方社会の変容を考えた。
かつて柳田國男は『遠野物語』で、地域に根づく独自の文化や暮らしを丹念に記録した。当時の地域社会は、外部との関係が限定的な世界。しかし、地方は大きく変わろうとしている。本間さんが感じた「よそ者にも優しい土地柄」という言葉に、その変化が映し出されている。
地域おこし協力隊の活動は、地域ブランドの開発やPR、農林水産業への従事、住民支援など多岐にわたり、外部の視点を活かした取り組みが各地で展開されている。活動内容の報告会を実際に確認してみると、地元愛は僕より強いのではないかと感じた。地域の課題をなんとかクリアしたいという思いも伝わってくる。その結果、約6割の隊員が任期後も定住し、地方議員として活躍している人たちも増えているようだ。これは、「よそ者」が、地域の重要な担い手として認められ始めている証だろう。
以前は、地方創生とは、その土地で育った若者たちが「戻ってきたい、住み続けたい」と思える環境づくりだと考えていた。しかし、地方と都市に境界を作るような考え方自体が、「よそ者」という言葉を生み出す元凶になっている気がしている。そんな狭苦しい考え方は取っ払い、住みたいと思う人が住むのが一番なのではないかと思うようになった。大切なのは、地方の文化や伝統を守りながら新しい息吹を取り入れ、より豊かな地域社会を築いていくことだ。
確かに地方には、公共交通機関の未整備や職種の限定など、都市部にはない課題が多い。しかし、インターネットを中心とするICT(情報通信技術)の発達により、地方と都市の距離は確実に縮まっている。未来技術社会実装事業で進められている自動運転やAI・IoTなどの最先端技術を活用すれば、その距離はより一層縮まるかもしれない。
「昔ながら」と「今だからできること」をうまく融合させ、新しいモノを「よそモノ」扱いせず受け入れていくこと。そんなことを考えさせられた余録だった。