座る暮らしの服 ケープコート
◾️きっかけは市販のケープ
電動車いすで暮らしているお客様が素敵なケープを見せてくださいました。妹さんからのプレゼントだというケープは、羽織るだけで着られる(袖に腕を通さなくていい)ので重宝しているそうです。上質な生地で暖かそうですねと申し上げたら、なぜか寒く感じることがあるとのこと。同じようなシルエットで、色違いの、もっと暖かいコートが欲しいとのご要望でした。
◾️なぜ寒いのか
ケープを預かって仕事場に戻った私は、「こんなに暖かそうな生地なのに、どうして寒さを感じるのだろう...?」と考えました。羽織らせていただいて、立ったり座ったりしているうちに、鏡を見て気づきました。
ケープは、立って着るとお腹もお尻もぐるりと包み込んで暖かいものですよね。そのケープを着て、いすに座り、肘掛けに乗せるように手を挙げると...お気づきでしょうか。
車いすに座ると、肘を曲げて手を前に出すような姿勢になります。すると、ケープの裾が持ち上がり、手と膝の間が大きく開きます。車いすが前に進んでゆけば、この隙間から風が入って来るでしょう。それで手や腕やお腹周りが冷えるのでしょう。
また、立っているときにお尻まで包み込む後ろの裾が、座った時には車いすの座面や背もたれにもたついてしまうだろうな、とも思いました。
◾️新たなデザイン
寒さの原因がわかりましたので、お客様のご要望に沿ったコートを作っていきます。
ポイント1
「手を挙げても、裾が持ち上がらない、十分なゆとりと丈があるもの」にします。これにより、脇や前からの風の侵入が減るはずです。とはいえ、それだけでは、フレア分量が多く丈が長いだけの重いコートになってしまいます。
ポイント2
そこで「ケープのデザインを損なわず、かつ、腕を通しやすい袖をつける」ことにしました。
ポイント3
最後に「背中まわりをすっきり」させて、体と背もたれや座面との間でコートがもたつくことのないようにしました。
◾️座る暮らしのケープコート
出来上がったのがこのケープコートです。
トレンチコートのガンフラップにも似たパーツが、裾に向かってドレープを重ねています。ここが一番こだわったデザインのポイントであり、大切な機能でもあります。
ドレープに見えるこちらの部分が、実は袖になっています。
この袖を裏(内側)から見るとこんな感じです。
一般的な袖と違い、縦に長くアームホールを取ってあります。これにより、手や腕の動きに不自由さがあっても、袖に腕を通しやすくなります。
お納めした日に、お客様がとても喜んでくださったポイントでした。
モデル着用写真はこちらです。
◾️立って着る服、座って着る服
横からの着用写真をご覧ください。手元から脇、そして後ろへの裾のラインを、風が入り込みにくいようにデザインしています。また背中もすっきりとした分量で、後裾が座面にかからないようにしています。
先ほどご紹介した、「立って着ることを前提とした」市販のケープの図と比べると、裾のラインの違いがおわかりいただけると思います。
袖は、寒さを防ぐため、手の甲まで覆う長めの丈にしています。
袖口をまくれば(ホックでとめます)手が出ますので、電動車いすの操作などもしやすくなります。
次の冬にはここ数年控えた分、たくさんおでかけをして、楽しい思い出を作っていただきたいなと思っています。
お客様は「このケープは、きっと他にも欲しい方がいるよ。」と温かい応援をくださいました。ひとりでも多くの方に届くように、頑張ろうと思います。
◾️デザインシート
洋裁の経験があれば、こちらを参考に作ってみてください。
(難易度★★★ パターン製作やコートなどの縫製ができる方)
デザインシートの商用利用はお控えください。
ケープコートはホームソーイングで制作するには難易度が高いので、ご希望があればstudio fukuへお気軽にお問い合わせください。(studio fukuのホームページに移動します)
◾️オーダーのお問い合わせ
studio fuku ではケープコートの製作を承ります。
同仕様のケープコートのお仕立て代 参考価格 26,400円(税込)
※ お仕立て代のほか、生地やボタンなどの材料費、送料などがかかります。
※ デザイン、仕様などを変更する場合は、別途料金がかかります。
ご依頼のご相談、試着のご希望など、お気軽にお問い合わせください。
(studio fukuのホームページに移動します)