凡事徹底が生んだYOASOBIの歴史的ヒット。【屋代陽平氏・山本秀哉氏/第一期音楽マーケティングブートキャンプレポート vol.10】
10月3日
第十回は、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(REDエージェント部)の屋代陽平様/山本秀哉様を講師にお迎えし、「YOASOBIにおけるマーケティング戦略」についてお話いただきました。
大まかな流れ
・YOASOBIについて
・デジタルマーケティングで重要なコト
・デジタルマーケティング
・グローバルマーケティング
・まとめ
〇YOASOBIについて
小説を音楽にするというコンセプトのもと生まれたユニット、YOASOBIは2020年度の紅白歌合戦への出場を始め、快進撃を続けています。
〇デジタルマーケティングで重要なコト
凡事徹底・朝礼暮改を大切にしながらデジタルマーケティングを行ってきたというお二人。当たり前なことを徹底的に行い、少しでもおかしいと思ったら、臨機応変に変えていくなど世の中に合わせた戦略をとることが重要だといいます。
ここから、YOASOBIのマーケティング事例を基に、デジタル・グローバル的アプローチについてご説明いただきました。
〇デジタルマーケティング
1.プランニング
結成して二年余りというYOASOBIは、比較的楽曲が少ないといいます。しかし、その分一曲一曲に情報を持たせ、丁寧に届けることを大切にしているそうです。各曲にMVと小説があるという特性を活かした、立体的な楽しみ方も可能になっています。
ストリーミング数に関しては、聴かれ続けないと順位が落ちていくため、生活への浸透度が鍵になると考えているそうです。
一方ダウンロードに関しては、初動のダウンロード数=アーティストへの期待値という風に捉えられます。
そしてMVについては、YOASOBIだけでは表現しきれない楽曲の世界観をクリエイターの力を借りて表現するための手段だと考えているそうです。これらの数字から、楽曲ごとの響き方や聴かれ方の違いを分析しているとのことでした。全ての楽曲でチャート一位を狙うというよりは、作品それぞれのパワーが段々と広がっていくように、時間をかけて楽曲を育てるストーリー性を重視しているそうです。
他にも、YOASOBIは、シングルで全楽曲を配信後、それらをまとめたアルバム「THE BOOK」を配信しました。すると、それを機に過去の楽曲のチャート順位が上がり、ピーク時には20位以内に持ち曲全てがチャートインしたといいます。
さらに、アルバムのリリースと同じタイミングで新曲の配信を行うことで、アルバムから新曲への導線を作ったといいます。
また、「広く聞いてもらう」ために、楽曲ごとにどのターゲットに刺したいか、アーティストと話し合いながら、音楽を作っていたそうです。楽曲が売れることよりも、狙ったターゲットにしっかりと刺さることを重視したプランニングを立て、YOASOBIの幅を広げていけるような楽曲配信を行ったといいます。
2.ソーシャル
YOASOBIとしてのソーシャルの使い方に関してお話しいただきました。
一言でいうと、「ファンとの共有&参加感」というキーワードが挙げられるそうです。
結成二年余りということもあり、お客さんと一緒に成長して行くという認識を大切にしています。具体的には、楽曲のチャートアクションや再生回数、達成した記録などをこまめに発信することで、ファンと共に目標を達成している感覚を共有するようにしました。
それと同時に、既存の楽曲を聴いてもらうきっかけを定期的に作るということも意識していたといいます。この考え方は、アーティスト自身にも大切にしてもらっているそうです。
また、出演予定だったROCK IN JAPAN FESTIVALが中止になった際には、演奏予定だったセトリの予想キャンペーンを実施しました。ファンにプレイリストの作成・シェアをしてもらうことで、今後YOASOBIの主戦場になるストリーミングへの理解を促し、今後もそのように楽しんでほしいという想いがあったといいます。マイナスを即プラスに変える臨機応変さが際立つ企画内容でした。
他には、配信ライブのライブレポートの募集を実施しました。
ファンにYOASOBI のライブレポートをnoteに投稿してもらい、最もビューを稼いだ優秀作品を公式マガジンに掲載し、執筆者を2回目のライブオフィシャルレポーターとして指名しました。元々、小説投稿サイトの作品から生まれたアーティストということもあり、UGCの効率的な活用方法に重きを置いていたといいます。
3.フィジカル
今の時代、事実としてフィジカルを手に取ってもらうことは難しいといいます。しかしデジタル中心だからこそ、逆説的にフィジカルの価値が上がるとも考えているそうです。それを踏まえ、YOASOBI が作ったアルバムについてご紹介いただきました。
特徴としては、CDアルバムの従来の概念を壊すバインダー仕様で、後から特典などを追加することで継続的に使うことができます。お客様自身で完成させてもらうという形態にすることで、達成感や満足感を味わってもらい、アルバムへの愛着を深めてもらうような仕掛けを作りました。CDを発売する意義として、手に取ってくれた人がしっかり喜んでくれるモノに仕上げたそうです。
〇グローバルマーケティング
1.DSP
グローバルに向けたマーケティングを行う際には、
・ソーシャルメディア(YouTube含む)のフォロワー数
・YouTube動画やSpotifyなど現地リスナー数
・広告展開などプロモーションに関する予算
などの数字を追うことはマストたといいます。ピッチするテリトリーでどれだけの数字があるのかが重要になってくるそうです。
2.英語版リリース
日本で作ったクリエイティブをなるべくそのまま海外展開していきたいと考えているため、楽曲の言語を英語にローカライズするのみで、ジャケット写真やMVは基本的に同じモノを使用しています。楽曲の音楽的な響きも、元々は日本語で音のハマりなどを重視しているため、英語版でもできるだけ近い音で楽しんでもらえるようにしているとのことです。
3.その他
実施するさまざまな施策で海外との接点作りができるところはないか常に意識しています。
具体的には、海外7カ国で発売されたユニクロとのコラボUTの事例が挙げられます。
一目でYOASOBIと分かるデザインやUTの発売に合わせた「三原色」の配信やYouTubeでの生配信ライブ、YouTube Musicのキャンペーンと連動し、海外でもWeb&交通広告展開などを行いました。また、リリース情報や大切な告知については英語も併記し、海外のリスナーも多く見るコミュニティ欄の更新をこまめに行いしました。
しかし、あくまで日本のファンが中心であり、海外を目指すことで国内ファンが置き去りにならないように細心の注意を払っていたとのことです。
〇まとめ
特別なことをしていたというよりは、ただやるだけではなく、なぜやるかという目的を持って当たり前のことに取り組んできたといいます。そしてその認識をアーティストと共有してきたからこそ、この短い期間でここまでやってくることができたとおっしゃっていました。また、アーティストとの信頼関係も鍵となっており、自分たちの目的のある行動をアーティストに信頼してもらっていたからこそ、スピード感を持って何事も進めることができたということでした。
〇次回予告 次回10月10日は、LINE MUSIC取締役COOの高橋明彦様を講師にお迎えし、「LINE MUSICとLINE系サービスの活用法」についてお話いただきます。
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