投球の角度と変化量と空振りの関係 右投手編
今回は、前回やった投球の角度と変化量の空振りの取りやすさの影響を、右投手でも検証することです。
投球の変化量
今回の分析にあたり、投球の変化量は以下に示す4つのグループに分類しました。これは投球の変化量、水平方向(pfx_x)と垂直方向(pfx_z)の2つの値をクラスター分析(k平均法)によって分類した結果になります。以下の図1にデータを示します。
この図は横の軸が水平方向(pfx_x)の変化量を、縦の軸が垂直方向(pfx_z)の変化量を反映しています。このプロットは捕手・審判視点のものなので、図の左側にプロットがあるのは、右打者のインコースへ水平方向に変化していることを意味します。
4つのグループの特徴をあげると、
Group1:水平方向(pfx_x)と垂直方向(pfx_z)の変化が他と比べると大きい
Group2:水平方向(pfx_x)の変化が大きく、垂直方向(pfx_z)の変化は小さい
Group3:水平方向(pfx_x)の変化が小さく、垂直方向(pfx_z)の変化は大きい
Group4:水平方向(pfx_x)と垂直方向(pfx_z)の変化はともに小さい
これら4つのグループで投球の角度が変化することでパフォーマンスがどのように変化してくるかを検証していきます。
投球コース
投球の角度は、投球コースによって変わってきます。例えば、垂直方向の角度であれば低めに投げたほうが当然大きくなります。角度の違い=投球コースの違いとならないように、下図の区分によって投球コースを分類し、それぞれで投球の角度と変化量の影響を検証します。
投球の角度と変化量と空振りの関係
それでは、投球の角度と変化量の空振りへの影響を投球コースごとに比較していきます。まずは、右投手対左打者の組み合わせでゾーン1(外角高め)のデータを以下の図2-1-1に示します。
グループごとに投球の角度と空振りの関係を示しています。空振り率が高くなるほどプロットは赤くなります。投球の角度によって空振りを取りやすくなるのであれば、特定の方向に向けて赤くなるグラデーションを確認できるはずです。
図を見ると、Group2とGroup3は、垂直方向の角度が小さいほど赤いプロットが目立ち、空振りが多くなっているといえるでしょうか。
同様の組み合わせで、ゾーン2(真ん中高め)とゾーン3(内角高め)のデータを図2-1-2と図2-1-3に示します。
ゾーン2では、垂直方向の角度が小さいほどやや赤いプロットが目立ち、空振りが多くなっています。他の変化量のグループの違いも確認していきます。
続いて、ストライクゾーン内の真ん中の高さ、ゾーン4からゾーン6までのデータを以下の図2-1-4から図2-1-6に示します。
こちらでは、どのグループにも空振りが多くなる角度は見られません。
同じように、ストライクゾーン内の低め、ゾーン7からゾーン9までのデータを以下の図2-1-7から図2-1-9に示します。
こちらでも空振りが多くなるような角度は見られません。
次に、ストライクゾーン外の高めのゾーン11と12のデータを以下の図2-1-10と2-1-11に示します。
こちらでは垂直方向の変化が小さいほど赤いプロットが目立ちます。
最後に、ストライクゾーン外の高めのゾーン13と14のデータを以下の図2-1-12と2-1-13に示します。
どのグループにも空振りが多くなる角度は見られません。
次に、右投手対右打者の組み合わせで同様のデータを見ていきます。ストライクゾーン内の高め、ゾーン1からゾーン3までのデータを以下の図2-2-1から図2-2-3に示します。
全体的にうっすらと赤く、垂直方向の角度が小さいほど赤が濃くなっているでしょうか。
続いて、ストライクゾーン内の真ん中、ゾーン4からゾーン6までのデータを以下の図2-2-4から図2-2-6に示します。
どのグループにも空振りが多くなる角度は見られません。
次は、ストライクゾーン内の低め、ゾーン7からゾーン9までのデータを以下の図2-2-7から図2-2-9に示します。
こちらも、どのグループにも空振りが多くなる角度は見られません。
次に、ストライクゾーン外の高めのゾーン11と12のデータを以下の図2-2-10と2-2-11に示します。
どちらのゾーンでも垂直方向の角度が小さいほど空振り率が高いという関係を確認できます。これは変化量のグループを問いません。
最後に、ストライクゾーン外の高めのゾーン13と14のデータを以下の図2-2-12と2-2-13に示します。
ゾーン13(アウトコース)で、Group3とGroup4では垂直方向の角度が大きいほど空振り率が高くなっています。
全体的にみると、空振り率が高くなるのは、ゾーン11と12の高めのボール球で、垂直方向の角度が大きいほど空振りを取りやすいといえます。
打球の評価
今回もhit in playとなった打球の角度と速度からwOBA値を推定した値(estimated wOBA)でも同様の集計を行いました。例として、左投手対左打者の結果を以下の図3-1-1に示します。
右投手においても、このように特に投球の角度や変化量のグループによる違いは、他のゾーンと組み合わせを含め見られませんでした。他の図表は末尾に参考資料として表示しておきます。
まとめ
以上の集計より、右投手も左投手と概ね同じ結果となりました。高めのボール球で空振りがとりやすいという結果は、同じ投球コースであれば、かえって角度のないボールのほうが下からくるようなイメージで打ちにくいのかもしれません。
“角度のあるストレート”といわれると、低めへの角度の大きなストレートのイメージがありますが、どうも投球の角度と投球コースを混同しているような気がしなくもないです。
データ元
タイトル画像:いらすとや
以下に打球の評価の残りの図をアップしておきます。
打球の評価:右投手対左打者
打球の評価:右投手対右打者