打球の角度を見てみよう(※2019/12/26修正)
※追々記2019/12/26
データのクリーニングを行いました。詳しくは『Statcastデータのクリーニング』にて確認ください。
※追記2019/12/18
打球の角度のデータ数にミスがあったので修正しています。
打球の角度は30.5°といったように、小数第一位まで記録があるのですが、小数部分を切り捨ててカウントしていたつもりが、30°ピッタリのデータしかカウントされていませんでした。
ファウルの数が多いと思ったのはこういうわけで、カウントされていなかったデータを追加したものに修正しています。
今回はStatcastのデータから、打球の角度を見ていきたいと思います。
打球の角度を測定するというのは凄い技術ですが、全く新しい未知のデータというわけではありません。私たちが普段、ゴロ・フライ・ライナーなどと呼んでいる打球を、“角度”という指標によって定量的に細分化しているにすぎません。
前回紹介したNHKの番組でも触れていたことですが、30°前後の打球がホームランになり易いということが判明しているので、30°前後の打球をどれくらい放つことができたのかが強打者の評価基準の1つとなります。
こんな感じで打者の打球の角度は評価されるようになってくると思いますが(実際には打球の速度とセットで)、その際に『そもそも一般的傾向として30°前後の打球はどれくらいの頻度で打ち上げられているの?』という情報が基準として必要となります。
今回の目的は、この一般的な傾向として、打球の角度がどのようになっているのかを確認したいと思います。
打球の角度
今回は2019年のStatcastのデータから打球の角度を集計します。打球の角度は以下の図1に示すように-90°から90°までの値を取ります。
データは0.1°単位で測定されていますが、今回は小数部分を切り捨て、-90°から90°までの打球の度数をカウントしました。
打球の角度の分布
それでは、打球の角度の分布を以下の図2-1に示します。データは、”hit into play”となった打球、つまりフェアグラウンドに飛んだ打球になります。
角度を視覚的に表現する
図2-1はそれぞれの角度での打球の頻度を見ることができますが、-90°から90°という角度の情報は横一線に並んでいることで消失しています。ここでは、データを集計するだけではなく、視覚的にイメージしやすい表現方法を模索したいとも考えていますので、この消失した角度の情報を踏まえた作図も試みたものを以下の図2-2に示します。
この図にいらすと屋さんの絵を加えたほうが雰囲気が出るでしょうか?(図2-3)
バットが火を噴いたような図ですが、火柱の高さ(=原点からの距離)がその角度の度数となります。
この図の場合、打球の角度も視覚的な情報として提示されているわけです。現状として図2-1とどちらが良いともいえませんが、試行錯誤の一環でもあるので何か助言を頂けるとありがたいです。
打球の種類の確認
次に、打球をゴロ(ground_ball)、ライナー(line_drive)、フライ(fly_ball)、ポップフライ(popup)という打球の種類に分けて同様の図を作成したいと思います。角度という指標で一括して表せば、こうした種類の情報は不要になりますが、角度の対応を確認することが目的です。データを以下の図3-1と図3-2に示します。
図3-2を見れば、打球の角度とゴロ等の分類は、それほどイメージとはかけ離れていないことを確認できると思います。また、図3-1から打球の種類が角度によって厳密に分けられているわけではなく、一部が被っていることも確認できます。
ファウルも見ておく
最後に、”hit into play”だけではなくファウル(foul)の角度も見ておきたいと思います。データを図4-1と図4-2に示します。
注意点として、ファウルの場合打球が後方に飛ぶというケースがあります。そうした打球も-90°から90°で表されているので、この図のファウルには後方に飛んだケースも含まれています。
ファウルの特徴としては、-15°あたりと40°あたりに2つピークがあるというところでしょうか。前者がゴロで、後者がフライのファウルだと思います。そして40°以上のファウルは、”hit into play”となった打球よりも多く、打球の角度が挙がりすぎると、ファウルかポップフライとなってしまうと言えそうです。
フロンティアとしてのファウルの打球情報
一応まとめましたが、このファウルの情報が何に役に立つかは不明です。そもそもファウルについて、これまでほとんど検証されていないのではないでしょうか?
あれやこれやと解剖が進む野球の中でも、ファウルについては未開拓の部分を多く残しているといえます。果たして打者や投手を評価する材料が眠っているのでしょうか?
解説者が時に、「今のは良いファウル」ということもありますし、追い込まれてからファウルでしのぐスキルのようなものがあるかもしれません。自分の予定では手が回りそうにないので、金脈が眠っている保証はできませんが、興味のある人は掘り下げてみてください。
次回予告
今回は2019年のデータのみを用いていますので、今回見られた傾向がMLBに一貫した傾向なのかどうかを、2018年以前のデータを使って次回は確認してみたいと思います。
隔週くらいのペースで進めることを目標としています。それでは。
画像:いらすと屋