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HRの期待値のシーズン間の変化

 前回の分析では、打球の距離から求めたHRの期待値の分布を確認しました。 

 今回はこのHR期待値の分布がシーズンを挟んでどのように変化するのかを確認するのが目的です。
 
 前回の分析で確認されたことですが、このHR期待値の分布は打者によってことなります。そこで今回は打者をHR/FB(*)によって分類し、それぞれのグループでHR期待値のシーズン間の変化を見てみました。
 
*ここでのFBは飛球(フライ・ライナー・ポップフライ)の値とします。一般的なフライのみを対象としたHR/FBとは値が異なってくる点には注意してください。
 
 分析には2018年と2019年のデータを用いました。

HR/FBの性質

 HR期待値の分布のシーズン間の変化を見る前に、先にHR/FBの性質を確認しておきたいと思います。
 
 2018年、2019年ともに100球以上の飛球の記録のある打者を対象に、HR/FBのシーズン間の相関を求めました。データを以下の図1-1に示します。

 相関係数は0.61なのでそれなりに強い年度間の相関が確認できます。シーズンを挟んでも翌年もだいたい前年と同程度の値になることを意味しています。
 
 続いて、2018年のHR/FBと2019年のHR/FBから2018年の値を引いた値との関係を以下の図1-2に示します。

 ここで強い負の相関関係が認められると、そのスタッツは打者自身にはコントロールできない要素で左右されるところが大きい、つまりは運に左右されることの大きいスタッツということができます。データを見ると、弱い負の相関関係なので、運に左右される程度男それほど強くないといえます。
 
 年度間相関と合わせて、比較的安定したスタッツといえそうです。

シーズン間の分布の変化

 それでは、HR期待値の分布のシーズン間の変化を確認するために、打者を2018年のHR/FBの値から以下の5つのグループに分類しました。
 
・10.0%以上
・7.5 - 10.0%
・5.0 - 7.5%
・2.5 - 5.0%
・2.5%未満
 
 これらのグループごとのHR期待値の分布のシーズン間の変化を以下の図2-1から図2-5に示します。

 データを見るとHR期待値が90%以上の飛球の割合が減少するのは2018年のHR/FBが10.0%以上のグループのみで、他は微増という結果になっています。
 
 HR/FBが10.0%を超える打者には、翌年に90%以上の飛球の割合が減少し、揺り戻しのような現象が起こるのかもしれません。
 
 この結果の一覧を以下の表1-1と表1-2に示しておきます。

まとめ

 以上、HR期待値の分布のシーズン間の変化を分析しました。もう少し分析機関を伸ばしたかったのですが、2020年の試合数が少ないので断念して2年分のデータとなっています。
 
 基本的には安定しているHR/FBの値ですが、10.0%を超えるという非常に高い成績になると、揺り戻しのような現象が起こる可能性が考えられます。
 
 次回は、このHR/FBが10.0%を超える打者のグループから何人かピックアップしてデータを見たいと思います。

タイトル画像:いらすとや

データ







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