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菊池雄星選手の移籍前後での打球の質の比較
2025年はAngelsでのプレーが決まった菊池雄星選手ですが、これまで2024年のシーズン中にAsrosに移籍した前後の成績を比較してきました。
今回はhit_into_playとなった打球の質を移籍の前後で比較してみたいと思います。
打球の質とは
今回注目した打球の質とは、Statcastにあるhit_into_playとなった打球のというスタッツです。
これは、打球の角度と速度から推定される打撃成績のwOBA値になります。この値が高いほど投手からしてみれば危険な打球といえます。
以前の分析では、投球コースと結果の関係を示していますが、打球の結果は、球場の形やちょっとした方向の違い、野手の力量によって変わってきます。こうした要素を除いて、打球の角度と速度から成績を推定したものが“estimated_woba_using_speedangle”となるわけで、打球の質を見るには良いスタッツであると考えます。
投球コースと打球の質
というわけで、まずは菊池選手のストレート(4-Seam Fastball)について、対左打者への投球のうち、hit_into_playとなった打球(フェアグラウンドに飛んだ打球)の“estimated_woba_using_speedangle”値(estimated_wOBA)を以下の図1-1-1に示します。
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左側がBlue Jays所属時、右側がAstros移籍後のデータになります。図中の破線がストライクゾーンを示しています。この図は、捕手・審判視点からのプロットなので、ストライクゾーンの右側に左打者が立ちます。
データを比較すると、Astros移籍後に特にestimated_wOBAの低い値が増えたとは言えない結果です。
同様の集計を右打者で行ったものを以下の図1-1-2に示します。
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破線で示したストライクゾーンの左側に右打者が立ちます。
データを見ると、プロットが多いせいもありますが、それほど違いは確認できません。
次に、スライダー(Slider)のデータを以下の図1-2-1と図1-2-2に示します。
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どちらの図もestimated_wOBAの色には違いが内容に見えます。ただ、図1-2-2の対右打者のデータでは、Astros移籍後のプロットは右打者のアウトコースに寄っているように見えます。
続いて、カーブ(Curveball)を図1-3-1と図1-3-2に、チェンジアップ(Changeup)は左打者への投球は無いので対右打者のデータを図1-4に示します。
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こちらは、Astros移籍後は投球自体が少ないので判断材料に欠けたデータといえます。
全体的に見てあまり違いがありませんが、estimated_wOBAの色のグラデーションの幅を大きくとり過ぎて違いが見えにくくなっている可能性と、プロットの多い図では重複して特徴が見えにくくなっている可能性が考えられます。
そこで以下の図2に示すように、estimated_wOBAの分布を確認しました。
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図中の黄色の線は、左から全体の25%、50%、75%の値になります。この50%の値が.240になるのですが、ここを中点に以下の図3-1-1と図3-1-2に示すように投球位置ごとにestimated_wOBAの平均を取ってみました。
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図3-1-2の対右打者のデータからは、ストライクゾーン内の左側、つまり右打者の内角でAstros移籍後が少し青くなっており、estimated_wOBAが低くなっていることを確認できます。
他の球種のデータを以下に示します。
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他の球種ではそれほど違いはなさそうです。
まとめ
打球の質をざっと比較しましたが、それほど違いは無いように見えます。無理やり違いを見出すのも良くないので今回はこれくらいにしておきたいと思います。
データ元
タイトル画像:いらすとや