2018年のHeath Hembree投手のスライダーとカーブ
前回は『アメリカン・ベースボール革命』のエピソードに出てきた、2018年のJoe Kellyのスライダーとカーブのデータを見ました。
今回はもう1人名前があがった投手であるHeath Hembree投手のデータを見ていきたいと思います。
2018年のHeath Hembreeのシーズン中の変化
Heath Hembree投手もスライダーを得意としていましたが、シーズン中に次第にフォームが変化し、威力が落ち始めます。ここでフォームを修正するのではなく、現状のフォームにあったカーブの割合を増やすことで乗り切ります。
こうしたHeath Hembree投手のシーズン内のスライダーとカーブの変化をStatcastデータから見ていこうというのが今回のテーマになります。
スライダーとカーブの投球割合
最初に2018年の月ごとのスライダーとカーブの投球割合と、それぞれの空振率の変化を見ていこうと思います。このデータは『アメリカン・ベースボール革命』の本文中にも出てきますが、今回は左右の打者で分けたデータを以下の図1に示します。
こちらは投球割合のデータです。Heath Hembree投手の場合、シーズン中にカーブの割合がスライダーを逆転することはありません。7月以降カーブが増えていくといった感じです。
次に、スライダーとカーブの空振率を以下の図2に示します。
7月のカーブの空振率は左右の打者ともに高いですが、他ではスライダーと大きく差があるわけではありません。
ボールの変化量の推移
次に、ボールのリリースポイントと変化量について月ごとの推移を見ていきたい思います。まずはスライダーの水平方向の変化を下図に示します。
横の軸は水平方向のリリースポイント位置を、縦の軸は垂直方向のリリースポイントの位置を表しています。プロットの色でスライダーの水平方向の変化の大きさを表しています。シーズンの平均をグレーで、そこからプラス方向への変化(左打席方向)で赤色、マイナス方向(右打席方向)への変化が大きいほど青色になっています。
プロットを見ると、リリースポイントが次第に低くなっていくのがわかります。そしてプロットの色は、赤から青へ、左打席方向への変化が無くなっていくことを確認できます。
同様に垂直方向への変化を主計したものを下図に示します。
垂直方向への変化ではプロットが逆に青から赤に変化しており、沈んでいたものが沈まなくなっていくことが分かります。
次に、カーブで同様の集計をしたものを下図に示します。
カーブもスライダーと同じく、リリースポイントが次第に低くなっていることを確認できます。水平方向へのプロットは赤いプロットが増えていっており、スライダーでは見れなくなった変化をカーブで見ることができるようになっています。
垂直方向への変化は、スライダーと同じく次第に赤いプロットが増えており、沈んでいたものが沈まなくなっていくことが分かります。
投球結果の推移
シーズン中のリリースポイントの変化とボールの変化量を確認できましたので、併せて投球結果のプロットも確認したいと思います。下図にスライダーとカーブの結果をそれぞれ示します。
まずはスライダー、
次にカーブを示します。
プロットの位置がリリースポイントの位置を表しているのはボールの変化量の集計と同じで、ここでは投球の結果によってプロットの色を変えています。
スライダーでは空振が次第に減って行っていることが分かります。一方カーブでは、7月に空振が増えていますが、8月以降はそれほど見ることができません。これは図2で確認した傾向と同じす。
まとめ
以上Heath Hembree投手の投球の変化を見てきました。Heath Hembree投手の場合は、スライダーで失った水平方向への変化をカーブで補ったような形です。
前回のJoe Kelly投手とあわせて、問題のある投球を修正するのではなく、現状に適した方法を導入することで乗り越えるという良い事例かと思います。
タイトル画像:いらすとや
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