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バレーボール学会に向けて 2025

 今年もバレーボール学会の季節がやって参りました。2025年は第30回記念大会とのことで、2月25日と26日に慶應義塾大学の日吉キャンパスで開催されます。

 今年も平日開催か……。とは思いましたが、一回ストップすると再開が難しいので今年も一般研究発表に参加します。というわけでテーマはこちら、
 
バレーボール版:勝利付加値(Win Probability Added : WPA)の作成の試み
 
 これだけでは何のことかわからないと思うので、内容を説明したいと思います。

バレーボールのニュース記事では

『今日の○○選手は〇得点だった。』
 
 こんな感じのバレーボールの記事を皆さんも見たことがあるではないかと思います。内容に多少の味気無さを感じますが、ここでのポイントは得点というスタッツが、選手がどれくらい活躍したかという総合評価指標として”暗に”用いられているところにあります。

総合評価指標とは?

 選手たちのプレーは様々なスタッツとして集計されていますが、これらはそのまま比較できるものではありません。そこを統一の基準に変換して合計したものを総合評価指標といます。
 
 総合評価指標があると、様々なプレーによる選手の貢献を一本化して評価できるので、誰が一番活躍したのかを評価することができます。また、様々なプレーの価値も統一基準で明らかになるので、バレーボールという競技の構造を理解することにも役立ちます。
 
 あまり意識してはいないかもしれませんが、バレーボールにおける“得点”も総合評価指標にあたります。スパイク・ブロック・サーブという異なるプレーを“得点”という統一した基準に集約しているからです。しかし、”暗に”と指摘したように、得点が総合評価指標として相応しいかどうかという裏付けはありません。また、スパイク・ブロック・サーブのどれも同じ1点という評価方法が妥当かもわかりません。

野球のはなし

 野球には,勝利付加値(Win Probability Added : WPA)という指標があります。これが何かを説明する前に、以下の図に示すように、野球では試合の進行状況と得点差から、このまま進むとどれくらいの確率で勝利できるかを計算する方法があります。

https://baseballsavant.mlb.com/gamefeed?date=2024-10-30

 このデータは昨年のワールドシリーズ最終戦です。序盤は下側に伸びていますがこれはヤンキースが勝利に近かったことを示しており、終盤ドジャースが逆転したことを表しています。
 
 この勝利確率(期待値)は、1プレーごとに変動します。例えば、1回裏ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手の本塁打によって、ヤンキースの勝利確率(期待値)は55.0%から72.2%へと上昇しています。
 
 こうした勝利確率(期待値)の増減を選手ごとに合計したものが勝利付加値(Win Probability Added : WPA)というスタッツです。このスタッツの良いところは、打撃だけではなく、投球のような本来比較のできないプレーであっても、勝利確率(期待値)の増減という値に集約できるところで、これも総合評価指標の1つといえます。

バレーボールへの導入

 この勝利付加値(Win Probability Added : WPA)をバレーボールにも導入したいと考えたのが今回の発表のテーマとなります。
 
 なぜこれを選んだのかというと、勝利確率(期待値)を求める方法は既にあるからです。 下記のリンクを参照して下さい。

https://jsvr.org/wp-content/uploads/2024/02/jsvr22pp45-48.pdf

この研究は、得点と失点、サーブから始まるラリーかどうかという条件から、そのセットの勝利期待値を求めることができるというものです。

 この研究の方法を用いて、バレーボールでも勝利付加値(Win Probability Added : WPA)を求めて、選手の評価に使えないだろうかと考えました。
 
 どのような結果になったかは会場でお話しできたらと思います。

今のところの感想

 一通りの分析を終え、エントリーもできましたので、後は発表用の資料をつくろうかという状態です。今のところの感想ですが、残念ながら今回の成果をもってバレーボールにおける総合評価指標が完成したとはいえません。
 
 理由としては、使用したデータに限界があるだけではなく、もう少しコンセプトを詰める必要があるところもあります。
 
 中途半端な出来で発表するなよと思われた人もいるかもしれません。しかし、個人的には一般研究発表というものは、このくらいの状態で持って行って、批判や意見をいただく場所と考えています。

続きは会場で

 というわけで、色々とお知恵を拝借できるとありがたいのと、便利な総合評価指標がバレーボールにもあったほうが良いという、このテーマに興味を持ってくれる人が出てきて欲しいと願いを込めて、今年も発表しようと思います。
 
 タイトル画像:いらすとや

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