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リリースポイントと身長の関係2018年のJoe KellyとHeath Hembreeのリリースポイントと身長
今回は久しぶりにリリースポイントと身長の関係を分析してみたいと思います。
この関係に興味を持った発端ですが、『アメリカン・ベースボール革命』という書籍にJoe KellyとHeath Hembreeという2人の投手についての興味深い記述にあります。
これは、シーズン中にリリースポイントが低くなってきた2人の投手が、主となる変化球をスライダーからカーブへと変更して奏功したケースになります。
この事例から、球種によって相性の良いリリースポイントの高さがあるのではないかと考えられますが、投手によって身長がことなるので、リリースポイントの高さ自体からは判断できません。
そこで、投手の身長とリリースポイントの比率を求めることで、大体どのくらいの高さから投げているのかを割り出し、球種との相性を調べてみたいと考えています。現在の測定技術なら、投球フォームの軌跡や腕の角度といったデータも近々利用できるようになるかもしれませんが、それまでの代替として使えないものかと考えています。
2018年のJoe Kelly投手のリリースポイントと身長
2年ほど前にJoe Kelly投手のリリースポイントについては分析しています。
ここから大谷翔平選手と背番号とポルシェを交換することになるとは想像もしていなかったわけですが、上記リンクの分析からは、7月まではスライダーが多かったのですが、8月以降カーブが増えています。
そしてこれら2球種の変化ですが、スライダーが8月に垂直方向にマイナスのボールが増えてきており、一方、カーブは8月以降に水平方向への変化が大きくなっています。これが8月にリリースポイントの低下と同期して見られたのですが、これがJoe Kelly投手の身長に対してどれくらいの高さなのかを確認してみたいと思います。
まずはストレート(4-Seam Fastball)のリリースポイントの高さ(Release_Pos_z)の分布を月ごとに集計したデータを以下の図1-1に示します。
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横の軸は月を、縦の軸がリリースポイントの高さ(Release_Pos_z)を表しています。リリースポイントの高さは投手の身長で割った値です。実際の投球時には突っ立って投げているわけではなく、いくらか沈んで投げているのであくまで目安の値となります。
赤い●が1球ごとのリリースポイントの高さを、背景のオレンジの帯は分布を表し、帯が太いほどその高さでの投球が多いことを表します。
データを見ると、月が進むごとにリリースポイントが低くなってきていることを確認できます。
続いて、2シーム(2-Seam Fastball)のデータを図1-2に、チェンジアップ(Changeup)を図1-3に示します。
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チェンジアップは投球数が少ないので何ともいえないですが、2シームは4シームと同じような変化をしていることがわかります。
次に、以前の分析では本題となったスライダー(Slider)を図1-4に、カーブを図1-5に示します。
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大まかなリリースポイントの変化はこれまでの球種と同じで、7月までは大体身長の95%から100%辺りの分布に対し、8月は90%から95%辺りの分布へと低くなってます。
このリリースポイントの高さがスライダーとカーブの相性との違いとなったのでしょうか?
2018年のHeath Hembree投手のリリースポイントと身長
続いて、同様の分析をHeath Hembree投手で集計していきたいと思います。彼も以前に分析をしています。
彼もリリースポイントの低下が見られましたが、それに伴いスライダーの垂直方向へのマイナスの変化が小さくなり、カーブでは垂直方向へのマイナスの変化が見られるようになっています。
まずはストレート(4-Seam Fastball)のリリースポイントの高さ(Release_Pos_z)の分布を月ごとに集計したデータを以下の図2-1に示します。
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少し色は違いますが、データの見方は同じです。リリースポイントの高さは7月が底で月以上は少し上がっています。
それでは、スライダー(Slider)を図2-2に、カーブを図2-2に示します。
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概ねストレートのリリースポイントの高さと同じ変化をしています。スライダーは他の2球種と比べるとやや高めでしょうか。Joe Kelly投手と比較すると全体的にリリースポイントが低めとなっています。
まとめ
2投手とも慎重に対するリリースポイントの位置が同程度であれば、スライダーとカーブと相性の良いリリースポイントの高さといえたかもしれませんが、今回の分析では判然とはしませんでした。もう少し対象を増やしていきたいと思います。
データ元
タイトル画像:いらすとや