藤浪晋太郎のゴロの特徴
前回,藤浪選手の打球の分析をしたとき,ゴロが被安打になり易い傾向を確認しました。
その際,ゴロの打球の速度と角度を確認したところ,以下の図1のように打球速度100m/h前後で,打球角度が0°前後の打球が多いことを確認しています。
打球速度100m/h前後,打球角度が0°前後の打球は……
前回の分析では,安打になったゴロの打球の速度と角度,アウトになったゴロの打球の速度と角度を確認しましたが,今回は,Baseball SavantのStatcast Exit Velocity & Launch Angle Field Breakdown機能を使ってどのような結果になりやすいか見てみたいと思います。
Statcast Exit Velocity & Launch Angle Field Breakdownとは,打球の速度と角度を指定することで,その結果を確認することができる機能です。打球速度が100m/hで角度が0°の場合は下図のようになります。
グラウンド上の打球の位置と,結果を見ることができます。被安打率(BA)は .443と安打になり易いといえる値で,藤浪選手のゴロが安打になり易いのは,こうした安打になり易い速度と角度の打球が多いからといえそうです。
どういうボールを打たれているのか
それでは,藤浪選手がどこにどのようなボールを投げたことで,このような安打になり易いゴロとなっているのかを調べてみたいと思います。
Baseball Savantのilustratorという機能を用いて,藤浪選手の投球と打球との関係を調べていきます。
まず打球角度が -10°から +5°となった投球位置のデータを下図に示します。
1球だけライナー(Line Drive)があって,あとはゴロ(Ground ball)であることを確認できます。データは2023年7月14日の登板記録までになります。
このデータは打球角度が -10°から +5°の打球全てを含むので,打球速度が90m/h以上という条件を加えたデータを以下に示します。
全てのボールがストライクゾーン内に収まっています。
この2つの図での結果を比較したものを以下の表1に示します。
被安打率(AVE)もwOBAも.400を超えるので,藤浪選手もこの打球角度の範囲で多く安打を打たれているといえます。
このデータは対戦した左右の打者のデータを合わせたものですが,この傾向は打者の左右によって変わってくるものでしょうか?確認のために,打球角度が -10°から +5°の打球全てを含むので,打球速度が90m/h以上のデータをそれぞれ左右の打者で比較したデータを以下に示します。
左右の打者で結果を比較したものを以下の表2に示します。
データはほぼ半々に分かれたので,左右の打者による違いはないといえますが,これまでの全対戦打者のうち左打者が92人で右打者が131人(7/14現在)なので,左打者により打たれているといえます。投打の左右の相性を考えれば妥当ではないかと思います。
次に,打球角度が -10°から +5°の打球全てを含むので,打球速度が90m/h以上となった打球と球種の関係を下図に示します。
左打者にはストレート(4-Seam Fastball)とスプリット(Split-Finger)からなり,右打者にはこれにスライダー(Slider)が加わります。特定の球種に偏っているとはいえません。
最後に,これらの投球のうち、土のボールが安打になったかを下図に示します。
打球が安打になるかどうかには運も関与するので,現在安打のプロットが固まっているところだけに問題があるとはいえませんが,左打者の外角,右打者は低めのボールにアウトが多いです。
まとめ
藤浪選手のゴロが安打になり易いというところから分析をスタートしましたが,制球が悪いといわれている藤浪選手のストライクゾーンへの投球を安打になり易いゴロにされているといえそうです。
あとは,こうしたストライクゾーンに入った投球の質など調べてみる必要がありそうです。ストライクを取りに行った結果,打ちやすいボールになった可能性は確認しておく必要があります。
今回の分析は,Baseball Savantの機能を使わせてもらいました。便利なんですが,べったり頼りすぎてしまうのもちょっと怖いですね。
タイトル画像:いらすとや