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先発 藤浪晋太郎の記録 その2
前回,先発登板時の藤浪晋太郎選手のデータをまとめました。いろいろとデータを載せていったら長くなってしまったので,載せきらなかった部分を今回は紹介したいと思います。
投球位置と回転率(release_spin_rate)
今回確認するのは,投球の回転率(release_spin_rate)と位置の関係です。藤浪選手の投球時に,回転率の低いボールと高いボールでは投球位置にどのような違いがあるのか,すっぽ抜けたようなボールは回転率が低いのだろうか?という所を確認したいと思います。
まずは,左打者に対するストレート(4-Seam Fastball)のデータを以下の図1-1-1に示します。
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左から登板した試合ごとに4/1,4/8,4/15,4/22のデータが並んでいます。図中の黒の横線が地面のラインで,グレーの長方形がストライクゾーンになります。投球位置に●をプロットしており,回転率が高いほどプロットの色が濃くなります。この投球位置は捕手目線になるので,左打者はストライクゾーン右側に立つことになります。
データを見ると,大きく外れたボール球の回転率が必ずしも低いわけではありません。4/15,4/22ではストライクゾーン内で黄色の回転率の低いプロットが確認できます。所謂置いていくような投球なのでしょうか?
右打者に対する同様のデータを以下の図1-1-2に示します。
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右打者はストライクゾーンの左側に立ちます。4/22のデータを見ると,右打者の頭部付近になるでしょうか,大きく外れたボール球は回転率の低いボールが多いことがわかります。
続いて,スライダー(Slider)のデータを以下の図1-2-1と図1-2-2に示します。
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前回の分析より,スライダー(Slider)は回転率の差も大きくなく,図より投球位置もすっぽ抜けたようなボールも少ないため,回転率の影響は見えません。
次に,スプリット(Split-Finger)のデータを以下の図1-3-1と図1-3-2に示します。
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投球位置と回転率の間に特に関連を見出せません。
回転率とボールの変化量
次は,投球位置に変えてボールの変化量との関係を集計しました。回転がかかっていたほうが,良く曲がるのか?というところを調べます。
データを見る前に,藤浪選手のストレート(4-Seam Fastball)とスライダー(Slider),スプリット(Split-Finger)の変化量を,2023年の3/30から4/30までのMLBの右投手の変化量と比較しておきたいと思います。データを以下の図2-1から図2-3に示します。
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横の軸に水平方向への変化量を,縦の軸に垂直方向への変化を表しています。
図2-1のストレート(4-Seam Fastball)はMLBの右投手に包含されるような藤浪選手のプロットとなっており,そこまで変化の大きい投手ではないことがわかります。
図2-2のスライダー(Slider)は,水平方向への変化が小さいのが特徴といえます。図2-3のスプリット(Split-Finger)は,他の2球と比べると藤浪選手のプロットがばらついていることがわかります。これが藤浪選手だけに見られる傾向か,他の投手もこんな感じなのかは確認が必要ですが,投球のたびにボールの変化が一定ではないといえます。
藤浪選手の変化量を確認できたので,回転率との関係を以下の図3-1から図3-3に示します。
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図3-1のストレート(4-Seam Fastball)と図3-3のスプリット(Split-Finger)は,左上の変化量の大きいプロットほど回転率が高く,右下の変化量の小さいプロットほど回転率が低いことを確認できます。回転率が低いほど変化量が小さくなるわけですが,スプリット(Split-Finger)の場合,垂直方向へのプラスの変化が大きいことが良いことかどうかは判断が難しいところです。
図3-2のスライダーは,垂直方向への変化がマイナスのボールほど回転率が高いでしょうか。やや濃くなっていると思います。
回転率と打球の質
最後に,サンプルが少ないので簡易な確認になりますが,ボールの回転率と打球の質の関係を集計します。
MLBでは打球の速度と角度から,以下の6種類の分類があります。
Weak:打球速度60m/h未満の弱い打球
Topped:ゴロ性の打球
Under:フライ性の打球
Flare/Burner:ライナー性の打球
Solid Contact:Barrelに次ぐ速度と角度
Barrel:HRや長打になりやすい速度と角度
それぞれの分類の打球速度と角度の関係を以下の図4に示します。
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投手から見れば,リスクの高いBarrelやSolid Contactが少ないほど良いわけですが,藤浪選手のボールの回転率とこれら打球の質の関係を以下の表1-1から表1-3に示します。
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表1-1のストレート(4-Seam Fastball)では,回転率の低いボールでBarrelとなった打球が見られます。
表1-2のスライダー(Slider)では,そもそも回転率の幅が狭いので判断が難しいです。表1-3のスプリット(Split-Finger)の場合,回転率に関わらずゴロ性の打球のToppedが多くなっています。
まとめ
以上,藤浪選手のデータでした。こうした傾向がリリーフになってどのように変化していくのか,それとも変わらないのか,追いかけていこうと思います。
データ元
タイトル画像 いらすとや