打球の角度を見てみよう 2015~2019年の推移(※2019/12/26修正)
※追記2019/12/26
データのクリーニングを行いました。
詳しくは『Statcastデータのクリーニング』にて確認ください。
打球の角度は変化しているのか?
前回の分析では2019年のデータから、打球の角度がどのように分布しているのかを確認しました。今回は、Statcastの計測が始まった2015年以降、この打球の角度がどのように変化してきたのか、もしくは変化していないのかを確認してみたいと思います。
事前に打球データで確認しておく
2015年以降の打球の角度のデータを見る前に、大まかな傾向を確認するために、FanGraphsのデータを借りて打球データより、ゴロ(GB%)・フライ(FB%)・ライナー(LD%)・内野フライ(IFFB%)の内訳と、フライの中で本塁打の占める割合(HR/FB)を確認しておこうと思います。打球の角度のデータとは、こうした打球を細分化したものにあたるためです。データを以下の表1に示します。
ゴロ(GB%)が2%ほど減少して、その分フライ(FB%)が増えています。内野フライ(IFFB%)はそれほど増えていません。本塁打の占める割合(HR/FB)は2015年以降徐々に増加していましたが、2019年に急激に増えています。
フライボール革命を象徴するような変化といえると思います。では、このフライと本塁打の増加は、
・本塁打の生まれやすい30°前後のフライが増えたためなのか?
・フライ全体が増えたために本塁打も同じように増えたのか?
こうした観点から2015年以降の打球の角度を見ていこうと思います。
打球の角度 2015~2019
下図に示すように打球の角度は-90°から90°までの範囲で記録されています。水平より下への打球はマイナスと計測されます。
それでは、2015年から2019年の打球の角度を、以下の図1-1と図1-2に表します。データの集計と表示方法は前回と同じです。
図1-1は-90°から90°までのそれぞれの角度のヒストグラムになります。図1-2は打球の角度を反映させた図で、原点から良く伸びているところほどデータの数が多いことを表します。同じデータを2種類の図で表したものになります。2015年以降、どのような変化があったかを以下の図1-2-2に表してみました。
図1-2に色を付けただけのものですが、打球の角度が20°から30°あたり、0°から-20°辺りに変化がありそうな感じです。もう少し詳細に見ていくために、打球ごとにデータを見ていきたいと思います。
ゴロの角度の推移 2015~2019
まずはゴロ(ground_ball)から、データを以下の図2-1と図2-2に示します。
図2-1を見ると、図1で見た0°から-20°辺りで2015年の青のラインと比較して、以降のシーズンの度数が少なくなっていることを確認できると思います。これが表1で見たゴロの減少にあたると見て良いでしょう。
ライナーの角度の推移 2015~2019
次はライナー(line_drive)のデータを以下の図3-1と図3-2に示します。
ライナーについては、それほど変化はないようです。
フライの角度の推移 2015~2019
次はフライ(fly_ball)のデータを以下の図4-1と図4-2に示します。
フライについては、図4-1より、2015年以降本塁打になり易い30°を頂点としてフライが増えてきていることを確認できると思います。これが図1で確認した20°から30°あたりの打球増といえそうです。
ポップフライの角度の推移 2015~2019
最後にポップフライ(popup)のデータを以下の図5-1と図5-2に示します。
ポップフライも、それほど変化はないようです。
まとめ
以上のデータより、2015年以降では30°前後のフライの増加と、ゴロの減少を確認できたといえます。
フライボール革命以降、本塁打になり易い角度が30°前後と明らかになった結果、皆その辺りをねらって打っているのかなと思わせるデータといえます。この30°前後に打球を集めるスキルのようなものが今後打者を、特にホームランバッターを評価する要素となっていきそうです。
次回予告
次回は打球の速度について、打球の角度で見たように全体の分布を確認していこうと思います。更新は1月の予定になります。
たった数回しかアップしていませんが、2019年はこんなもので。
皆様良いお年を。
画像:いらすと屋