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藤浪の134球 投球回とリリースポイントと制球の関係

 今週は書く予定はなかったのですが,どうしても気になることがあったので,データを集めてサッと分析してみました。それが藤浪晋太郎選手の投球です。
 
 スプリングトレーニングをまずまずの成績で終え,初登板は大谷選手も所属するエンゼルスということで注目を集めました。結果はご存じの方のほうが多いと思いますが,順調な滑り出しからの3回に制球難から打ち込まれるという残念なものとなりました。
 
 ここで気になったのがデーブ・スチュワート氏の言葉,といっても現地での中継を見たわけではなく以下の記事を参照したのですが,

 「初回は上から下方向(のメカニック)だったが、3回には横回転気味になってしまった」

https://news.yahoo.co.jp/articles/78d139ccfb060e9ffdda189dfc926e8b5946fef7

というものです。
 
 現地の中継では映像を交えた解説があったそうですが,それは見れないので,データからこれを確認はできないでしょうか?下図のようにリリースポイントが低くなっていることを確認できるのではないかと思います。

 というわけで,4/1と4/8の藤浪選手の登板のデータを見ていきたいと思います。4/8も良い結果ではありませんでしたが,4/1と比較してどのような変化があったかという点にも注目していけたらと思います。

投球回とリリースポイント

  それでは,藤波選手の球種ごとのリリースポイントを,投球回に着目しながら見ていきたいと思います。まずはストレート(4-Seam Fastball)のデータを以下の図1-1に示します。

 左側が4/1のデータ、右側が4/8のデータになります。うっすらと投手の絵を追加しましたが,右投手である藤浪選手がリリースした位置を●でプロットしています。プロットの色はイニングによって変えています。
 
 データを見ると,4/1も4/8も初回の緑の●と比較すると,投球回が進むごとにリリースポイントが左下,つまり低く体からは離れた位置になって行く傾向を確認できると思います。
 
 同様のデータをスライダー(Slider)で集計したものを以下の図1-2に示します。

 4/1のリリースポイントに投球回による大きな違いはなく,4/8も5回(5th)には少し低くなっていますが,図1-1のストレート程の横の広がりはありません。
 
 次にスプリット(Split-Finger)のデータを以下の図1-3に示します。

 4/1に投球回による大きな違いはありませんが,4/8はストレートと同じ傾向を確認できます。
 
 残りの3球種,スイパー(Sweeper)とカーブ(Curveball),シンカー(Sinker)は投球数が少ないので一応以下の図1-4から図1-6にデータを示すだけにしておきます。

 以上のデータより,デーブ・スチュワート氏の指摘するような横回転になってしまった投球は,ストレート(4-Seam Fastball)と4/8のスプリット(Split-Finger)といえます。

球種ごとの投球位置

  球種によってリリースポイントが大きく変化したものもあれば,それほど違いのない球種もありましたが,それではこうした投球が実際にどのような位置に投げられていたのか,リリースポイントが大きく変化した球種は制球力を失ったのか見て行きたいと思います。
 
 まずは,左打者に対するストレート(4-Seam Fastball)のデータを以下の図2-1-1に示します。

 左側が4/1のデータ、右側が4/8のデータなのはリリースポイントと共通です。グレーの枠がストライクゾーンを表し,この投球位置にプロットしています。このプロットは捕手視点の者なので,左打者はストライクゾーンの右側に立ちます。ゾーン下の横一文字が地面のラインになります。
 
 データを見ると,4/1は投球数が少ないので判断ができませんが,4/8は明らかに投球回の進んだ3回以降,左打者のアウトコース高めにボールが抜けていることを確認できます。
 
 同様に左打者に対するスライダー(Slider)のデータを以下の図2-1-2に示します。

 これは次に示すスプリット(Split-Finger)のデータと比較すると,投球が安定したプロットであるといえます。では,そのスプリット(Split-Finger)のデータを以下の図2-1-3に示します。

 特に4/8のデータで,3回以降のプロットがとっ散らかっていることが確認できると思います。
 
 左打者に対しては、後1球シンカーのデータがありますので,以下の図2-1-4に示します。

 こちらはストライクゾーン内への投球ですが,結果は単打です。
 
 次に,右打者に対するストレート(4-Seam Fastball)のデータを以下の図2-2-1に示します。

 4/1は3回に高めのボール球がいくつかありますが,図2-1-1で見た左打者への4/8のストレート程荒れてはいません。4/8については,右打者の“右”の字付近への危険なボールが初回からあり,投球回が進むことで荒れたというデータともいえません。
 
 続いて,スライダー(Slider)のデータを以下の図2-2-2に示します。

 こちらは4/1も4/8も荒れたというより,ストライクゾーンの真ん中付近の危険なコースへの投球が目立ちます。
 
 スプリット(Split-Finger)のデータを以下の図2-2-3に示します。

 こちらも4/8に右打者の“打”の字付近への危険なボールがありますが,他はそれほど荒れているともいえません。
 
 他にもスイパー(Sweeper)とカーブ(Curveball)のデータがありますが,投球数が少ないのでデータだけ以下の図2-2-4と図2-2-5に示します。

改善策は……

 以上のデータからは,投球回が進むと主に左打者のストレートとスプリットが制球を欠いているデータといえそうです。右打者へはストライクゾーン真ん中への危険な投球が多く見えます。
 
 開幕から2試合連続で打ち込まれた藤波選手ですが,改善点はどこにあるのでしょうか。デーブ・スチュワート氏の指摘するような横回転にならないよう,初回のリリースポイントを維持すべきなのでしょうか?
 
 素人考えですが,これは難しいのではないかと思います。以下の記事でも紹介していますが,投球数が増えることでリリースポイントが低くなるという現象は,藤波選手以外の投手でも見られるからです。 

  なので,低くなったリリースポイントに適した投球をすべきではないでしょうか。例えば,リリースポイントが低くなってきても初回のイメージのまま投げないという身体感覚の問題として対応すべきなのかもしれません。

 また,以前紹介しましたが,リリースポイントの高さによって適した球種も変わってくるので,球種の構成など工夫できるのではないでしょうか。 

 上のリンクで紹介したJoe Kelly投手は,シーズン中にリリースポイントが低くなってきたことで,スライダーからカーブへと投球の構成を変化させています。こうした事例も参考になったりしないでしょうか。
 
 参考までに,これまでの藤波選手の球種の構成を以下の図3-1と図3-2に示しておきます。

 この構成が今後どのように変化していくのか,注目しておくと面白いかもしれません。

まとめ

  取り急ぎ,藤波選手のデータを集計しました。日本からMLBに来る投手はある意味完成された投手が多いのですが,藤波選手の場合,明確な課題というか修正点があって,これをどうクリアしていくのかをMLBの豊富なデータを使ってみていくことができるのは,個人的にとても楽しみです。
 
 次回は,もう少し登板が増えてから5月ごろにもう1回集計できればと思います。できれば次回の登板では何かしらの改善を見たいところです。
 
 最後に,Baseball Savantには以下のリンクに藤波選手のページがあります。色々なデータを見ることができますので,興味のある方は是非どうぞ。 

タイトル画像 いらすとや

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