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投球コースと打球の角度と速度

 投球の基本は「低めにボールを集めること」に異論がある人は少ないかと思います。もちろん、低めに投げてさえいれば打ち取れるほど甘い世界ではないのですが、高めに投げることのリスクを経験的に知っているために、なるべく低めに投げようということになっていると思います。

 今回の目的は、こうしたセオリーをStatcastデータから確認してみようというものです。高めと低めのボールの違いによって、打球の速度や角度はどのように異なってくるのかを検証してみたいと思います。

投球位置のゾーン分け

 まずは、高めのボールと低めのボールを識別するために、Statcastデータのplate_xとplate_zというデータを参照しました。plate_xは水平方向の位置を、plate_zは垂直方向のボールの位置を表します。2つのデータから投球の座標が決まるわけです。

 Statcastデータでは、この投球位置を元に13のゾーン(zone)に分類されます。2017年から2019年までの3年分のデータを用いて、ゾーンごとに投球位置をプロットすると以下の図のようになります。

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 厳密に区切られているのではなく、多少被っているようです。これら全てのゾーンで打球の角度と速度のデータを見ると冗長になりますので、今回は以下の図に示すストライクゾーンより、ゾーン1から3を高め、ゾーン7から9を低めのボールと定義し、打球の角度と速度を比較してみたいと思います。

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打球の比較

 まずは、打球の速度の分布を高めと低めでまとめた図を以下の図1-1と図1-2に示します。

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 データは打球の種類(ゴロ・ライナー・フライ・ポップフライ)ごとに分布を見ています。

 図1-1の高めのボールに対しては、速度の分布を見ると100m/hを超えるゴロ・ライナー・フライの数に差はないといえそうです。打球の種類で見ると、100m/h手前のフライの数が最も多いことがわかります。

 図1-2の低めのボールの場合、ゴロとライナーの数が図1-1と比較すると多く、その分100m/hを超える打球が多くなっています。一方で、フライの割合は相対的に低くなり、HRのリスクは低いといえると思います。

 続いて、打球の種類の比較から大体察しは尽きますが、高めと低めのボールに対する打球の角度の比較を以下の図2に示します。

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 原点からの角度が打球の角度を、距離がその角度への度数を表します。赤が高めのボールの角度の度数を、紺が低めのボールの度数を表します。

 紺の低めのボールについては、図1-2でゴロとライナーが多いことを確認できましたが、これが打球の角度が-15°から15°あたりの度数の多さに反映されています。

 ところで、以前打球の角度の分布を見た際には、マイナス方向にもっと大きな角度への打球が多かったように思います。おそらく、そうした打球はストライクゾーン外のもっと低いボールに対して多くなるのではないかと考えられます。

 低めのボールはライナーも多く、フライが少ないからといって安心なコースとも言えないと思います。

まとめ

 以上、高めと低めのボールに対する打球の角度と速度を見てきました。打球の速度の違いというよりは、角度の違いとして高めではフライが多く、低めではゴロとライナーが多いという結果でした。

 当たり前の結果ではありますが、投球位置と打球の角度と速度のデータを紐付ける試みの第一歩と考えてもらえるとありがたいです。

 ここから、より細かなゾーンでの検証、投打の左右の組み合わせ、球種による違い、また、打者から遠いコースへのボールには体のサイズの大きな打者のほうが有利なの?といった色々な分析ができると思います。そこら辺は追々検証していきたいと思います。

画像:いらすとや

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