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リリースポイントと身長

 Statcastには投手のリリースポイントの位置情報があります。
 
 このリリースポイントがシーズン中に低くなってきたことに、低くなったリリースポイントに適した球種の構成を変えて対応したという例があります。 

  この事例のように、リリースポイントの高さと相性の良い球種が分かると、投手がどの球種を武器にして良いのかという指針となります。
 
 しかし、ありえない例になりますが、タイトル画像のように3mくらいの投手がサイドスローで投げた場合と小柄な投手がオーバースローで投げた場合、同じリリースポイントの高さとなることもあります。
 
 リリースポイントの高さというデータ自体は客観的なものであっても、相性の良い球種を探すためには、投手の大きさの情報も必要になってくると思います。
 
 そこで今回は、リリースポイントの高さと投手の身長の関係を見てみたいと思います。大袈裟な例をあげましたが、実際の所は投手間でそんなに違いの無い可能性も十分あります。

分析対象

 分析の対象は2022年のMLBで100イニング以上の投球回の記録がある140人としました。彼らの球種ごとのリリースポイントと身長の関係を見ていきたいと思います。投手の身長は下図に示すBaseball Savantの投手のプロフィールを参照しました。

 多少サバを読んでいる投手もいるでしょうが、そこは致し方なしとします。

リリースポイントと身長の関係

  それでは、例としてストレート(4-Seam Fastball)のリリースポイントと身長の関係を以下の図1-1に示します。

 縦の軸に投手の身長(feet)を、横の軸にリリースポイントの高さ(feet)を取っています。図中の斜めの破線は身長 = リリースポイントの値を示しています。この破線より右側にプロットがある場合、身長より高い位置でリリースしていることになります。
 
 データを見ると、投手によってリリースポイントの高さにそれほど違いが無ければ、身長ごとにリリースポイントがもっと固まってプロットされるかと思いましたが、以下の図1-2に少し注釈をつけますが、同程度の身長であってもリリースポイントにはかなり幅があることを確認できます。

リリースポイントと身長とスライダーの変化量

 投手のリリースポイントに結構差があることが分かったので、身長とリリースポイントの関係が投球にどのように影響するかを検証してみたいと思います。今回は、スライダーの水平方向への変化量(pfx_x)と垂直方向への変化量(pfx_z)との関係を見てみたいと思います。まずは、左投手のデータを集計したものを以下の図2-1(pfx_x)と図2-2(pfx_z)に示します。

 身長とリリースポイントの関係は、リリースポイント/身長の値で縦の軸に示しています。この値が1.00の時、身長 = リリースポイントとなり、1.00を下回る場合は身長よりも低い位置でリリースすることになります。
 
 水平方向への変化量(pfx_x)は、マイナスが大きくなるほど右打席方向への変化が大きいことを意味します。垂直方向への変化量(pfx_z)は、マイナスが大きくなるほど下方向への変化が大きいことを意味します。
 
 同様の集計を右投手で行ったものを以下の図3-1(pfx_x)と図3-2(pfx_z)に示します。

 リリースポイント/身長の値が変わることによる水平・垂直方向への変化量に特に関連は無さそうです。

まとめ

 以上、投手のリリースポイントと身長の関係でした。今回は目立った関係は認められませんでしたが、スライダーの変化量との関係を見たように、他のスタッツとの関係も検証できそうなので、次回もこの方向で進めてみようと思います。
 
タイトル画像:いらすとや

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