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レセプション・パラドックス

 動くに動けない日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 たとえ体は元気でも、バレーボールをプレーするのが難しく困っている人もいるのではないかと思います。そこで、というのも気が引けますが、今回は1つこちらからバレーボールについての問題を出してみたいと思います。

 問題はタイトルにもあるように『レセプション・パラドックス』と名付けました。バレーボールにおける重要なテーマだと自分は考えています。もし、バレーボールをプレーする時間を取れずにいろいろと持て余している人がいれば、この問題について考えてもらえたらと思います。

レセプションの精度とスパイクの決定率

 レセプションというのはサーブレシーブのことです。レセプションは返球の精度から、A・B・Cパスというランクをつけて記録されます。そしてC→B→Aの順番に精度は高くなっていきます。

 バレーボールをやったことのある人であれば、

「レセプションの返球は正確に!」

 と叩き込まれているとは思います。こうした指導の背景には、精度の高い返球のほうが、後に続くスパイクを決める上で有利であるという考えがあります。

 この考えをデータで裏付けることは可能です。V リーグの2017/18シーズンのデータを以下に示します。

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 左の図は男子、右の図は女子のプレミアリーグ(現在のDivision1に相当)でのA・B・Cパスごと時のスパイクの決定率を表したものです。男女ともに最も精度の高いAパスの決定率が高いことを確認できます。

 次に、別のデータを示します。

 V リーグの2017/18シーズンの試合ごとにレセプションに占めるAパスの割合とレセプション時のスパイク決定率の関係を以下に示します。

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 こちらも左の図は男子、右の図は女子のデータになります。Aパスの割合と決定率の相関を求めたところ、相関は認められないという結果です。Aパスの割合が高くても決定率が高くなるわけではなく、Aパスの割合が低くても、決定率が低くなることもありません。

矛盾(パラドックス)について

 この2つのデータが、レセプションにおける矛盾(パラドックス)になります。今一度結果をまとめると以下のようになります。

・Aパスが返球された時の決定率が最も高い。
・Aパスの割合が高くなっても、全体の決定率は高くならない。

 Aパスが返球された時の決定率が最も高いのであれば、Aパスの割合が高くなれば、決定率も同じように高くなるというのが矛盾のない結果です。しかし、データはここまでのように矛盾した結果を示しています。

 それでは問題です。

 『なぜこのような矛盾が生じているのでしょうか?』

その答えは

 早速回答になります。なぜこのような矛盾が生じるのか、

 その原因はよくわかっていないというのが現状での回答です。

 相手を10点以下に抑えて勝つくらいの差が無ければ、試合の半分近くはレセプションから始まるラリーになります。これだけプレーの頻度が高いわけですから、レセプションの精度とスパイクの関係は試合の結果にとって、当然重要な意味を持つでしょう。

 しかし、レセプションの精度とスパイクの関係から、チームとしてはどのような成績を目指すべきなのか、現状からではよくわからないのです。

 この関係はバレーボールの中では未踏の地ということです。この矛盾を解くことができれば、それはゲームを制する上で有益な情報となるでしょう。

 というわけで、いきなりデータを揃えて分析して証明しろとはいいませんが、この矛盾がなぜ生じるのか?一つ考えてみるのはいかがでしょうか。

 これが頭の体操、もしくは無聊を慰めるものにでもなれば幸いです。

ヒント

 ヒントというほどのものではないですが、考えを組み立てる上での参考を上げておきます。一般に、こうした矛盾が生じた場合、その原因には以下のような可能性が考えられます。

1. 一方が間違っている。
2. 両方とも正しい。
3. 両方間違っている。

 1については、一見矛盾したデータではあるけれど、どちらかが間違っているという可能性です。これは、いずれか一方が間違っていることを証明すればOKです。

 2の”両方正しい”というのはどういうことかというと、何か条件があって、その条件を満たしているために、矛盾した結果が生じているというものです。これは、この分岐となる条件を示す必要があります。

 どちらかが正しく、どちらかが間違っているという可能性だけではないという考え方も必要だということです。

 3については、現状としては見当違いなデータを見てしまっているということになるので、正しく見るべきポイントを明らかにする必要があります。

 矛盾を紐解くセオリーのようなもので万能薬ではないのであしからず。

タイトル画像:いらすとや

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