大谷翔平選手の打球の距離とHR 2021
これまでの分析では、打球の距離とHRの関係をMLBの球場ごとに求めてきました。
今回はこれらのデータを元に、個人の打球の距離とHRの関係を整理していこうと思います。
Baseball Savantでは、Statcast Home Run Trackerで打者の飛球を以下の3種に分類しています。
No Doubters: Out at All 30 Stadiums, MLB全ての球場でHRになる
Mostly Gone: Out at 8 to 29 Stadiums, 8~29の球場でHRになる
Doubters: Out at 7 Stadiums or Fewer, HRになるのは7球場かそれ以下
この分類、例えばDoubtersが多ければ、その打者はラッキーなHRが多かったのかなという判断に使えそうですが、Mostly GoneやDoubtersのうち何本がHRになったのか、レギュラーシーズンとポストシーズンの記録を合算しているといった、使い難い面もあります。
例えば、2021年の大谷翔平選手の打者としてのデータは、Doubtersが7、Mostly Goneが25、No Doubtersは26ですが、No Doubtersの26本は全部HRだとして、残りの20本の内訳がわかりません。
それならば、これまで分析してきたように、打球の距離からHRになる確率を求め、50%の確率でHRになる打球のうち何本が実際にHRになったか?というデータを見たほうが良いのではないかと考え、今回は2021年の大谷選手のデータからこれを見てみようと思います。
打球の距離とHR
まずは2018年から2021年までのMLBの記録を用いて、ゴロを除く打球の距離からHRになる確率をLeft・Center・Rightの方向別に求めました。この距離とHRの関係を以下の図1に示します。
これはMLB全体でのデータですが、これに加えて球場ごとでも同様に距離とHRの関係を求めました。全ての球場の関係を図にすると大量になるのでここでは割愛しますが、MLB全体から見た距離とHRの関係と球場ごとの距離とHRの関係の両方から大谷選手の打球を見ていきます。
大谷選手の打球の距離とHR
というわけで、2021年の大谷選手のレフト方向へのゴロを除いた打球の距離とHRになる確率の関係を以下の図2-1に示します。
この図は右に行くほど打球の距離が長く、上に行くほどHRになる確率が高くなります。図1で見たように、距離が長く右に行くほどHRになる確率は高くなります。そして、赤のプロットが実際にHRになった打球、グレーのプロットはHRにならなかった打球を意味します。
データを見ると、HRになる確率が90%を超えた3本は全てHRですが、70%~80%のところでHRにならなかった打球が1本あります。その一方で、40%くらいの所で1本HRがあります。
このデータはMLB全体の距離とHRになる確率の関係から求めましたが、次に球場ごとに距離とHRになる確率の関係から大谷選手の打球の距離とHRになる確率を求めたものを以下の図2-2に示します。
一番HRになる確率が低いHRを見ると、図2-1では40%程度だったHRになる確率が、図2-2では50%を超えており、このHRは少し狭い球場でのものだったことが考えられます。こんな感じで2つの図を比較することで、球場に恵まれていたのかどうかが見えてきそうな気もしますが、何分最初の1人目のデータなので、これについてはもう少しデータを集める必要があります。
続いて、センター方向への同様の集計を以下の図3-1と図3-2に示します。
図3-1では70%から90%にあるHRが、図3-2では100%に近い値になっており、狭い球場での打球だった可能性が考えられます。
最後に、ライト方向へデータを以下の図4-1と図4-2に示します。
こちらは打球が多い分、HRになる確率のバラツキも目立ちます。
これら方向別の打球を、HRになる確率でまとめて整理したものを以下の表1に示します。
46本のHR中、30本以上は90%以上の確率でHRになる所謂文句なしの打球だったといえるのではないでしょうか。そんな中で、HRになる確率(HR%)の低い打球での成績がどういう意味を持つのか、というところはもう少しデータを集めてみる必要があります。
まとめ
以上、大谷選手のデータでした。何分実験的な集計なので何ともいえない所が多いのですが、ここからデータを蓄積していきたいところです。また、2022年の終了時には同様の集計をして、2021年からどう変化したかという所にも注目したいと思います。
次回は、2021年に大谷選手とHR王を争った打者たちのデータを見てみようと思います。
タイトル画像:いらすとや
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