フライの位置情報の整理
打球をアウトにする難しさをグラウンド上にプロットしたい。というテーマの下で、前回はライナーのプロットをやってみました。
その結果は以下の図1のような形です。
ライナーのグラウンド上での位置情報に加え、打球の結果と打球の角度と速度から推定される結果と比較し、実際の結果が推定よりもマイナス、つまり守備側から見れば良い守備をした結果はより青くプロットされる図です。
今回は、フライで同様の集計を行いたいと思います。図1のライナーでは打球の速度によって図を分けていますが、これはライナーと判定される打球は打球の角度の範囲がそれほど広くないため、速度のみで打球を分類しているわけです。一方フライの場合は、ライナーよりも打球の角度の幅が広く、これを無視するわけにもいきません。
Statcastによる分類を利用する
図1のように打球速度の分類に加えて、角度の範囲をいくつかに分けて設定した場合、速度×角度で条件が多くなってしまうという問題があります。
Statcastでは、打球の角度と速度によって打球を6種類に分類しています。以下の図2にこの分類を示します。
・Weak
・Topped
・Under
・Flare/Burner
・Solid Contact
・Barrel
上記の6つの分類に該当する打球の角度と速度を図1は表しています。分類の数としても丁度良いので、今回はこの6つの分類でフライを区分してみようと思います。
その前に、6つの打球の分類ごとに、ゴロ(ground_ball)・ライナー(line_drive)・フライ(fly_ball)・ポップフライ(popup)がどの程度該当するかを以下の表1に示します。
Barrelの中にポップフライが含まれるなど不可解なデータもありますが、少数なので今回は気にしないことにします。このデータの中から、フライのデータを抽出し、wOBAの値の分布を比較したものを以下の図3に示します。
Barrelでは大半がwOBAの値が2.000、即ちHRに該当します。UnderはほとんどがwOBA.000でアウトとなっています。
分類によってアウトになり易いものから、ヒットやHRの出やすいものがあることを確認できます。こうした傾向に対して、どれだけアウトを取ることができたのかということを見ていきたいと思います。
フライのプロット
というわけで、フライのプロットのデータを左右の打者別に以下の図4-1(左打者)と図4-2(右打者)に示します。
プロットが赤いほどwOBAの値が高いことを意味します。
これに続いて、前回求めたwOBA ValueとwOBA Valueの推定値(e_wOBA)との差を求めてみました。この推定値とは、打球の速度と角度から結果を推定した値になります。この2つの値をつかって、以下の差分値(δ_wOBA)を求めました。
δ_wOBA = wOBA Value - e_wOBA
δ_wOBAがプラスになるということは、推定値のwOBAのほうが低いことを意味します。アウトになると推定していたものがヒットになったようなケースといえます。守備側の視点から見れば悪い結果といえます。
逆に、δ_wOBAがマイナスであれば、推定値のwOBAのほうが高いことを意味します。守備側から見ればこれは良い結果です。
このプロットを以下の図5-1と図5-2に示します。
2017年から2019年のフライを全部まとめているので、データの多い分類では特徴がつかみにくくなっていると思います。
個人データを見る
そこで、前回に引き続き、2018年のBilly Hamilton選手とJaCoby Jones選手のデータを見てみたいと思います。
まずは、Billy Hamilton選手のwOBAの値のデータを以下の図6-1-1と図6-1-2に示します。
次に、JaCoby Jones選手のwOBAの値のデータを以下の図6-2-1と図6-2-2に示します。
続いて、wOBA ValueとwOBA Valueの推定値(e_wOBA)との差のデータを、Billy Hamilton選手のwOBAは以下の図7-1-1と図7-1-2に、JaCoby Jones選手のwOBAは以下の図7-2-1と図7-2-2に示します。
WeakとToppedのデータは無くても良いかなと思います。Underも±0付近の値が多く、アウトが期待される打球をアウトにしている結果と見ることができます。
残ったFlare/BurnerとSolid Contact、Barrelでは青や赤のプロットを見ることができ、守備力が反映された結果といえそうです。
特に、大半がHRになるBarrelといえど両選手とも青いプロットを確認でき、アウトを取っていることもわかります。
注意してほしいのは、グラウンドの枠外に青いプロットがありますが、これはフェンスオーバーのフライをキャッチしたわけではなく、あくまでグラウンドの目安の枠に過ぎないと見てください。MLBは球場の形状に差が大きいので、そうしたグラウンドの形状の影響を受けていると考えられます。
まとめ
前回のライナーでは打球の速度が4種類で、これに打球の角度も4種類に分類すると計16の図が必要となり……。とたくさん図を作成するよりは、今回の6分類は丁度良いと感じました。
後は球場の違いを反映させる必要がありそうです。この辺りは今後の課題です。
画像:いらすとや
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