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【物理】追い風でトップスピンがすっぽ抜ける理由

打球はいつの間にか落ちてコートに収まる訳ですが、その理由は複数のものが絡み合っています。単純に放物線で落ちているわけではない訳で、強風でかなり苦労した理由を理解するためにも、ボールがコートに収まる理由を先に整理しておこうと思う訳です。

打球が落ちる理由その1:正面からの空気抵抗

一旦、打ち出されたボールは絶えず正面から当たる空気の抵抗を受けて減速しています。上下方向に関しては重力によって落ちていくだけなので、単純な鉛直投げ上げと理解しておきます。水平方向成分は、ひたすら減速していきます。一般的に物理の授業で習うものでは水平方向に等速直線運動をしていると取り上げられてます。現実は減速してますから、普通に打つだけで、放物線より早くボールは下向きに落ちていきます。
追い風の時はボールの正面に当たる空気が弱まりますので、落ちる勢いが弱くなってしまいますね。

打球が落ちる理由その2:実は後ろの気圧が下がってる

下図のように前から来た空気はボールを避けて流れます。ボールの後ろに全ての空気が戻りきらないので、後ろの空気が薄くなります。そうするとボールはその薄い分を埋めようとして後ろに戻りたがります。これは上で書いた空気抵抗と合算しても良さそうですが、ボールの表面と空気との引っ掛かりなどで大きく影響を受けるものですから、ボールの毛羽立ちなどで変動を受けそうです。とにかくボールは飛んでいるだけで、後ろから引っ張られて減速しています。その結果、下に落ちるように見える訳です。
追い風の時は、後ろの低気圧部分に空気が補充されますから、ブレーキが弱まり、結果として落ちが悪くなります。

打球が落ちる理由その3:いわゆるトップスピンについて

これは誰もが知っている話だと思いますが、追い風と共に考えた方は少ないかと思います。基本的な考え方から行きましょう。上半分では前からの空気とボールの回転方向がぶつかるので、空気の流れが悪くなり、つまり空気が滞ることになります。下半分は滑らかに流れるので、空気が薄くなりがちです。結果、上の空気が濃くなり、下の空気が薄くなり、ボールは下に落ちていくという仕組みです。野球の変化球などと共に語られることが多いです。これは上の二つのように曲がっていくイメージではなく、平行移動のイメージになるのかもしれません。これは前から来る風が強いほど、強く働く効果です。普段でしたら、球速が反映される点になります。
追い風になりますと、前からの風量が減りますから、この効果が弱まります。

じゃあどうすれば良いのか

追い風の時はさまざまな要因によって、ボールが落ちなくなってしまいます。トップスピンも役に立たないようです。以前は「追い風ならトップスピンの球でコートに収めよう」となっていましたが、これは、当時のトップスピンが球速(飛距離)を落とすことで回転数を上げる打ち方だったからなのではないでしょうか。今は誰もがそれなりな飛距離を出せる時代となってしまいました。現状、最適な対策は思いつきません。ただ、このまま終わるのもどうかと思いますし、無理矢理に捻り出した方法を書いておこうと思います。

  1. 普段よりしっかり打つのはどうでしょうか。球速を風速に負けないくらい上げて、風があろうがなかろうが大差ない状態にまで持っていけば、良いかもしれません。ただし、現実的には厳しい話です。

  2. できるだけ弾道を低くするのはどうでしょうか。地面近くになると空気と地面との間に摩擦力が働くため、風速が落ちると考えられます。そうすると風の影響を減らすことができないでしょうか。

このように色々と思索を巡らせてみましたが、これぞと言うような決め手には至りませんでした。低い弾道でしっかり打つのが良さげではあるのですが、実際にやられた感触では、緩くて浅いトップスピンで跳ねさせた球が一番厄介だったと思います。気持ちよく打つのを諦めるのが吉かもしれません。


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