【道具】ポリかナイロンか、はたまたナチュラルか
先に結論をどうぞ。
「感触の好みで選んでください」
以下に書くのはそんなジャンルのアレやこれやと雑談です。個人的見解と事実の混在です。曲解もあるかもしれません。
それぞれの成分
ナチュラルは「タンパク質」が主成分。ナイロンはそのまま「ナイロン」。ナイロンは「ポリアミド」の一種。パンストに使われているのはナイロン。防弾チョッキに使われているのはポリアミドの一つ「ケブラー」。丈夫さが売り。ちなみにタンパク質もポリアミドの一種。ポリは「ポリエステル」が材料の一般名称。ビニールに含まれるのはポリエチレン、塩ビ、発泡スチロールなどなど。
皆さんの感触からしてもポリとナイロンとでナチュラルにより近いものはナイロンになると思います。分子構造から見ても近い種類なので納得なのではないでしょうか。
(図はかなり誤魔化してます。ポリアミドとポリエステルは近しい種類で何なら一つに括っても良い感じで、とりあえずビニールとは全く別種です。いわゆるゴムはビニールの仲間です。シリコンゴムはまた別種です。ややこしいですね。)
ポリは長持ち、ナイロンはすぐ切れる
正しいです。摩擦に対しての強さが段違い。(ただし素材としての話ではなく、ストリングとしての話。)糸の切れる原因は、横糸の上を滑るようにして動く縦糸が糸同士の摩擦によって削れていくことです。この時にできる溝のことをノッチと呼びます。
ハイブリッドにすると摩擦の時、弱い方の一方に負担がかかりますから、ノッチの成長が早まります。そうすると切れやすくなります。よくナイロンとポリのハイブリッドなどありますが、ナイロンが負けてしまいがちです。
ノッチができてしまうと、糸が動かなくなるので、スナップバックが起こりにくくなりますから、その点で考えるなら表面の丈夫なポリを縦横に張るのがお得です。ちなみにナチュラルも意外と溝になりません。どちらかというと小さく切れていきます。
ナチュラルは雨に弱い
正しいです。天然物ですから、水を吸いやすいです。ちゃんとしたメーカーのものは水が染み込みにくくなるようにコーティングしてますから、少しは持ちます。しばらく使って表面が摩耗したら一気に内部に染み込みます。
ポリはほとんど吸いません。加水分解の可能性はゼロではないですが、極めて少ないので、濡れても気にしなくて良いです。ナイロンは少し吸います。ポリよりも影響があります。内部に水が入ることで、多分伸びます。加水分解が起こるとかはありそうですけど、時間的に気にしなくて良いです。
丸か多角形か
糸の断面の形状の話です。ナイロンとポリとでは考え方が変わってきます。
ナイロンはスナップバックをあまりしませんから、動かない網でボールを回す形でスピンをかけます。溝ができて戻らない網目とかよくありますよね。昔のスピンが今から思うと掠れた当たりだったのはその辺に理由があります。したがって、引っ掛かりの強くなる多角形が望ましいのではないでしょうか。昔は螺旋状に細い糸を巻きつけたナイロン糸もありましたね。
ポリの場合はスナップバックを中心に考える必要があります。丸型の断面では角で当たる多角形よりも接触面積が増えそうです。つまり、摩擦が大きくなって、糸が動きにくいのです。したがって、スピンのかかる糸として名の挙がる「ハイパーG」「ポリツアーレブ」あたりが多角形なのには納得です。とはいえ、この辺は糸の素材の粘弾性なんかによりますし、シリコーン含浸なんかで調整されてしまえば変わってしまう話です。
重さの違い
ぺんてぃさん調べによりますと100平方インチ16x19のラケットにおいて、ポリなら18g、ナイロンで14g、ナチュラルで18gとのことです。4gの差ということは意外と大きい。鉛テープ2枚程度の影響がありそうです。網目の細かいラケットなら、それだけで更に2g程度重くなるとのことです。
ナチュラルを張ると良い球が出るという印象のうち3割程度は重量増の影響だと思ってます。
ポリは怪我しやすい
そんなことはありません。有名な川副先生のところを読み漁っても良いですけれど、なまらテニスさんの記事がうまくまとまってますので、ぜひどうぞ。僕自身はポリで打つ方が腕には優しいと思ってます。ただしフレームショット多めの方はその限りではありません。
個人的な印象ですが、「球乗りがいい=手応えが長くある=腕で支える時間が伸びる=腕への負担が大きい」じゃないかなと思います。となるとナイロンマルチの柔らかい糸の方が疲れそうです。
あるいは、「硬い糸でミスショット=短時間で刺激が伝わる=強く握っちゃう=腕への負担がある」というのもありそうですから、そう考えるとポリの方が疲れるかもしれません。
結論
単純にこれなら良いというものではありません。重さやスピンのかかり方には差があります。腕へのダメージなんかは大して差がありません。結局のところ「感触の好みで選んでください」ということになります。