宇佐見りん「推し、燃ゆ」
※ネタバレありません
文藝2020年秋季号に掲載されている、宇佐見りん作「推し、燃ゆ」を読んだ。
この作家の作品は初めてだった。
言語化の鬼。
あらゆる場面、心情が言葉になって自分に染み込んで、湧き上がってくる感じがする。
ある場面で、私は数年ぶりに、小学生の時に目の前で看取った祖父のことを思い出した。
静まりかえった病室のなか、祖母、母、姉、東京から駆けつけた叔母がいた。母が「人って、不思議やな。」と泣きながら呟いたことを。
アルバイトの場面でも、大学生のとき、最初から最後まで気持ちの入らなかったバイト先の居酒屋のことを思い出した。
言葉でこんなに動かされたのは初めてかもしれない。
動かされたというか、自分の記憶を旅するような感じ。
こんなふうに私は小説を読んでいる最中にプチ・トリップするので、正気に戻ってからトリップ中に読み進んだ箇所をもう一度読んだりする。その回数が多かったな。
宇佐見りんさん、とても気に入った。
文藝賞をとった「かか」も近いうちに読んでみたい。
https://www.bookbang.jp/review/article/594127
この対談で宇佐見さんは、中上健次さんが一番好き。息遣いとか匂いとかがリアルに感じられて。と言っているが、まさに私もこの「推し、燃ゆ」を読んで同じように感じた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?